
BitMEXでは日本時間2020年4月30日23:00をもって、日本国内居住者の新規口座開設が停止されました。
(参照)BitMEX
仮想通貨(暗号資産)に投資をしている方の中には、レバレッジ取引を検討している方も多いのではないでしょうか?
レバレッジ取引は、手持ちの資産よりも大きな金額を取引できる取引方法です。この記事では、「BitMEX」(ビットメックス)という最大100倍のレバレッジ取引に対応した取引所に焦点を当て、BitMEXでのレバレッジ倍率の設定・変更方法やBitMEXに搭載されている便利な損益計算ツールの利用方法など、BitMEXの使いこなし方を解説していきます。
(コインペディアでは、外資系戦略コンサルタント出身の現役トレーダーによる相場戦略を公開しています。)
目次
1. BitMEXのレバレッジとは?
まずは基本的な知識としてBitMEXとレバレッジ取引について解説していきます。
1-1. 最大100倍のレバレッジ取引! BitMEXとは?
BitMEXは最大100倍のレバレッジ取引ができる世界最大級の仮想通貨取引所です。
レバレッジ取引とは
レバレッジ取引ではユーザーがまず、取引所に自分の資産を証拠金として預け入れます。
証拠金とは、レバレッジ取引によって損失が生じた場合も決済できるように、取引所へ預ける資産のことです。
そして、証拠金を担保に取引所から投資資金を借りることで、証拠金に任意の倍率を掛けた金額までを取引できます。例えば、10万円分の仮想通貨を証拠金として預けてレバレッジを10倍に設定した場合、最大100万円分の仮想通貨取引ができるのです。
要するにレバレッジ取引とは、証拠金という担保を元手に借り入れを行い、高いリターンを狙う投資手法と言えます。
リターンは大きいがリスクも高い
価格変動リスクが大きな仮想通貨において、レバレッジ取引がハイリスク・ハイリターンな取引であることは間違いありません。ちょっとした値動きでも大きな損失が発生する可能性があります。
「レバレッジ取引についてもっと知りたい!」という方は、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
1-2. BitMEXのレバレッジ取引の倍率
仮想通貨の銘柄に拠って最大倍率は異なるものの、BitMEXでは1倍〜100倍のレバレッジ取引に対応しています。以下は取り扱っている仮想通貨と倍率の一覧表です。

BitMEXではビットコインの単位がBTCではなくXBTとなっていますが、単位表記が違うだけで1BTC=1XBTです。また、すべての取引はビットコイン建て(XBT建て)で行われています。
上の表に関して、いくつか用語説明をしておきます。「この用語ってどういう意味?」と感じた方は確認してみてください。
無期限契約 | 基本的には先物取引と同様の金融商品。あらかじめ約束した価格で商品を将来の特定時に売買する「先物取引」と同様の取引方法だが、決済期限が無い |
従来の先物 | 先物取引のこと |
メイカー料金 | 価格を指定して注文を出す取引方法「メイカー」(指値取引)で取引する際に発生する手数料のこと |
テイカ―料金 | 既に市場に出ている価格で売買する取引方法「テイカ−」(成行取引)で取引する際に発生する手数料のこと |
ポジション | 金融取引において手仕舞いされず、未決済のまま残っている約定のこと |
BitMEXでは最大100倍レバレッジのビットコイン、最大50倍レバレッジのイーサリアムだけが無期限契約で取引できます。
イーサリアム以外のアルトコインは20倍のレバレッジで取引ができますが、先物取引のみの取扱いです。
ただし、BitMEXでアルトコインのレバレッジ取引をする際はビットコインに比べて約定(やくじょう)スピードが遅いので注意してください。
1-3. BitMEXでのレバレッジ取引のメリット・デメリット
BitMEXの具体的な利用方法を紹介する前に、メリットと注意すべき点を解説していきます。
BitMEXでのレバレッジ取引のメリット
BitMEXでのレバレッジ取引のメリットは以下の4つです。
- レバレッジ倍率が最大100倍まで可能
- 希望価格で約定しやすい
- 取引するほど手数料がもらえる
- 負債が発生しないゼロカットシステム
レバレッジ倍率が最大100倍まで可能
国内の仮想通貨取引所が提供するレバレッジ取引の多くが、レバレッジ倍率を最大4倍としているのに対し、BitMEXはビットコインで最大100倍、アルトコインで最大50倍のレバレッジ倍率で取引が可能です。
希望価格で約定しやすい
取引量が少ない取引所では、注文が通りにくいということもあります。BitMEXは取引量が非常に多いため、希望価格で約定しやすくなります。
また取引量が多いということは、少数のトレーダーによる価格の恣意的な操作も起こりにくいというメリットもあります。
取引するほど手数料がもらえる
メイカー手数料がマイナス手数料となっているため、注文を出すことで(ポジションを持つことで)手数料ボーナスを獲得できる点もメリットです。
ビットコインでは-0.0025%、アルトコインでは-0.0050%のメイカー手数料が設定されています(2019年8月26日時点)。
負債が発生しないゼロカットシステム
多くの取引所ではロスカット(*2)によって、証拠金や取引所口座の残高以上に損失が発生した場合、追加の証拠金(追証)が求められます。しかし、BitMEXは追証が求められないようにサービスが設計されています。
*2)預け入れた証拠金に対して損失が一定割合以上に達した場合に、強制的に売り注文(または買い注文)の清算が行われる仕組み
BitMEXの注意点
BitMEXの注意点としては、設定できるレバレッジ倍率の上限が国内取引所に比べて非常に高いため、極めてハイリスク・ハイリターンだと言うことです。
他にも、ロスカットに注意しなければなりません。BitMEXでは、証拠金に対する損失が50%以上になるとロスカットが発動します。
BitMEXに追証は無いがリスクあり
BitMEXには追証がありません。
しかし追証は無くとも、レバレッジ倍率が高くなるほど預けた資金が短時間でゼロになるリスクが非常に高いという点には留意しなければなりません。
インターネット上には、高レバレッジで追証の無いBitMEXを初心者に推奨する記事が見受けられますが、決してリスクゼロなわけでは無いのです。
2. BitMEXでのレバレッジ設定・途中変更の方法
それでは、BitMEXでのレバレッジ設定方法と設定の途中変更の方法を解説していきます。レバレッジ取引にあまり慣れていない方でもこの記事を読みながら、操作してみるとやり方が掴めてくるはずです。
2-1. 簡単! BitMEXでのレバレッジ設定方法
BitMEXのWebサイトにログインしたら、画面左側にある「現行ポジション」を見てください。レバレッジの設定はこの部分を操作して行います。
レバレッジの変更方法は「現行ポジション」内にあるスライダーを操作します。右側へスライドさせるほど、倍率が高くなっていきます。そして、任意の倍率の所で止めれば設定完了です。
スライダー上で表示されている以外の倍率を指定したい場合は、スライダー右端の「編集アイコン(ペンのマーク)」をクリックし、任意の倍率を手動で入力します。
2-2. レバレッジの変更方法
一般的な取引所のレバレッジ取引では、注文を出した後で倍率を変更することができません。一方で、BitMEXではレバレッジの倍率を後から変更できます。変更したい場合は、レバレッジを設定した時と同様に「現行ポジション」で任意の倍率を指定してください。
2-3. クロスマージンと分離マージンの違いとは?
BitMEXのレバレッジ取引では、クロスマージンと分離マージンという2種類の方法があります。両者はどのように違うのでしょうか?
クロスマージンとは?
クロスマージンとは、BitMEXの口座残高すべてを利用して証拠金を設定する方法のことです。別名「スプレッドマージン」とも呼ばれます。
他にポジションが持っている場合は、それらすべての実現損益が証拠金として加算されます。BitMEXの初期設定はクロスマージンです。
例えば、口座残高が5万円、他のポジションの実現損益の合計が5万円の状態で、100倍のレバレッジを掛けて取引するとしましょう。この場合、所持金は合計10万円となるため、最大1,000万円までレバレッジ取引が可能です。
分離マージンとは?
分離マージンとは、所持金の一部を証拠金として利用する設定方法です。したがって、仮にロスカットしたとしても、最大でも設定した証拠金分の損失で済みます。
例えば所持金が10万円あり、分離マージンによって1万円を証拠金として設定した場合、市場価格の急変によってロスカットが働いたとしても損失は1万円です。
3. 損益計算ツールで損益分岐点を計算しよう
レバレッジ取引のポジションを持つ際には、価格がいくらになったらどの程度の損益が出るのか、ロスカットされるのかを計算しなければなりません。損益分岐点を把握しながら取引する姿勢が求められるのです。
BitMEXでは損益シミュレーションを効率的に行える「損益計算ツール」が用意されています。取引の際はこのツールは積極的に活用していきましょう。
3-1. 計算ツールの使い方
損益計算ツールは画面左側の「発注」ブロックにある「小さな電卓のアイコン」をクリックすると表示されます。
損益計算ツールには、以下の3つの機能があります。ツール上部のタブで機能を切り替えられます。
- 利益/損失計算ツール
- 目標価格ツール
- 清算価格ツール
それぞれの機能概要と各用語を解説していきましょう。
3-2. 計算ツールでできること
機能1.利益/損失計算ツール
利益/損失計算ツールでは、ポジションの条件に応じた期待損益を計算できます。各用語の意味は以下の通りです。
①ロング:買い、もしくは買いポジションのこと。市場価格が上がると利益(含み益)となる
②ショート:売り、もしくは売りポジションのこと。市場価格が下がると利益(含み益)となる
③数量:自分が売買する数量(すでにポジションを持っている場合は自動入力される)
④参入価格:買う時の価格(すでにポジションを持っている場合は、注文時の価格が自動入力される)
⑤出口価格:売る時の価格
⑥レバレッジ:注文時に設定するレバレッジ倍率
⑦利益/損失:数量と参入価格、出口価格から算出される損益
⑧利益/損失%:ポジション価額に対する損益率
⑨ROE%:ポジションの構築に使用される最小エクイティに対する損益率。未実現損益。利確・損切りのタイミングを計るために使われる(*3)
*3)ROE(Return On Equity)とは自己資本利益率のことであり、ROE%まだ確定していない利益を表している
機能2.目標価格ツール
目標価格ツールとは、レバレッジと参入価格、ROE%(未実現損益)から目標価格を算出するためのツールです。
例えば、レバレッジ100倍、参入価格10,000ドルとして、ROE%が100となることを目指してロングポジションを持った時、ポジションを清算する(ショートする)時の目標価格は10,101ドルとなります。
もし、取引手数料が発生するテイカ―で注文する場合には、ROE%を発生する手数料以上に設定して目標価格を算出し、どのくらいの価格であれば収益が得られるかを把握しておくと良いでしょう。
BitMEXでは、メイカー(指値取引)であればマイナス手数料であるため、ポジションを持てば手数料分のボーナスが貰えますが、テイカ―(成行取引)の場合は手数料が発生します。
実はこの手数料にも、設定したレバレッジ分の倍率が掛かります。
したがって、100倍レバレッジでテイカ―手数料0.0750%のビットコイン取引を行った場合、0.0750%×100=7.5%もの取引手数料が発生してしまうのです。この点は取引する上で注意しなければなりません。なお、手数料にレバレッジ倍率が掛かるのはメイカーで発生するマイナス手数料の場合も同様です。
機能3.清算価格ツール
清算価格ツールは、どの程度の価格変動を許容できるのかを見極めるためのツールです。ロングとショート、分離マージンとクロスマージンをトグルボタンで切り替えられるので、この部分の設定を忘れないようにしましょう。
入力した条件・数値に応じて、ロスカットされる清算価格が分かるため、この価格ラインを超えないようにポジションを管理する必要があります。なお、上記の画像では証拠金が分離マージンに設定されていますが、クロスマージンに設定すると自分の口座残高(ウォレット残高)が自動入力されます。
BitMEXのレバレッジ取引においては上記の3機能を備えた損益計算ツールを使いながら、どの価格を狙ってポジションを持つのかを管理する必要があります。
とはいえ、いきなり使いこなすのは難しいという方もいることでしょう。そこで、最初のうちはBitMEXのデモトレード機能を使って練習するのがおすすめです。
まとめ
ここまで紹介した通り、BitMEXは最大100倍という高レバレッジ取引ができる世界最大級の仮想通貨取引所です。
追証が無く、損益計算ツールも充実しているため、仮想通貨のレバレッジ取引を本格的に行いたい方には都合の良い取引所だと言えます。初心者の方はデモトレード機能で練習もできます。
しかし大前提として、レバレッジ取引がハイリスク・ハイリターンであることを忘れてはいけません。仮想通貨は価格変動が激しいため、高いレバレッジを掛けると少しの値動きが大きな損失に繋がります。
レバレッジ取引を行う際は余剰資産で行い、現物取引以上に慎重な運用を心掛けましょう。