
ビットコインの「分裂」というニュースの中に必ず出てくる「ハードフォーク」。新技術が導入されるだけでなく、旧コインの保有者に新しいコインが付与されることもあり、価格にも影響することが多いイベントです。
2018年末にビットコインキャッシュのハードフォークが話題になりましたが、2017年夏から2018年初頭にかけては、10以上のコインがビットコインからハードフォークしています。
この記事では、ビットコインキャッシュを中心に、それらのコインの特徴や誕生の経緯をまとめました。
目次
1. ビットコインの派生コイン
2017年8月のビットコインキャッシュのハードフォークを皮切りに、2017年夏から2018年にかけて多くのコインがビットコインから分裂しました。現在取引されているものを紹介します。
1-1. ビットコインキャッシュ
ビットコインキャッシュ(BCH)は、2017年8月1日にビットコインからハードフォークした仮想通貨(暗号資産*1)です。(詳しい誕生の経緯はこちら)
基本の構造や機能はビットコインと変わりません。しかしビットコインのブロックサイズが1MB(メガバイト)であるのに対して、ビットコインキャッシュ(BCH)では8MB(メガバイト)(*2)。大きくブロックサイズを上げて、送金遅延を解消しようとしています。
ハードフォークの後、日本国内のビットコイン取引所はビットコインキャッシュの取り扱いを開始。取り扱いをしなかった海外の取引所では、ユーザーからの訴訟騒動も起きました。
ビットコインキャッシュは2019年11月に、ビットコインABCとビットコインSVへ分裂。その後はビットコインABCがビットコインキャッシュとして取り扱われている場合が多いようです。
*1)2019年3月、呼び名を「暗号資産」とする法律案が金融庁から第198回国会へ提出されました(参考|第198回国会における金融庁関連法律案)
*2)2018年5月のアップデートでブロックサイズは32MBまでアップしました
1-2. ビットコインキャッシュ以外の派生コイン
ビットコインキャッシュ以外にも、ビットコインからハードフォークしたコインはいくつもあります。
※時価総額順位はいずれも2019年5月22日時点のCoinMarketCapによるものです
ビットコインゴールド(BTG)(公式サイト)
ハードフォーク日 | 2017年10月24日 |
時価総額ランキング | 26位 |
特徴 | ASIC耐性 |
ビットコインゴールド(BTG)は、香港のマイニングプールであるLightningASICの主導によりハードフォークしました。マイニング専用機器ASICでのマイニングをできなくするASIC耐性という機能を実装しており、GPU(3Dゲーム等で使用するビデオカード)でもマイニングが可能です。
ビットコインダイヤモンド(BCD)(公式サイト)
ハードフォーク日 | 2017年11月24日 |
時価総額ランキング | 41位 |
特徴 | ブロックサイズが8MB |
ブロックサイズを8MBとし、ビットコインの抱える送金遅延の問題を解消。また、マイニングの方式を変更することで、安価なコンピュータでもマイニングに参加できるように設計されています。取引情報を一部匿名化することを予定していましたが、2018年4月に匿名化を行わないことを発表しました。
BitcoinDiamond.org|ANNOUNCEMENT REGARDING THE SUSPENSION OF ENCRYPTION & LIGHTNING NETWORK DEVELOPMENT
スーパービットコイン(SBTC)(公式サイト)
ハードフォーク日 | 2017年12月12日 |
時価総額ランキング | 1860位 |
特徴 | 不明 |
スーパービットコインは複数の取引所で取り扱われていますが、取引量は非常に少ないです。また情報も乏しく、公式サイトとされるURLでも、ロードマップやホワイトペーパーを確認することはできません。
ライトニングビットコイン(LBTC)(公式サイト)
ハードフォーク日 | 2017年12月18日 |
時価総額ランキング | 187位 |
特徴 | ライトニングネットワーク実装 |
ライトニングビットコインはインターネット上での完全な分散型取引(P2P取引)を実現することを掲げたコインです。2019年にはスマートコントラクト、ゼロ知識証明の実装を予定しています。
ビットコインゴッド(GOD)(公式サイト)
ハードフォーク日 | 2017年12月27日 |
時価総額ランキング | 1938位 |
特徴 | PoS、スマートコントラクト、ゼロ知識証明など |
ビットコインゴッドは2017年12月にハードフォークして誕生。PoSの採用など、イーサリアムに近い特徴があります。
ビットコインABC(BCH)(公式サイト)
ハードフォーク日 | 2018年11月15日 |
時価総額ランキング | 4位*3 |
特徴 | – |
2019年11月にビットコインキャッシュの後継として生まれたコインです。国内ではビットコインABCをビットコインキャッシュとして扱っている取引所が多くなっています。
*3)CoinMarketCapはビットコインABCをビットコインキャッシュとして採用
ビットコインサトシビジョン(ビットコインエスブイ)(BSV)(公式サイト)
ハードフォーク日 | 2018年11月15日 |
時価総額ランキング | 11位 |
特徴 | – |
ビットコインABCとともに、ビットコインキャッシュの後継を争ったコインです。ビットコインABCとビットコインSVのどちらの仕様をビットコインキャッシュとしてサポートするか表明していない取引所やサービスもあり、混乱が完全に収束したとは言い切れません。
ビットコインABCとビットコインSVのハードフォークについてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。
1-3. 実現しなかったコイン
誕生するとされながらも、様々な事情で実現しなかったり、すぐに消えてしまったりしたコインもあります。
ビットコインクラシック
ビットコインクラシックは2016年初頭から始まったプロジェクトで、ビットコインを「サトシナカモトが目指したコインに戻す」ということを目標に掲げていました。
ブロックサイズの拡大を予定していましたが、2017年11月9日、ビットコインキャッシュの誕生を持ってビットコインクラシックの目標は達成されたとし、公式サイトにてプロジェクトの終了を宣言しました。
bitcoinclassic|Bitcoin Classic Closing its doors
ビットコインシルバー(BTCS)
ビットコインシルバーは2017年12月に誕生が予定されていたコインです。
複数の仮想通貨系メディアでも取り上げられていましたが、2019年5月時点で取り扱っている取引所はないようです。
ハードフォーク前にこのような予測をしている人も。
年末年始にかけてビットコインを予言しよう。
・B2XがHFしてもインパクトがなく終わる
・ゴールドはただのアルトコインになる
・12月のビットコインシルバーは取引所で上場されない
・ビットコインのHFが終わる
・BTCがデジタルアセット、BCHがデジタルキャッシュとして君臨する— Sawa Azumi 🇺🇸 (@SawaAzumi) November 4, 2017
ビットコインキャッシュプラス
ビットコインキャッシュプラスについては情報が乏しく、公式サイトもドメインが存在していますが、すべての情報がすでに閲覧できなくなっています。
2018年1月にリリースが予定されていたようですが、2019年5月時点でもリリースされた様子はありません。
2. ビットコインキャッシュ誕生の経緯
新聞やテレビでも沢山取り上げられた、ビットコインの “ 分裂 ” 騒動。いったい何が起こっていたのでしょうか。
2-1. 原因はブロック容量の不足
ビットコインキャッシュ誕生の原因は、ビットコインの取引台帳であるブロックチェーンが混み始めて、取引量に対してブロックの容量が足りなくなったことです。
ビットコインでは取引データを格納するブロックのデータが1MBに設定されています。そのため一般的な計算能力のコンピュータでもマイニングに参加でき、「不特定多数のマイナーの参加」というルールを維持することができます。
しかし取引量が増えるにしたがって、取引履歴を記録するブロックの容量が足りなくなる問題が発生。取引の遅延や、送金手数料の高騰が起きてしまい、「早くて安い」はずのビットコインが、「高くて遅い」送金手段になっていました。
2-2. 2派の対立
ブロック容量の不足という問題を解消するため、2つの提案が出されました。
1つは、Segwitにより取引のデータサイズを小さくし、より多くの取引が入るような仕様変更(ソフトフォーク)を行う計画。ビットコインコアと呼ばれる開発者たちによる提案です。
もう1つが、ブロックのサイズそのものを大きくするハードフォークの計画。こちらはハッシュパワーの50%超を握る中国のマイナーたちが提案しました。
2つの提案について妥協策をまとめる話し合いも何度か行われたようですが、最後まで意思統一には至らなかったようです。
2-3. ビットコインキャッシュの誕生
2つの意見の明確な合意形成がないまま、2017年7月末、Segwitがビットコインに実装。
一部のマイナーがこれに反発しブロックサイズが大きいブロックチェーンをハードフォークしたことで、ビットコインキャッシュ(BCH)が誕生しました。
3. ハードフォークで価格はどうなった?
2018年7月は春からの価格上昇が一旦落ち着き、5月の下旬から約2ヶ月間、30万円付近で横ばいとなりました。一時、22万円前後まで下落しているのは、分裂による価格下落を恐れた投資家がビットコインを売却したものと思われます。
2017年8月1日のハードフォーク後、ビットコイン価格は一気に上昇。国内取引所bitbankでは、1か月で80%以上の高騰となりました。
4. ハードフォークが続いた要因
ビットコインはハードフォークすることによって、価格が上がりました。そのため、ビットコインのマイナー達の中ではビットコインからハードフォークして新しい仮想通貨を作る動きが加速します。
一方投資家も、ビットコインをもっていると、ハードフォークによって新たにできる仮想通貨をもらえる機会がある、と判断しました。
その結果、ビットコインの「ハードフォーク・バブル」が発生したのです。
ビットコインキャッシュの価格は、ハードフォーク直後で約6万円。ハードフォーク前にビットコインを30万円分保有していた場合、ハードフォークで41万円分(ビットコイン30万円分+ビットコインキャッシュの価格6万円分)に増えたことになります。
5. ビットコインの今後の予定
イーサリアムのようにハードフォークがあらかじめ計画されているコインもありますが、ビットコインではハードフォークの予定は今のところありません。
ビットコイン公式サイトなどをチェックしておくことで、もしハードフォークの計画が出てきたときでも正しい情報を得やすくなります。
Bitcoin.org|Bitcoin Core version history
なお、2020年に実施予定の半減期についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
ビットコインにおけるハードフォークは、中央の管理者が存在しないというブロックチェーンの構造上、避けることのできない事象です。そのため、ビットコインが連続して分裂するような事態が発生しました。
しかしハードフォークによって仮想通貨が誕生しても、マイナーや投資家に支持されなければブロックチェーンをつなぐことはできず、価値も維持できません。
目先の価格や煽りの言動に惑わされず、実際のユースケースのある仮想通貨を自分の目で判断していくことが必要です。
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