
ブロックチェーンは、さまざまな分野やビジネスへの活用が期待されている技術です。
いっぽうで、その仕組みを理解できない人も多いと思います。
仕組みだけでなく、仕組みを生かすことでどのような良い点が生まれるのかも、抑えておきたいポイントです。
そこで今回の記事では、ブロックチェーンの仕組みや特徴を、図解でわかりやすく解説します。
目次
ブロックチェーンの仕組み
この項目では、ブロックチェーンの全体的な仕組みから確認し、さらにその中の細かな仕組みまで詳しく解説します。
全体的な仕組み
ブロックチェーンは、仮想通貨の取引を記録するための台帳です。
たとえばAさんからBさんに送金を行う場合、「日付」や「どこからどこへ仮想通貨が送られたか」などの情報が、ブロックチェーン上に記録されます。
古い記録から新しい記録に連なっている
ブロックチェーンは、古い記録から順番に、新しい記録へと繋がっています。
具体的には、取引の情報を収納しているブロックが、古いものから新しいものへとチェーンのように連なっている点が特徴です。
台帳の1ページが1ブロックといった感じのイメージになります。
取引の承認・記録の仕組み
どうやってブロックをつなげたり、承認しているのかについて、もう少し詳しく説明します。
ブロックをつなげるためには取引を承認する必要がある
ブロックを繋げるためには、取引を承認する必要があります。
承認作業では、取引の情報は不正のないものであるかや、前のブロックと整合性があるかなどの確認が行われます。
計算を解くことで取引の承認をする
取引を承認するためには、端末(パソコン)を使いハッシュ関数と呼ばれる関数の計算を行います。この計算をマイニングと呼び、マイニングを行う人をマイナーと呼びます。
ハッシュ関数の最適解であるナンスと呼ばれる答えを見つけたマイナーが、取引の記録をつけることができます。
ブロックに収納されている情報
ブロックに収納されている情報は、主に下記の3つです。
- ハッシュ値:前のブロックの情報をハッシュ関数で出力した数値
- トランザクション:取引の日付や誰が誰に送金したかなどの情報
- ナンス:ハッシュ関数の最適解
過去から現在に至るまで、すべてのブロックにこれら3つの情報が収納されています。
取引が正しいと証明する仕組み
上述したように、ブロックチェーンでは取引の承認が行われる必要があると解説しましたが、その取引が本当に正しい取引なのかを確認するために、送金者は送金時に署名を行っているのです。
上記の画像では、Aさんは自分が手続きをした正しい仮想通貨の送金であることを証明するために、送金時に署名を行っています。
この署名には、Aさんしか知らない情報である秘密鍵というものが使われているのです。
第三者が知らない情報で署名を行い、ブロックチェーン上でマイナーによってこの署名が確認されることで、不正な送金が行われない仕組みとなっています。
P2P(ピア・ツー・ピア)の仕組み
ブロックチェーンには「P2P(ピア・ツー・ピア)」という仕組みが採用されています。
P2Pは「ネットワーク上の端末が対等な存在となる」ための仕組みです。
わかりやすいように、従来の中央サーバーが管理を行うクライアント型のネットワークと比較してみましょう。
クライアント型(従来のシステム)との比較
従来のクライアント型のネットワークでは、中央サーバーにデータが保管・管理されており、クライアント(ユーザー)はそこからデータを取得します。
これに対して、P2Pでは中央の管理主体がなく、ネットワーク上の端末同士でデータの記録・共有・やり取りが行われています。
P2Pでブロックチェーンの記録を管理する
ブロックチェーンのデータはP2Pで管理されています。
P2Pでデータをやり取りすることで、もし誰かがデータを改ざんしても他の人が持つデータで改ざんを見抜いたり、一部のデータが破損しても他の人の持つデータで補完したりできます。
ブロックチェーンではこのP2Pの仕組みを基にして、パワーやリソースを多くの端末で分散して補い合うことで、そのネットワークが支えられています。
ブロックチェーンの種類
ブロックチェーンには大きく分けて2種類あり、マイニングに参加できる人を限定しない「パブリックブロックチェーン」と、決められた人だけがマイニングに参加できる「プライベートブロックチェーン」があります。
メリット | デメリット | |
パブリックブロックチェーン | 改ざんが極めて難しい | 承認に時間がかかる 手数料の高騰 |
プライベートブロックチェーン | 承認が速い | マイナーが限定されるため、不正リスクがある |
またその中間として「コンソーシアム型ブロックチェーン」も、現在ビジネスでの導入が期待されています。
ブロックチェーンの特徴
この項目では、ブロックチェーンの特徴を確認していきたいと思います。
記録が改ざんされにくい
ブロックチェーンには、記録が改ざんされにくいという特徴があります。技術的なものだけでなく、人の心理を巧みに利用した仕組みになっています。
不正にかかるコストが高すぎる
ブロックをつなげるマイニングには、複数のマイナーが参加しています。
最初にナンスを見つけたマイナーがブロックをつなげることができますが、見つけたらすぐにブロックをつなげられるわけではなく、その計算結果が正しいのかを他のマイナーが検証します。
もし不正な取引を承認してブロックをつなげようとしても、他のマイナーに不正と見破られればブロックはつなげられません。

他のマイナーに邪魔をされないようにするには、他のマイナーを味方につけるか、もしくは自分が計算した結果を自分で検証できる状態にする必要があります。
つまり記録を改ざんするためには、ネットワーク全体の計算量の半数以上を自身の端末で占めなければならず、大きなコストが発生します。
そのコストは、マイニングに成功して受け取れる報酬よりもはるかに膨大です。
コストをかけてもそれに足る見返りが期待できないということが、改ざんされにくい理由です。
この膨大なコストを支払って攻撃を仕掛けるのが「51%攻撃」です。
過去のデータの改ざんも難しい
ブロックチェーンは、過去の記録の改ざんも難しい仕様となっています。
原則として、ブロックチェーンは前後のブロックに整合性がなければ、記録として認識されません。
過去の記録を改ざんしようとした場合、改ざんしようとするブロックの内容を書き換えなければなりません。
しかしブロックの中身を書き換えると、ブロックの情報で作られるハッシュ値が変わります。
ハッシュ値が変わると、改ざんしようとしたブロックの次のブロックが持っているハッシュ値と整合性が取れなくなり、ブロックがつながらない状態になります。
この改ざんしたブロックをつなげるためには、改ざんしたあとのブロックも延々と書き換え続ける必要があります。
そのため、過去の記録を改ざんするには、その後に続く膨大な量の記録を改ざんしなければならず、現在の技術ではほぼ不可能といわれています。
記録を紛失しない
ブロックチェーンには、記録を紛失しないという特徴があります。
もし1つの端末で記録が紛失した場合でも、P2Pのネットワーク上に存在する別の端末に記録が残っていることが、その理由です。
ブロックチェーンの活用事例
ここからは、ブロックチェーンの活用が期待できる分野や、企業などの活用事例を確認していきましょう。
活用が期待できる分野
仮想通貨のものと思われることもあるブロックチェーンですが、ごく身近な情報管理の手段として活用が期待されています。
食品管理
ブロックチェーンは、食品管理の分野でも活用が期待されています。
生産者や小売業者が共同で利用できるブロックチェーンを使い、産地や製造プロセスの管理を行うことが可能です。
著作権管理
デザインや音楽などの著作権管理も、ブロックチェーンの活用が期待できる分野です。
ブロックチェーンを使いコンテンツと権利者の紐付け行ことで、公正な著作権管理を行うことが可能です。
また、二次創作物などで発生した利益に関しても、元コンテンツを親としたツリー構造による自動分配で、権利者へ正しく還元を行うことができます。
(参考)
経済産業省|平成30年度ブロックチェーン技術を活用したコンテンツビジネスに関する検討会 報告書<要旨>
▶スマートコントラクトが可能にするデジタルコンテンツの再販・二次使用
不動産
不動産などの管理に関しても、ブロックチェーンの活用が見込まれています。
不動産の取引価格や修繕費用などの過去の情報を正しく記録したり、契約を自動化するスマートコントラクトで仲介手数料を削減したりすることが見込めます。
また、不動産自体をトークン(プラットフォーム上で流通する通貨)にすることで、資産の流動性向上も期待できます。
(参考)
コインテレグラフ|ブロックチェーンによる不動産取引成立 米国初
行政サービス
行政サービスなどの公的な分野にも、ブロックチェーンの活用は期待されています。
実際に韓国のソウル市では、オンラインでの住民票照会や、行政の取り組みに貢献した市民に対してマイレージを付与するなど、ブロックチェーンを活用したサービスが計画されています。
(参考)
コインテレグラフ|韓国ソウル市、今年11月にブロックチェーン基盤の行政サービス展開 | 「ブロックチェーン都市」目指す
企業の支援・採用事例
すでに実用化へ向けてシステムの開発も進んでいます。
ウォルマート
米小売業大手のウォルマートはIBMと共同で、ブロックチェーンを活用した流通のトレーサビリティシステムを開発しています。
現在はインド産のエビの追跡・管理に対して、開発したシステムを活用しています。
コインテレグラフ|米小売大手ウォルマート、インド産エビ用にブロックチェーン基盤のサプライチェーン構築
電通
広告大手の電通はスタートアップ企業の支援を行う「GRASSHOPPER」というプロジェクトを手がけています。
第2期のプログラムでは、ブロックチェーン事業を展開する株式会社GINKANが採択されています。
GRASSHOPPER|アクセラレーションプログラム「GRASSHOPPER」第2期 採択企業決定!
MUFG
株式会社三菱 UFJ フィナンシャル・グループとAkamai Technologies, Inc.はGlobal Open Network 株式会社を設立し、ブロックチェーンを活用した決済サービスの開発を行っています。
2020 年上期を目標に、サービスを提供する予定としています。
(参考)
三菱UFJフィナンシャル・グループ|「Global Open Network 株式会社」共同設立について
自動車大手
先日、自動車業界でもブロックチェーンによる実証実験を開始することが報道されました。
ホンダ、BMW、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、ルノーの5社が共同で行うもので、駐車場料金や高道路料金などを記録し自動で決済まで行うことを目指しているもの。
これまでのETCなどと異なり、ブロックチェーン上に記録するため専用端末も不要になります。
コインテレグラフ|ホンダやBMW、GMなどがブロックチェーン使い、電気自動車で自動決済サービス実験開始へ
ゲーム
ブロックチェーンを使ったゲームのリリースも続いています。中にはビットコインやイーサリアムをもらえるゲームも!
デジタル資産の流動性向上
ブロックチェーンは、ゲーム内の資産の所有権を正しい記録として残せるだけでなく、その移転を容易にします。
これによって、ゲーム市場におけるデジタル資産の流動性が向上し、さらなるマーケットの拡大が見込めます。
スポーツ業界のブロックチェーンゲーム参入
スポーツ業界でも、ブロックチェーンを活用したゲームの開発やリリースが計画されています。
たとえば、男子プロバスケットボールリーグであるNBAは、「NBA Top Shot(トップショット)」というゲームをブロックチェーン企業と提携し、2020年の初め頃を目処にリリースする予定です。
(参考)
コインテレグラフ|米NBAがブロックチェーンゲームに参戦 「クリプトキティ―ズ」のDapperと提携
まとめ
以上、ブロックチェーンの仕組みについて解説してきました。あらためて、この記事のポイントをまとめておきましょう。
- ブロックチェーンは取引記録の台帳であり、改ざん耐性が高く紛失リスクが少ない
- P2Pの仕組みにより、端末同士でパワーやリソースを分散して補い合っている
- ブロックチェーンは食品や不動産の管理、行政サービスなどの分野でも活用が見込まれている
- 電通やMUFGなどの大手企業もブロックチェーン事業への支援やサービス開発を行っている
ブロックチェーンは今後、さまざまなビジネスでの利用が予想できます。
理解を深めておけば、自分自身の仕事に役立てられることでしょう。
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