【イラストで完全理解】ビットコインのライトニングネットワークとは

ビットコインのライトニングネットワーク

仮想通貨(暗号資産*1)をめぐる技術の中で注目されている「ライトニングネットワーク」とはどんなものでしょうか?

もしビットコインがライトニングネットワークを正式に採用すれば、ビットコインでの決済がクレジットカードの決済速度を超えることも夢ではありません。

そんなライトニングネットワークについて、基本的なところから具体例まで、詳しく解説していきます。

*1)2019年3月、呼び名を「暗号資産」とする法律案が金融庁から第198回国会へ提出されました(参考|第198回国会における金融庁関連法律案

1. ライトニングネットワークとは

ライトニングネットワークはセカンドレイヤー

ライトニングネットワークは、ビットコインのブロックチェーンを利用してその上に存在する機能の1つです。

ブロックチェーンの上に重なっている、もう1つのレイヤー層といったイメージです。

このライトニングネットワークがあるレイヤーをセカンドレイヤーと呼び、ブロックチェーンのあるレイヤーをファーストレイヤーと呼びます。

1-1. 処理速度が速く手数料が超安い

ライトニングネットワークでできることは、ブロックチェーン上でできることとそれほど違いません。新たな技術ではなく、すでに存在している技術を組み合わせただけのものです。

しかしライトニングネットワークを利用すると、ビットコインのブロックチェーンだけの時とは比べ物にならない速度で取引を処理できます。

クレジットカード以上の処理速度

ライトニングネットワークでは、取引のたびにブロックチェーンにブロックをつなげる必要がありません。そのため、1秒間に1,000件は処理することができ、理論上は1秒間に1万件の処理が可能となっています。

クレジットカードが1秒間に数千件ですので、ライトニングネットワークなら将来的に処理速度がクレジットカードを上回ることができるかもしれません。

手数料がほとんどかからない

ビットコインの取引手数料は、1取引あたり約132円(2019年4月現在)。決済を繰り返せば、それだけ負担がかかってしまいます。

しかしライトニングネットワークであれば、最初と最後の決済だけをブロックチェーンに記録しますので、ライトニングネットワーク上で1取引行っても100取引行っても手数料は変わりません

ライトニングネットワークを使えば、ビットコインの欠点である「取引の遅さ」と「手数料の高さ」をクリアすることがでるのです。

1-2. ブロックチェーンの記録を省略する事で速度アップするしくみ

ライトニングネットワークはセカンドレイヤーで取引を記録します。ブロックチェーンに記録するのは、最初の契約時最後の精算時だけです。

例えば、AさんがBさんから1BTCのコーヒーを毎日購入するとします。

◆ブロックチェーンの場合

毎日1BTC の取引が行われますので、取引内容である「AさんからBさんへ1BTC送付」が、ブロックチェーンに追記され、その都度決済が完了します。

◆ライトニングネットワークの場合

ライトニングネットワークでは、手順が少々複雑です。

まず週初めに「Aさんが10BTCを預けるので、Bさんは1週間後にAさんへ残金を返す」という約束をします。

ライトニングネットワーク2

その後Aさんは、毎日コーヒーを受け取ります。この間10BTCは預けられているだけで動きません。ただAさんがコーヒーを受け取るたびに、残金の記録が1BTCずつ減っていくだけです。

ライトニングネットワーク3

Aさんが毎日コーヒーを購入すれば、1週間後の残金は3BTCになります。この1週間後の約束の時点で、初めて決済されます。

ライトニングネットワーク4

最初の「AさんからBさんへ10BTCの支払い」と最後の「BさんからAさんへ3BTCの返金」という決済がブロックチェーンに記録されます。

ポイントは、ライトニングネットワーク内では残金という内部的な記録が動くだけで、ビットコインそのものは動いていないということです。そして最終結果だけが決済されブロックチェーンに記録されます。

ブロックチェーンは取引の決済処理に対して時間と手数料がかかりますので、その取引がなければ時間も手数料もかからないというわけです。

1-3. ライトニングネットワークの基本は1対1の専用線

ライトニングネットワーク5

ライトニングネットワーク6

ライトニングネットワークは、最初と最後の取引だけブロックチェーンに記録して、その間のやりとりはブロックチェーンから離れたところ(オフチェーンと呼びます)でやりとりします。

そのため、本来なら必要となる決済の処理時間取引手数料減らすことができるのです。

しかしブロックチェーンから離れたところでやりとりするということは、ブロックチェーン上で行われる「取引の検証と記録」が行われないということです。

そのためライトニングネットワークでは、取引をする二者間で専用通信を作って、不正を防ぐようにしています。

この専用通信を「ペイメントチャネル」と呼びます。

ペイメントチャネルには、「マルチシグ(Multi Signature)アドレス*2」を利用して、当事者が同意しなければ取引したビットコインにアクセスできない専用通信を形作ります。

*2)複数の鍵を使って暗号化するしくみで、すべての当事者の鍵が揃わなければ(すべての当事者が同意しなければ)復号化できず、コインを動かすことができません。

ペイメントチャネルは当事者の同意を得て成立させることができ、第三者が関与できませんので、専用通信として機能するのです。

前項で紹介した例を用いて説明しましょう。

(1)Aさんが10BTCを預ける

ライトニングネットワーク7

Aさんは「10BTCをBさんへ送る」マルチシグ宛の取引を作ります。この取引を成立させる(マルチシグアドレスへ送付する)には、AさんとBさんの鍵が必要ですので、AさんもBさんも、勝手にこの取引を進めることはできません。BさんはAさんの鍵がなければ、送られてきた10BTCを使えません。

つまり、この時点では取引は行われません

(2) BさんはAさんへ1週間後に残金を返す約束をする

ライトニングネットワーク8

Aさんは1週間後に残金が返金される取引を作成し、Bさんの署名を付与します。しかし、すぐにマルチシグアドレスへ送付することなく、コピーをBさんへ送ります。

(3)ペイメントチャネルを開く

ライトニングネットワーク9

Aさんは最悪の場合は返金取引を成立させることでリスク回避できるため、取引のリスクはありません。コピーを送った後、Aさんは取引の原本に署名してBさんへ送ります。Bさんは受け取った原本をマルチシグアドレスへ送付して、取引を成立(ブロックチェーンに記載)させます。

この時点で、マルチシグアドレスへ10BTC預け金としてプールされています。

その結果、10BTCの預け金をベースにした1対1のやりとりが成立し、ペイメントチャネルが開いたことになるのです。

(4)Aさんは、毎日コーヒーを受け取ります

ライトニングネットワーク10

Aさんがコーヒーを受け取るたびに、Bさんは残金を1BTC減らした金額で返金取引を更新して、AさんとBさんの鍵で暗号化します。

(5)最終決済する

ライトニングネットワーク11

返金期限の1週間が経過した後、最終的な返金取引がマルチシグアドレスへ送付されます。その結果、3BTCがBさんからAさんへ返金される取引が決済されます。

このようにブロックチェーンには、最初の10BTCの送金と、最後の3BTC の返金しか決済(記録)されておらず、その間に発生する日々の1BTCのやりとりはされていません。

そのため、時間も手数料もかからないのです。

2. 専用線を繋げてライトニングネットワークが出来上がる

ライトニングネットワークは1対1の通信だけではありません。

ライトニングネットワークは、ペイメントチャネルを組み合わせて第三者を介することで、複数対複数で、任意の個人間送金を実現するのです。

では、このライトニングネットワークの肝と言うべき新しい送金方法がどう実現されるのか、説明していきましょう。

2-1. ウサギ村からの仕送りをどうするか

ライトニングネットワーク12

ウサギ村のお母さんは、都会で勉強している息子から食べ物がなくなりそうだという手紙を受け取り、30BTC送ってあげようと考えました。

でも、ウサギ村は都会と直接取引をしたことがありません。行ったこともない長い距離を、30BTCものお金を持って旅するのは、危険です。

困ったウサギ村のお母さんは、隣のカメ村の村長に相談しました。カメ村はウサギ村と都会の中間にあるので、都会とウサギ村の両方と交流があるのです。

ライトニングネットワーク13

「わしは都会に住む知り合いのゾウ市長がおる。じゃから、わしへ30BTCを預けてくれたら、ゾウ市長を通しあんたの息子へその金を送ってやるよ」

ウサギ村から都会へ直接送れなくても、間にあるカメ村へお金を送れば、カメ村から都会へお金を送ってくれるのです。

ウサギ村とカメ村の間であれば、よく知っている道なので、ウサギの母さんも安心してお金を運べます。

ウサギのお母さんは喜んで、カメ村の村長へ30BTCを持って行きました。

これで、息子もおなか一杯ご飯が食べられます。

めでたし、めでたし。

と、ここまでの話で、「良かったね」と思う人は少ないでしょう。

もちろん、直接届けられなければ、そこにつながっている別の誰かを経由して送るのは、常とう手段です。

しかし、カメ村の村長はウサギの息子へ本当に30BTCを送ってくれるのでしょうか?

2-2. ウサギがカメ村長やゾウ市長を信用しなくても良いシステム

もちろんウサギの母さんは、初めて会うカメ村の村長に何の保証もなく30BTCを渡すほどお人よしではありません。

彼女は、ウサギ村とカメ村でお金のやりとりを安全に行う方法を使ったのです。それは、鍵のついた金庫を使う方法です。

ライトニングネットワーク14
相手を信用しなくても送金できるシステムの全体像

その金庫は、送金する側と受け取る側、二者間の鍵が揃わなければ金庫を開けられません。ウサギの母さんとカメの村長、そしてゾウ市長、それぞれ鍵を用意します。

そしてさらに、ウサギの母さんがすべての金庫に合言葉を決めます。この合言葉は、ウサギの息子だけが知っている鍵の合言葉です。

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この息子の合言葉を使って金庫を締めると、全員がそれぞれ持っていると息子の知っている合言葉の3つが揃わなければ、誰も金庫を開けることができなくなります。

ウサギの母さんは30BTCを入れた金庫を閉めて、カメの村長へ渡します。

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カメの村長は、カメの村長とゾウ市長の鍵が揃わなければ開けられない金庫に30BTCを入れて閉めます。

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同様にその30BTCを受け取ったゾウ市長は、ゾウ市長とウサギの息子の鍵が揃わなければ開けられない金庫に30BTCを入れて閉めます。

そして、その開かない金庫を持って、ウサギの息子のもとへ向かったのです。

ライトニングネットワーク18

この時点では誰も30BTCを使うことはできません

2-3. ポイントは鍵と合言葉のシステムの伝言ゲーム

ウサギの息子はゾウ市長の鍵と引き換えに、金庫を開ける合言葉をゾウ市長へ教えました。そうすれば、ウサギの息子は30BTCを手に入れられます

ゾウの市長はすぐに帰って、カメ村長から預かった金庫を持ってカメ村へ行きます。そしてウサギの息子から聞いた合言葉をカメ村長に伝え、代わりにカメ村長の鍵を使い金庫を開けるのです。

すると、ゾウの市長は30BTCを使えるようになります。

カメの村長も同様に、ウサギの息子の合言葉をウサギ村の母さんへ伝え、代わりにウサギ村の母さんの鍵を使い金庫を開けます。

ウサギの息子の合言葉でなければ金庫は開きませんから、金庫が開くということは、カメの村長がきちんと息子へお金を渡してきた証明になるわけです。

ライトニングネットワーク19

これで、ウサギの母さんはカメの村長やゾウ市長を信用することなく、息子へ安全にお金を送ることができました。カメの村長も、ウサギの親子を特に信用する必要もなく、お金を取り戻しました。

カメ村長が倒れて送金できなくなったら?
もしも、息子の送金経路の途中でカメ村長が倒れてしまったら、「Time out」となります。
つまり送金は失敗。全ての送金が中止となり、送金途中の30BTCはウサギ母さんのもとへ戻ります。
ライトニングネットワーク20

2-4. 一瞬でものすごい数行うのがライトニングネットワーク

以上がペイメントチャネルを、第三者を経由して接続する方法です。

 

この一連の流れがイナズマ(lightning)のようにものすごい速さで行われるのがライトニングネットワークなのです。ライトニングネットワークという言葉もここから来ています。

ライトニングネットワーク21

このような一連のやりとりを行えば、いくつものペイメントチャネルを接続することができます。

もちろん、ウサギの母子だけのやりとりだけであれば、ウサギの母さんと息子が、何とかしてペイメントチャネルを開くほうが効率良くやりとりできるでしょう。

しかし、例えばウサギの息子がもっと多かった場合、すべての息子とペイメントチャネルを開くのは効率が悪いです。その場合は、カメの村長にまとめて送金して、カメの村長から各息子へ送金されるほうが、ウサギの母さんにとっては効率が良いでしょう。もちろん、カメの村長は、スズメの村を中継しても良いでしょう。

このようにペイメントチャネルを複数接続したネットワークを使って、ブロックチェーン外で複数人の間の取引を実現するのが、ライトニングネットワークなのです。

ライトニングネットワークのビジュアルイメージ
ペイメントチャネルを可視化した図(参照:1ML

3. ライトニングネットワークの今後の課題

ライトニングネットワークを採用すればビットコインのスケーラビリティ問題を解消し、利便性を上げることができます。

しかし、現在はまだ課題が多く正式に採用されていません。

実装に向けての今後の課題を挙げていきます。

3-1. 普及するためのインセンティブがない

ライトニングネットワークの素晴らしい点は、ペイメントチャネルでネットワークが構成されることによりスムーズな送金ができるようになることです。

この決済システムを利用するには、ペイメントチャネルのネットワークが社会に普及する必要があります。

しかし現在は、このネットワークに参加したとしても参加者に対し明確な報酬はありません

多くの人に認知され利用されるためには、ビットコインがマイニングを行うと報酬が得られるように、ネットワーク参加者に対し報酬や相応のインセンティブが必要となると言われています。

3-2. 手数料が発生するかもしれない

ライトニングネットワークの基本のところで説明した通り、ライトニングネットワークは、預け金貸し付けで成り立っています。

ライトニングネットワークには、この預け金を収める巨大なプールが存在しており、そこに預けられたお金を貸し付ける形で取引が進むのです。

つまり、このお金のプールを管理する管理者が必要です。

ライトニングネットワーク内で第三者を介するために、その第三者へ手数料が発生する場合もあるのです。手数料を設定することにより、多くの参加者が集まり取引がスムーズになります。数多くのネットワークで取り入れられる可能性があるでしょう。

しかし、ライトニングネットワークで少額取引を数多く行おうと考えるユーザーにとっては、手数料が発生するということは大きな懸念点になるかもしれません。

4. ライトニングネットワークが体感できるサービス

ビットコインは、ブロックチェーンのデータをチェーンの外部で取り扱うことができる機能「Segwit」を2017年8月に実装しました。これはライトニングネットワークを導入するための実装です。

ライトニングネットワークを利用するための実験的な試みはいくつも行われており、2019年4月現在、ライトニングネットワークの容量は約1,000BTC

参考|1ML

ビットコインの現在の供給量(約1,760万BTC)に比べると、ライトニングネットワーク上に存在する割合は決して多くはありません。しかし実験的な試みでこの割合は、期待の表れとも言えるのではないでしょうか。

最後に、そんな試みのいくつかを紹介しましょう。

DG Lab Lightning Store

DGLAB

ライトニングネットワークを使った、ECサイトです。あくまでもデモサイトだという注意書きはありますが、実際にTシャツなどを購入できますので、決済速度の速さを体感することができます。

DG Lab Lightning Store

Y’alls

Y'alls

仮想通貨についてのブログで、記事を読むためにライトニングネットワークでの支払いを行います。

1記事単位で支払うので、興味のある記事だけ支払って読むという未来のコンテンツ売買を一足早く感じることができるでしょう。

Y’alls

Green Chain

greenchain

ライトニングネットワークでマンガを購読することもできます。

Green Chainでは、ライトニングネットワークで購読料の支払いを行っています。最新のマンガはBlock3で支払えば読むことができ、価格は0.0000135BTC(2019年4月10日のレートで7.8円程度)。

ライトニングネットワークに対応しているウォレットから、QRコードを使い送金すると読むことができます。マイクロペイメントを体感してみてはいかがでしょうか?

Green Chain

まとめ

ライトニングネットワークは、ビットコインの課題を解消することができる有力な候補の手段です。

もしも普及することができれば、すでに取引高で他の追随を許さないビットコインは、通貨としての価値が一気に上がることでしょう。

改めてまとめると、ライトニングネットワークには、以下のような特徴があります。

  • ブロックチェーンの外で取引を行うため、最初と最後の取引だけがブロックチェーンに記録される
  • 最初に預け金を払ってから、預け金を使ってやりとりする(預け金を預けるときと、最終的な決済だけがブロックチェーンに記録される)
  • ライトニングネットワーク内での決済速度は非常に速く、手数料もほぼかからない
  • 少額決済に向いている
  • ビットコインの課題を解決する(決済速度、手数料、スケーラビリティ問題)
  • 普及するためのインセンティブがない
  • 今後手数料が発生するかもしれない

もちろん最後の2点のような課題はありますが、すでにいくつもの試みが行われており一定の取引高を保っています。ある程度、実運用に耐えられる環境が整ってきたということかもしれません。

仮想通貨の周囲では様々な技術的なブレークスルーが起こっていますが、ライトニングネットワークは、その中でも特に、その動向に注目しておくべきと言える機能と言えるものでしょう。