
「バーン/Burn」が行われると、その仮想通貨(暗号資産*)は使用できなくなります。
これを聞いて、「自分が持っているコインも失われるのではないか?」と不安になっていないでしょうか?
しかしその効果は、コインの流通量を抑えてインフレを防止し、コインそのものの価値を向上させるという、ポジティブなものです。
「秘密鍵の分からないアドレスへ送金する」という行為を仮想通貨の送金処理を使って実現しているため、第三者が勝手にユーザーのコインをバーンすることはできません。そして、ユーザーの持っているコインが巻き添えを食って消滅するようことはありません。
バーンについて理解し、無用な恐れを抱いて機会損失するようなことがないようにしましょう。
*2019年3月、呼び名を「暗号資産」とする法律案が金融庁から第198回国会へ提出されました(参考|第198回国会における金融庁関連法律案)
目次
1. バーンをすると仮想通貨が使用できなくなる
仮想通貨がバーンされると、その対象となったコインは永久に使えなくなります。
しかし、「計画的に」行われるものがほとんどで、むしろその仮想通貨の価格を維持もしくは価格を上げることができるものなのです。
コインを使えなくして価格を上げる「バーン」について、詳しく説明しましょう。
1-1. バーンとは何か
バーンは英語の「Burn」、つまり、「燃やす、燃焼する」という意味の単語です。
燃やした紙幣が使えなくなるのと同じように「対象のコインを使えなくする」という意味で、この言葉が使われています。
もちろん、実態のない仮想通貨を燃やすことはできません。そのため仮想通貨のバーンでは、「誰も秘密鍵を知らないアドレスへ送金する」ことで使えなくします。仮想通貨の送金ですので、使えなくなったことがブロックチェーン上に記録されるわけです。
また、バーンされたコインがもともと誰のもので、どれくらいの量をいつバーンしたのかを、誰でも確認、証明することができるようになります。
それに加えて、仮想通貨の送金処理ですので、どこかの誰かが、あなたのコインを勝手にバーンすることはできません。
※もちろん、ハッキングされるなどで秘密鍵を知られてしまえば、バーンされる可能性はあります。セキュリティ対策はしっかりとしておきましょう。
そのため、お金を燃やすのとは違って、バーンは非常に透明性の高い通貨の処分方法と言えるでしょう。しかし、何の意味もなく仮想通貨を使えない状態にするのは、誰も望みません。バーンには、とても重要な目的があるのです。
1-2. バーンの目的と種類
バーンを行う目的は、以下の2点です。
- インフレを防ぐ(仮想通貨の価値を維持する)
- 仮想通貨の価値を上げる
コインを使えなくすることで、なぜこれらの効果があるのか、簡単な例も使って、それぞれ説明しましょう。
1-2-1. インフレを防ぐ(仮想通貨の価値を維持する)
インフレというのは、物価が上がることです。
インフレには、ものの価値が上がることと、ものに比べてお金の流通量が増えることで、「同じものを買うのに、以前よりも多くのお金を支払わなければならなくなる」ことがあります。後者は「お金の価値が下がる」ことで発生する場合があります。
仮想通貨の場合も同様で、流通量が増加しすぎると、コインの価値が下がってしまうのです。
簡単な例を紹介しましょう。
例えば、YENというコインが流通している村では、村人の3人が2YENずつ持っており、各自が持っている道具を2YENでレンタルしていたとします。(6枚流通している)
その後しばらくして、YENが新規発行され、12枚流通するようになりました。
そうなると、余分なYENを持つ村人の中には、4YEN払うから先に貸してほしい、といった人も現れるでしょう。逆に4YEN でなければ貸せないという人が現れるかもしれません。
そういったことが繰り返され、レンタル代は4YENになって、もとのバランスに戻ります。
この時点で、もともと2YENで道具のレンタルが成立していたものが4YENでレンタルされるようになり、同じものを借りるのに2倍のYENが必要になりました。つまりYENの価値は半分になっているわけです。
これがインフレです。
バーンを実施すると、流通量を物理的に減らすことができます。そのため、例のような価値の低下(インフレ)を防止する効果が期待できるわけです。
つまり、YENの発行元が買い取るなどして、定期的にバーンすれば、YENの価値は保たれることでしょう。
なお、ビットコインを含む仮想通貨のいくつかは、発行数の上限を定めることで、インフレを防ごうとしています。
1-2-2. 仮想通貨の価値を上げる
バーンをして仮想通貨の流通枚数が減っても、その仮想通貨の価値の合計がただちに減るわけではありません。つまり、バーンされた分だけコイン1枚の価値が上がって、仮想通貨全体の価値が維持されるのです。
こちらも、YENの村で説明しましょう。
レンタル代が4YENになった村で、1人でYENを8枚もため込んだ村人がいたとします。
この村人が、6YENを誤って燃やしてしまいました。
そうなると、村には6枚のYENしかありません。そんな状態で4YENも出して道具を借りられる人はいないでしょう。そのため、お互いに道具を貸すことも借りることもできず、生活できません。
そこで、道具を2YENで貸す人が出てきます。そして、最終的には、レンタル代は2YENで落ち着きます。
同じものを借りるのに半分のYENで済むわけですから、YEN1枚の価値が2倍になったことになります。
以上のように、バーンをすると仮想通貨そのものの価値が上がることは少なくありません。
そのため、価格が低迷している仮想通貨の「価値を上げる」ために、バーンを実施することがあるのです。
2. バーンをすれば、仮想通貨の価格が上がる!
前述の通り、理論上、バーンすれば仮想通貨の価値は上がります。
しかし、実際の仮想通貨ではどうなっているのでしょうか?
2-1. バイナンスコイン(BNB)のバーン前後のチャートを確認
バーンを実施する仮想通貨の中でもっとも有名なのは、バイナンスコイン(BNB)でしょう。
BNBは、世界最大の仮想通貨取引所であるBinanceが発行しているトークンで、手数料に使用すれば割引も受けられるため、人気のある仮想通貨の1つです。
Binanceでは、四半期ごとに利益の数割分のBNBを買い戻して、バーンしています。これは、ユーザーへの利益還元と、BNBの発行枚数超過によるインフレを防ぐ施策です。
そんなBinanceのバーンの時期とBNBの価格動向をチャートで確認してみます。(BNB/USDTの価格推移ですので、対ドルの価格になります)
バーンが行われたのは、2019/1/16です。
2019/1/16のバーンの前に少し価格が下落傾向だったものの、バーン後は上昇傾向に転じていることが見られます。下落傾向にあった価格へバーンが良い影響を与えた可能性があると言えるでしょう。
このように、バーンを適切に行うことで、インフレさせることなく価値を維持することができるわけです。
2-2. バーン詐欺に要注意!
バーンを実施することにより、仮想通貨の価格が下がることを抑え、上昇傾向に転じさせることができます。タイミングによっては、価格を維持するどころか押し上げる効果があるわけです。
このことを考慮すると、「バーンの実施時期を事前に知ることができれば、儲けることができるかも」と、考えるのではないでしょうか?
しかし、実際は儲かる可能性もあるが、慎重にしなければ大きな損失を被る可能性があります。
「バーンをすると仮想通貨の価値が上がる」という話から、バーン実施の情報を聞いた多くの人がその仮想通貨を買い、バーン実施前に価格が高騰することがあります。
じつは、それを狙って「安い仮想通貨を事前に買ってバーンの噂を流し、価格が上がったところで、すべて売却して逃げる」という人たちがいるのです。そういった人たちの思惑に乗ってしまうと、その後バーンが実施されないことすらあります。
そもそも、ニセの情報で価格上昇するような仮想通貨がバーンを行ったとしても、バーン前に高騰した価格まで戻るようなことはほぼありません。(特に、草コインの場合は長期保持していても価格上昇せず、泣き寝入りするしかないことが多いでしょう)
もちろん、うまくタイミングが合えば儲かる可能性もあります。しかし、勘と運に任せた投機では、大きな損失を被る可能性の方が大きいでしょう。
もしバーンの情報を探して仮想通貨を購入するのであれば、情報元の信頼性やその仮想通貨のホワイトペーパー、バーンの目的などをしっかりと確認してから実施しなければいけません。
3. 同じ「バーン」でも、じつは違うものがある?
仮想通貨のしくみとしてのバーンには2種類あり、ここまでに説明したのは、その1つです。最後にバーンの種類について、紹介しておきましょう。
3-1. 価値を担保するBurn(焼却)
ここまでに説明してきたバーンが、このバーンです。
特定のコインを計画的に無効(秘密鍵が分からない)アドレスへ送信し、使えなくすることで、仮想通貨の流通量を調整して価格の下落を防ぐ(価格を上げる)ことを期待します。
多くの場合、バーンすることで、コイン1枚あたりの価値が上がり、インフレを防止してくれます。
3-2. 失った代わりに得る「Proof of Burn」
こちらが、もう1つのバーンです。
「Proof of Burn(PoB)」は、直訳である「バーンの証明」の通り、バーンしたことを証明することで、代わりに特定のコインやトークンが付与されるしくみのことです。
ビットコインでは、新たなコインを得るためには、「Proof of Work(PoW)」のしくみのもとでマイニングを行わなければいけません。そのため、高性能なコンピュータを持つ人しか新たなコインを得ることが難しく、不公平感があります。
しかし、PoBでは、バーンを行えば(コストを払えば)、誰でも新たなコインを得ることができるのです。
有名なものでは、ビットコインのブロックチェーンを利用するカウンターパーティー(XCP)があります。
カウンターパーティーでは、BTCをバーンすることで、規定の枚数(約1,000枚)のXCPが付与され、カウンターパーティー上で利用することができるようになっています。
つまりXCPを得るために、BTCをバーンするわけです。
カウンターパーティーでは、この「PoB」を取り入れることで、対価(BTC)を払った人に対して、その対価に応じたコインを配布し、かつ、急激な供給量の増加が起こらない環境を作ることができます。同時にビットコインという価値の保証も得られていると言えるでしょう。
モナパーティーは、モナコインのブロックチェーンを使っているため、カウンターパーティーよりも決済速度が早く、手数料などのコストが低いのが、最大の特徴です。
まとめ
- バーンすることで、対象のコインは使えなくなる
- バーンは、秘密鍵を誰も知らないアドレスへ送金することで実現する
- 第三者が勝手にコインをバーンすることはできないので、バーンを行ってもユーザーのコインが使えなくわけではない
- バーンは計画的におこわなれ、仮想通貨の価値を保持(インフレ防止)や、価格を上げるために行われる
- 草コインのバーン時期を知って儲けようとするのは、危険が伴うので、しっかりとした調査が必要
- バーン実施の噂を広めて価格操作する詐欺的なものもあるので注意
- Proof of Burnは、バーンすることで新規コインが発行されるしくみのこと
つまり、バーンそのものは、不安に感じる必要のない、仮想通貨を健全に保つしくみの1つなのです。