
ビットコインの送金時間は10分や60分といわれていますが、どちらが正しい情報かご存知ですか?
実はどちらの情報も間違ってません。「10分かかる時もあれば、60分かかる時もある」ということではなく、「送金にかかる時間を10分とみる人もいれば、60分と捉える人もいる」ということです。このように聞くと、ますますややこしく感じる人もいるかもしれませんね。
この記事ではビットコインの送金にかかる時間についてやさしく解説。目安時間や送金が遅れる原因、スムーズに送金する方法をお届けしていきます。2017年後半には「ビットコインの送金は遅い!」といった声が多く上がりました。その送金詰まりを緩和させた技術や、今後実装予定の新テクノロジーとは一体。
すべて読み終わったころには疑問が解消されるでしょう!ぜひ参考にしてください。
目次
1. ビットコインの送金にかかる目安時間
ビットコインは送り先のウォレットや口座に反映されるまで、約10分かかります。筆者が仮想通貨取引所のbitFlyerからbitbankへビットコインを送金してみたところ、口座に反映されるまで14分かかりました。
しかしビットコインは送金内容が反映されたからといって、送金が完了したということにはなりません。実際にbitbankからウォレットアプリのBRDへ送金した時は、6分後に反映されて送金完了の表示が出るまで約60分かかっています。
銀行振込では送金内容が送り先に反映されている時点で送金完了とみなせますが、ビットコインはそうとはいえないのです。ビットコインにまだ慣れていない人には、そういった感覚がつかみづらいかもしれません。
1章では送金にかかる目安時間や送金が遅れる原因、スムーズに送金を済ませる方法を紹介。送金内容が反映されているのに完了とみなせない理由も、初心者でもわかるように解説していきます!
1-1. ビットコインの送金は反映まで約10分、完了までは最短約60分!
ビットコインは送り先の口座やウォレットに反映されるまでに約10分、送金完了とみなされるまでに最短約60分かかります。反映と完了に時差があるのはなぜでしょうか?その理由はビットコインに使われるブロックチェーン技術にあります。
ビットコインの送金に関する情報をすべて記録しているブロックチェーンでは、約10分に一度のペースで送金情報の承認を行っています。簡単にいえば、認証者が10分に一度のペースで「この送金情報には不正がないので、送金依頼を受け付けます」と承認を行っているイメージ。1回目の承認がもらえると、初めてブロックチェーンにその送金情報が記録されます。この承認作業はマイニングといい、認証者のことをマイナーと呼びます。
1回目の承認で送金情報は口座やウォレットに反映。つまりこの記事でいう反映されるまでの時間とは、1回目の承認がもらえるまでの時間ということです。1回目の承認を「1認証」や「1承認」と呼びます。
ビットコインは1回の承認だけでは送金が完了したといえません。なぜならブロックチェーンの仕組み上、一度承認されても無効になる可能性があるからです。この仕組みは不正を防ぐために欠かせないもの。無効となった場合、ビットコインはもとの口座やウォレットへ戻ります。
送金が確実に実行されたとみなすには、6認証をもらうまで待つといった考えが一般的。ブロックチェーンの仕組み上、6認証をもらったあとに無効になる可能性は低いと考えられているからです。
ブロックチェーンの仕組みについて詳しく解説を始めると長くなるため、1認証をもらえるまでに約10分、6認証で送金が完了するまでに最短約60分かかるといった点を簡単に解説しました。
関連記事:世界を変えるブロックチェーンの仕組みのやさしい概要
■Blockchain.infoでリアルタイムの承認数を確認できる
Blockchain.infoではリアルタイムで承認数の確認が行えます。必要なものは送金先のビットコインアドレスだけ。トップページの検索窓に送金先のビットコインアドレスを入力すると、送金情報の確認ができます。下の画像をご覧ください。Blockchain.infoで送金状況を確認している様子です。
「未確認の取引」と出ている時は未承認の状態、つまり0認証ということです。ウォレットや口座にはまだ反映されていない状況と判断できます。
「1確認」と表示が出ると1回の承認が済んだということ。ウォレットや口座に送金内容が反映されますが、まだ送金完了とはいえません。
「6確認」となれば送金が完了していると判断してもよいでしょう。ウォレットアプリのBRDでも、「6確認」の表示が出るころに送金が完了と表示されました。
送金状況を確認する時の参考にしてみてください。
1-2. 送金に時間がかかりすぎ……考えられる原因2パターン
上で反映までに約10分と説明しましたが、これよりも時間がかかるケースもあります。送金に時間がかかる原因としては、以下の2パターンが考えられます。
- 設定した送金手数料が低すぎる
- ビットコインのネットワークが混雑している
それぞれについて解説してきましょう
■送金遅延の原因1:送金手数料の設定が低すぎる
ウォレットの中には送金手数料をカスタム設定できるものもあります。銀行などの金融機関では送金手数料が定められていますが、ビットコインでは送金手数料をユーザーが自由に設定できるのです。
手数料を自由に決められるとなれば、少しでも安く済ませたいという気持ちが働きますよね。しかし手数料を低くしすぎると、なかなか承認がもらえず送金が遅れる可能性が出てきます。最悪の場合タイムアウトしてビットコインがもとのウォレットへ戻り、送金できないケースも。
前に解説した通り、送金情報の承認作業はマイナーが行っています。マイナーはだれかに雇用されている従業員ではありません。マイニングで配当されるビットコインを目当てに、自ら取り組んでいるのです。つまり報酬目的でビットコインの運用に携わっているということ。
報酬の一部には、処理した送金情報に付随する送金手数料も含まれています。そのため少しでも多く報酬を得たいマイナーたちは、高い手数料を支払っている送金者の処理を優先。手数料が低い送金者の承認は後回しにされがちなのです。
こうした理由から、送金手数料を低く設定すると送金が遅くなる可能性があるといえます。
■送金遅延の原因2:ビットコインのネットワークが混雑している
ビットコインのネットワークが混雑していると承認作業に時間がかかり、送金が遅れる可能性があります。ネット回線が混雑しているというよりも、作業が追いつかないといったイメージのほうが近いでしょう。
10分に一度のペースで行われる承認作業では、1回で承認できるデータ数に限りがあります。そのため送金情報が集中すると、承認処理が追いつかなくなり遅延につながるのです。
下の画像は2018年6月4日現在を起点とした過去6ヵ月分の、ビットコインのトランザクション量(※)を表すグラフです。
(※)トランザクションとは送金データのこと。
参考:Blockchain.info Confirmed Transactions Per Day
画像左側の2017年末にはトランザクション量が増え、深刻な送金遅延が起きていました。このころはビットコイン価格が過去最高を記録した時期と重なり、ビットコインへ注目する人が増えたことによりトランザクションも増えたのではないかと予想されます。
画像右側の現在のトランザクション量はピーク時の半分以下。さらにネットワーク混雑の緩和を図る技術もリリースされた影響で、ビットコインのネットワーク混雑は目立たなくなりました。
Blockchain.infoでは未処理のトランザクション数を確認することもできます。未処理のトランザクションとは、1認証ももらっていない送金情報のこと。
下の画像は2018年6月4日現在の未処理のトランザクション数を記したものです。
参考:Blockchain.info 新規ビットコイン取引リストの実況更新
2017年12月には5万件以上の未処理のトランザクション数を抱えていましたが、現在は10分の1以下。ネットワークの混雑は大きく解消に向かっています。Blockchain.infoで未処理のトランザクション数を確認し、多ければネットワークが混雑している状況、少なければ比較的スムーズに送金できる可能性があると考えてよいでしょう。
1-3. 手数料をはずめば送金スピードアップ !
ビットコインの送金時間を速くする方法として、送金手数料を高く設定するという手段があります。ただし送金完了とみなせるまでに最短約60分ということは変わりません。速くするといっても60分以下にする方法ではなく、最短時間を目指す方法です。
送金手数料をカスタム設定できるウォレットを利用している方は手数料相場を調べ、それよりも高い手数料を設定する。取引所を利用している人は、優先度を高くして送金するといった方法があります。
それぞれのやり方を紹介していきましょう。
■3ステップでできる送金手数料相場のチェック方法
送金手数料の相場はbitcoinfeesというサイトで確認できます。チェック方法は以下の通り。
- (in dollars per transaction)という項目の「Table」を開く
- リスト上の一番上にあるデータの「Next Block Fee」という項目をチェック
- 仮想通貨コンバーターで米ドルをBTCに変換
実際に2018年6月4日現在の送金手数料相場を調べてみました。
bitcoinfeesで「Table」を開くと、過去の情報から次のブロックで送金処理を行ってもらうために必要な送金手数料の目安が表示されています。今回は0.19USDと記されていました。
次にCoinMarketCapが提供する仮想通貨コンバーターを使ってUSDをBTCに変換。すると0.19USDが約0.00002BTCと同等の価値があることがわかりました。つまり送金手数料を0.00002BTCよりも多く設定すると、最短速度で送金処理を行ってもらえる可能性が高いということです。
仮想通貨コンバーターではリアルタイムの価格を反映し、さまざまな仮想通貨と法定通貨の価格を比較できます。ビットコイン価格を日本円に変換することもできますよ!
以上が送金手数料相場のチェック方法になります。
■取引所からの送金は優先度を高くしてスピードアップを狙え
仮想通貨取引所のなかには規定されている送金手数料にビットコインを上乗せすることで、スムーズな送金ができるようにしているところも。ビットコインの送金(出金)ページから、デフォルト設定されている手数料にプラスするかたちで行えます。
今回は金融庁へ登録が済んでいる取引所にフォーカスし、各社の公式サイトからビットコインの送金手数料が調整できるかリサーチ。公開されていた情報では、送金手数料の優先度を設定できる取引所は以下の通りとなります。
取引所 | ビットコインの送金(出金)手数料 |
Zaif | 0.0001 ~ 0.01 BTCで選択可 |
フィスコ仮想通貨取引所 | 0.0003BTC以上を選択可 |
【参考】
そのほかの取引所では、実際に口座を開設するとビットコインの送金画面で確認できるでしょう。
取引所ではスムーズな送金を行うために、デフォルトの送金手数料を高めに設定している傾向があります。そういった取引所では手数料をプラスしなくても比較的スムーズに送金が行える模様。デフォルトの送金手数料と先ほど紹介した送金手数料の相場を比較し、相場よりも高い設定になっていれば、あえて手数料をプラスする必要はないでしょう。
2. ビットコインの安全を確保!承認に10分かかる理由を解説
ビットコインを送金する際に、1回目の承認をもらうまでに約10分かかるというのは前に説明した通り。ではなぜ1回の認証作業に10分要するのでしょうか。それはビットコインの仕様に理由があります。
それぞれの仮想通貨は、仕様によってブロックチェーンのブロック生成速度が異なります。ブロック生成速度とは、ブロックチェーンに新しいブロックを追加するために要する時間のこと。ブロック生成速度は各仮想通貨のブロックチェーンによって異なり、そのスピードは一定に保たれるように調整されています。
ビットコインの場合ブロックを追加する際に暗号の解読が必要。その難易度はシステムによって自動で調整され、新しいブロックの追加に10分程度かかる仕組みとなっています。作業を行うコンピュータが高性能になった、トランザクションの量が少なくなったといった理由で短くなるものではありません。
関連記事:マイニングとは?仮想通貨ビットコインのマイニングを仕組みまで解説
下の表はコインペディア運営委員会がリサーチした、日本の取引所で取り扱っている仮想通貨のブロック生成速度TOP5です。
順位 | 銘柄 | ブロック生成時間 |
1位 | XRP(通称:リップル)(XRP) | 約4秒 |
2位 | リスク(LSK) | 約10秒 |
3位 | イーサリアム(ETH) | 約15秒 |
4位 | ネム(XEM) | 約60秒 |
5位 | モナコイン(MONA) | 約90秒 |
圏外 | ビットコイン(BTC) | 約600秒 |
上の表からもわかるように、仮想通貨にはブロック生成速度が10分よりも短いものがあります。ブロック生成速度の差は、マイニングで採用されている承認方法の違いによって生まれているのです。
ビットコインではPoW(プルーフオブワーク)という承認方法を採用。直訳すると「仕事の証明」です。先ほども述べた通り、PoWではブロックを追加する際に暗号の解読が必要となります。ビットコインの場合、仕事にあたるものは暗号解読となります。
この暗号解読の難易度を調整して10分に一度のペースで承認を進めているわけですが、PoWでは時間をかけて膨大な計算をするとこが正しい承認である証明となっているのです。
またPoWではブロック生成時間を短くすると、攻撃に遭うリスクが高まると言われています。実際にPoWを採用しておりブロック生成速度が90秒のモナコインでは、2018年5月15日までに複数回にわたる攻撃が行われました。IT系のニュースを取り上げるメディア『ITmedia』によれば、モナコインのブロックチェーンに行われた攻撃により、1000万円相当の被害を受けた海外の取引所もあるとのこと。
参考:ITmedia モナコインのブロックチェーン、攻撃受け「巻き戻し」 国内取引所も警戒
世界中で主軸通貨として使われているビットコインが同じような攻撃に遭えば、仮想通貨全体の信用が落ちかねません。仕事の証明に十分な時間をかけるとこで、ビットコインの安全性は高まっているのです。
関連記事:【図解】ビットコイン取引を支えるプルーフオブワークを丸裸にする!
3. 遅いといわれる時代が終わった!セグウィット導入により送金詰まり緩和
ビットコインのネットワークが混雑した2017年後半には「ビットコインの送金が遅い!」といった声が多く上がりました。
イーサリアムのトランザクションが爆増中。猫ゲームのせい?w ビットコインは送金遅いし手数料高いし、イーサリアム使う人が増えてるのかもね。ぼくはイーサリアム派です。 https://t.co/s1b3167sAv
— イケハヤ@ブログ月商500万 (@IHayato) December 14, 2017
さらに以下の要因で手数料相場も高騰。
ビットコインの需要が爆増
↓
送金詰まりが起こる
↓
スムーズに送金したい人が送金手数料を高く設定
↓
送金手数料の相場が高騰
こうした事態にストップをかけたのは、ネットワークの混雑緩和に大きく貢献した技術「セグウィット(Segwit)」の導入です。セグウィットとはトランザクションを圧縮し、ひとつのブロックに格納できるトランザクション数を増やす技術のこと。
2018年2月26日に公式リリースされた「ビットコインコア0.16.0」では、セグウィットを完全にサポートするアップデートが行われました。これにより一度でたくさんの送金情報を承認できるようになったビットコインは処理能力が向上。未処理のトランザクション数が減少し、送金詰まりが緩和したことで手数料相場も混雑以前の水準に戻りました。
参考:bitcoin.org Bitcoin Core version 0.16.0 released
Jochen Hoenickeというサイトでは、ビットコインのメモリープール(※)の状況をチャート形式で確認できます。2018年6月4日現在から過去6ヵ月分のデータ見ても、未処理のトランザクション数が減っていることは一目瞭然ですね。
(※)未処理のトランザクションが保管されている場所
セグウィットが送金詰まりの緩和に大きく貢献した証です。
4. 今後は新テクノロジーの導入でさらにスムーズに
ビットコインでは、さらに送金処理をスムーズに行うためのアップデートが予定されています。
注目される技術は以下の2点。
- ライトニングネットワーク(Lightning Network)の導入
- シュノア(Schnorr)署名の実装
ビットコインに上記2点の新しい仕組みを取り込めば、さらに送金にかかる時間が短縮できると考えられています。
しかし明確な実装時期は不明。実は両者とも数年前から提案されていましたが、実装までには至っていませんでした。なぜならどちらもセグウィットありきの技術だからです。
ビットコインコア0.16.0がリリースされてセグウィット普及率が上昇してきた今、ライトニングネットワークやシュノア署名の実装も現実味を帯びています。2つの新テクノロジーの導入でビットコインの送金時間が短縮し、さらに実用的に使えるようになる時期も遠くないのではないでしょうか。
まとめ
ビットコインの送金時間について解説してきました。ビットコインは送金が遅いという意見も少なくありませんが、実はどんどん改善に向かっているのです。主軸通貨として使われているビットコインの送金速度が向上すれば、さらに需要が増えるかもしれませんね。
この記事のまとめ
送金先のウォレットや口座に反映されるまでの所要時間は約10分
送金が完了するまでの所要時間は最短で約60分
6認証で送金完了といわれている
送金手数料が少ないとビットコインの送金に時間がかかる可能性がある
2018年6月4日現在は、ネットワークが混雑していた2017年後半よりもスムーズに送金を行える傾向
新テクノロジーの導入で今後はさらに送金速度が速くなる期待ができる
送金時は適切な手数料と、正しいビットコインアドレスの入力を心がけましょう。送金先のビットコインアドレスを間違えると二度と戻ってこなくなる恐れも。入力ミスを招かないようにコピー&ペーストか、QRコードの読み取り機能を使ってください。
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