PoSのしくみを徹底解説!仮想通貨のマイニングに専用機はいらない

専用ハードウェアがなくても仮想通貨のマイニングできるPoS(プルーフ・オブ・ステークス)というものを、聞いたことがあるでしょうか?

PoSを採用している仮想通貨(暗号資産*)であれば、マイニング専用に開発されたマシンを別途導入することなく、莫大な電力を消費することもなく、いまからでも仮想通貨のマイニングに参加することができるのです。

イーサリアムも、今後PoSに以降するためにアップデートを行う予定です。

そんなPoSについて詳しく解説していきましょう。

*)2018年12月の仮想通貨交換業等研究会による報告書において、呼び名を「暗号資産」とする内容が取りまとめられました(参考|「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第11回)議事次第

1. リスクを取る人が承認をするのがPoS

PoSはコインを多く持つ人が承認権を得られるしくみだと言われています。

これは、どういう意味なのでしょうか?

そもそも、承認権というのが、何の承認権で、PoSはなぜコインの量でその承認権を与えるのか、ブロックチェーンの仕組みから説明していきましょう。

1-1. ブロックチェーンで取引が成立する仕組みをおさらい

ブロックチェーンは、ネットワーク全体で共有している取引台帳です。

ブロックの中にはいくつかの取引履歴(トランザクション)が入っており、そこに「コインが誰から誰へ移動しているのか」が記載されているわけです。

そして「取引成立」とは、ブロックがブロックチェーンにつなげられた状態のことを言います。

▼そもそもトランザクションとは?▼

ブロックチェーンにブロックをつなげる(承認する)ためには、トランザクションがそれぞれ正しい取引であることを確認(ブロックを生成)した上で、そのブロックをブロックチェーンへつなげる条件を満たさなければいけません。

この「ブロックの生成」と「ブロックチェーンへつなげる」という操作は、仮想通貨のネットワークへ参加しているパソコン(ノード)なら、「誰でもできる」のです。

不正を防ぐ仕組みがなければ不正な取引が簡単にまかり通ってしまいますし、承認者に与えられる報酬も悪意を持つ人にすべて持って行かれることでしょう。

それに、ネットワークに接続しているノードがすべて勝手気ままにブロックをつないでいては、ブロックチェーンが台帳としての役割を果たすことができません。

 

そこで、ブロックチェーンにブロックをつなげる権利(承認権)を得るためには、「コンセンサスアルゴリズム」の条件を満たさなければいけないというしくみが生まれました。

▼ブロックチェーンってなに?▼

そのコンセンサスアルゴリズムが、ビットコインではPoWですし、今回紹介するPoSもその1つなのです。

1-2. コインを多く持つものが承認者となる

PoS(Proof of Stake)は直訳すると「投資の証明」です。

「株式を多く持っている人が企業の経営判断を行うことができる権利を持つ」のと同じように、「コインを多く持つ人がブロックチェーンのブロックをつなげる(取引を承認する)権利(承認権)を持つ」というしくみなのです。

株式を多く持つ人は、お金を持っているから企業の経営判断に意見を述べることができるのではありません。

企業が成長することに自分のお金を投資しているから、企業の経営判断に意見を述べる権利を持っているわけです。

つまり、倒産などのリスクを承知の上で投資しているからこそ、権利を得ているわけです。

 

PoSも「コインを持つ=コインが値下がりするリスクを承知の上で投資している」ということから、コインを多く持つ人に承認権を与えるというしくみになっています。

コインの保有量によって承認者が決まることで、「持てるものがより豊かになる」と考える人もいるかもしれません。

もちろん、最低限保有しておかなければいけないコイン数などの条件はありますが、承認者は条件をクリアしている中からランダムで決まります。その確率が、コインの保有量によって上がるしくみになっているわけです。

1-3. PoSのメリット

PoSでは、コインを多く持つ者が承認者になる確率が上がります。

コインを多く持った人は、好きなように不正な取引も承認できるということになるわけです。実際、そんな風に考える人も少なくないでしょう。

しかし、不正な承認を行っているようなコインの価値は簡単に下がります。

そうなれば、もっとも大きな損失を被るのは、高い確率で承認者になれるほどの枚数のコインを保有している人です。

つまり、コインの価値を下げる行為は承認者自身の首を絞めることになるわけです。

「コインを多く持つだけで承認者になれる」のではなく、「コインを多く持ちリスクを抱えている人は、正しく行動する力が働くから承認者になれる」という考え方が、PoSを正しく動作させるしくみの基本なのです。

また、コインの量=電子的な値がそのまま承認者になる確率につながります。パソコンに余計な負荷がかかることもありませんので、パソコンのハードウェア性能もそれほど必要としません。

なによりも承認者を決める時間がとても短くなりますので、取引成立までの時間も短くなります。

これは、決済手段としての仮想通貨にとってとても重要なメリットです。

1-4. PoWからPoS

仮想通貨の承認(マイニング)には「高機能なハードウェアと莫大な電力が必要」という話が半ば常識のようになっているかもしれません。

これは、ビットコインが採用しているPoW(Proof of Work)というコンセンサスアルゴリズムの影響です。

PoW(プルーフ・オブ・ワーク)という仕組みは、「コンピュータでの計算」という仕事によってブロックチェーンの信頼性を支えています。

「コンピュータでの計算」とは、時間のかかる計算を最初に解いたノードが承認者になるしくみのこと。

この「コンピュータでの計算」という仕事は一般的なパソコンでも可能なもので、以前は多くの個人マイナーが参戦していました。

しかし、企業の参入や専用機の登場など参加者が膨大となり、今では高性能なコンピュータとそれを動かすための莫大な電力が必要になっているのです。

参加者は、そのパワーとエネルギーを持つことができる国や企業に参加者が偏っており、個人ではビットコインのマイニングに参入し利益を得ることは事実上不可能となっています。

 

PoSは、そんな状況を改善しようと生まれたコンセンサスアルゴリズムの1つです。

コンピュータによる仕事に頼ることなく信頼性を支え以下のような利点があります。

  1.  承認者になるための計算量が不要なため、電力消費が小さい(運用コストが小さい)
  2.  コインを多く持つほど「正しい承認」をする必要がある(51%攻撃を防げる)
  3.  コインを持っているだけで「承認者」になれる可能性がある

PoWのもっとも大きな問題である高い計算量(消費電力)がなくなることで、専用のハードウェアは不要になるのです。

なにより普通のパソコンがあれば、承認者になれる可能性がゼロではないというのは、マイニングを始める参入障壁がとても下がります。

2. PoSの承認者になる条件は1種類だけじゃない! 

じつは、PoSでは「コインの量」だけで承認者になる確率が上がるのではなく、他の条件も総合して考慮されています。

単に承認者になりやすくなると言っても、その手法にもいくつかの種類が存在しているのです。

それらを踏まえて、PoSについてもう少し詳しく説明していきましょう。

2-1. 承認者になりやすくなるための条件は「保有量」だけでなく「保有期間」も重要

PoSは「コインの量が多ければ承認者になる確率が上がる」というしくみです。

これは、前述の通り、「コインを多く保有する=コイン破綻時のリスクが上がる」ことから、コインを多く持っている人に承認権を与えるという考え方です。

「コインを多く保有する」という条件だけであれば、保有者が好きなタイミングでコインを売却することができてしまいます。リスクとしてはそれほど大きくなく、合わせて大量の売りが発生することで、市場に混乱が起きてしまいます。

そのため、「コインの保有量」という条件だけではなく「一定期間の保有」という条件もあるのです。

コインによってその期間は違っていますが、24時間程度は保有し続けなければ「コインを保有している」ということになりません。ボラティリティの高い仮想通貨の世界では24時間保有し続けるのも、相応のリスクでしょう。

この最低限の期間保有することで、「コインの保有量×保有期間」といったポイント(CoinAge)が計算され、それによって承認者になる確率が上がるものもあります。

CoinAgeを採用している仮想通貨の場合は、最低限のコインの保有量でも長く持っていれば承認権を得られる確率が上がっていきます。

もっとも、最低限と言っても相応の枚数を最低枚数として設定していることがほとんど。

そのため、PoWのような権力集中が、より起こりにくいと考えられます。

2-2. PoSとPoWのハイブリッドと言える通貨もある

PoSを採用しつつ、PoWでマイニングをする仮想通貨も存在しています。

そのようなPoSPoWのハイブリッドとも言える仮想通貨は、ビットコインのようにコンピュータで計算を解くことでマイニングする(承認権を得る)ことができます。

しかし、PoWの計算量の基本となるdifficulty(計算の難易度)が、PoSによって決まっているのです。

つまり、CoinAgeが大きい、もしくはコインを多く保有していることで、difficultyが下がりマイニングに成功する確率が上がるようになっているわけです。

2-3. PoSを採用している仮想通貨による承認権の取得方法

PoSを採用している仮想通貨によって、PoSのしくみには複数の種類があることを説明しました。

判断基準が、コインの保有量そのものである場合と、CoinAge(コイン保有量×保有期間)である場合2通りあります。

どちらの場合でも、取得後一定の期間は判断基準に使われないようになっていることがほとんどです。

実際に承認者を決める方法として、条件を満たしたノードの中からランダムで決定する方法と、PoWの計算を行って決める方法2種類があります。

なお、どちらの場合もコインの保有量やCoinAgeが大きい方が有利になるようになっているわけです。

※これは理論上の分類です。これらの方法を採用している仮想通貨が必ず存在していることを保証しているわけではありません。

なお、ここまでの説明を読んで、「たくさん保有している人はいつまでも承認者になる確率が高いままだから、やりたい放題じゃないだろうか?」と思うかもしれません。

しかし、仮想通貨という価値の変動するものであることを考慮すると、そこまで莫大な数のコインを保有することは難しいと考えられています。

なぜなら、莫大な保有量を維持して承認権を独占し続けることは、「利用者の減少(価値の低下)」を招くからです。

仮想通貨の利用者の減少は、仮想通貨の価値を下げるということですので、大量に保有している人がもっとも避けたいことです。

PoSの仮想通貨を大量に保有し続けることは、実質困難なことだというわけです。

また、1度承認者になることでCoinAgeが低下するしくみのある仮想通貨もありますので、そういった仮想通貨であれば承認者は固定化されません。

また、コインの保有量だけで承認者になる確率が決まる仮想通貨でも同様に、1度承認者になると、最低保有期間をリセットしてすぐには承認者に再選されにくくなるようなしくみがあるものもあります。

3. PoSの問題点も押さえておこう

PoWの問題点を踏まえて考えられたPoSですが、PoSだからこその問題があることが分かっています。

これらを踏まえた上で、PoSを活用した仮想通貨を投資やマイニングの選択肢に入れるかどうかを検討しましょう。

3-1. 低コスト51%攻撃

PoWでも警告され実際に実行されたこともあるのが、51%攻撃です。

51%攻撃は、中央集権ではないブロックチェーンの承認システムに存在する根本的な問題とも言えるもので、様々なコンセンサスアルゴリズムが回避先を模索している問題です。

PoWのケースだと、全ノードの50%を超える莫大な計算量を誇るノードが現れた場合、必ず承認者となり得ることができ、思い通りに承認できるようになるというものです。

PoSの場合は、50%を超えるコインを保有した場合が相当します。

しかし、それほどのコインを保有しているノードがコインの信頼度(価値)を落とすようなことを敢えて行う理由がないため、PoSではほぼ起きないと考えられていました。

しかし、人の心理を巧みに利用することで、PoSでも51%を行えることが分かったのです。それが、「低コスト51%攻撃」です。

その方法は、以下のようなものです。

  1. 該当の仮想通貨の51%以上を取得する意思と、そのための潤沢な資金がある証明とを表明する
  2. 1.の情報から該当の仮想通貨の売りが殺到し、価値が下がる
  3. 十分に価格が下がった時点で、該当の仮想通貨を買い占める

この手順を実行することでほとんどコストをかけることなく、実際に51%以上を取得することができ実際に51%攻撃を行うこともできるようになるわけです。

3-2. Nothing at Stake問題

PoSの利点は、承認者になるためのコストが低いということです。

もちろんコインを保有するためのコストはかかりますが、その後のマイニング自体にPoWほどのコストはかかりません。

つまり、二重支払などの不正なブロックをブロックチェーンに追加して、その後何事もなかったかのように、不正なチェーンにブロックをつなげることも低コストでできるということです。

また、本来であれば、他のノードが不正なチェーンを無視するはずです。

しかし、承認者になるコストが低いPoSでは、不正なチェーンを承認してしまっても失うものがほとんどありません。

むしろ、不正なチェーンを拒否して取引を滞らせるよりも、より多くのブロックを生成して承認者になることを目指した方が報酬を得やすいため、不正を気にせずに承認してしまうことがあるのです。

3-3. 流動性の問題

PoSはコインの保有量が多い方が、承認者になり報酬を受け取りやすくなります。CoinAgeであっても同様です。

使わずに持っている方が有利なわけです。

しかし、経済圏というのは通貨が使われる(流動性が上がる)ことで成長していくものです。そのため、経済圏には流動性が必要なのです。

PoSは、しくみとしてその流動性を下げてしまう可能性があるのです。

4. PoSを採用している仮想通貨

では、ここまでに解説したPoSを採用している仮想通貨を紹介しましょう。

しかし、PoSを採用している仮想通貨は、まだ日本国内の取引所で取引できるものがありません。

唯一、日本国内の取引所で購入することができる仮想通貨として、イーサリアムがPoSを採用する計画を掲げています。現在はイーサリアムの採用しているコンセンサスアルゴリズムはPoWです。

 

なぜ、イーサリアムはPoWからPoSへ移行しようとしているのでしょうか?

それは、なにより「PoWのままでETHの経済圏を維持するためのコストが高いため」でしょう。

前述の通り、PoWでは莫大なエネルギーを消費する計算を行うことによって取引が承認されます。つまり、通貨として利用されるたびに莫大な電力を消費するわけです。

これでは日常生活で使えるような通貨になることは到底できません。

そのため、イーサリアムはPoSへの移行を予定しているわけです。

現在でも活発に取引されているイーサリアムですから、PoSが正式に採用されればより活発な取引が行われることになるでしょう。

なお、前述の通り、PoSにはいくつかの問題が指摘されています。

その中でも、PoSの潜在的な問題で仮想通貨ネットワークに被害が及ぶ可能性が高いのが「Nothing at Stake問題」です。

この問題が発生してしまうと、ブロックチェーンが複数分裂した状態のままになってしまい、そのものの信頼が揺らぎます。

そのため、イーサリアムでは「不正なチェーンを承認したノードに罰則を科す」しくみを取り入れました。

そうすることで、不正なチェーンの承認をしない動機を与え、「Nothing at Stake問題」を回避しようとしているわけです。

5. PoSでマイニングするには? 

最後に、PoSでマイニングを行う方法について、簡単に説明しましょう。

もちろん、仮想通貨によって多少の違いはあると思いますが、一般的に必要な条件と注意点だけを説明しますので、参考にしていただければと思います。

必要条件◆

PoSでマイニングを開始するための条件は、ほとんどの場合、以下の3点です。

  1. 一定数以上のコインを保有する
  2. 保有するコインは取引所ではなく、Walletに保管する
  3. 一定期間以上、保有し続ける

これらの条件を満たした時点から、承認者になる権利を得ることになります。

もちろん、ノード(パソコン)を起動して仮想通貨のネットワークに接続した状態でなければ承認処理ができません。しかし、承認処理そのものにCPUパワーが必要なわけでもなく、ただノードを稼働しておくだけです。

◆注意点◆

PoSでのマイニングについては、「一定量のコインを一定期間保有する」条件が必須です。そのため、以下の点に注意してください。

  1. 価格変動による損失
  2. セキュリティ対策

国家による価値の保証がない仮想通貨は、最悪の場合その価値が失われることもあります。

そして「PoSでマイニングをしている=大量のコインを保有している」ということですので、ハッキングの標的になる可能性が高いと認識しなければいけません。

まとめ

PoS(プルーフ・オブ・ステーク)について、解説しました。

PoSはPoWの欠点を補う形で生まれてきたコンセンサスアルゴリズムであり、事実、PoWの欠点である、大量の計算をするための膨大な電力消費を回避することができるしくみです。

そのため、「専用のハードウェアと電力消費」を必要とせず、誰でも、いつでも参加の門戸が開かれている使いやすいしくみと言えます。

もちろんPoSにも相応の欠点があります。

例えば、「大量のコインが必要=初期費用がかかる」ため、本格的に参入するためのハードルが高いことや、「大量保有しておく必要がある=流動性が下がる」ことによる利便性への懸念などです。

しかしそれらは仮想通貨とPoSのしくみと関係をしっかりと理解しておけば、対処できないものではありません。

最低保有量を維持する程度であれば、上記の問題は深刻なものではないでしょう。

今後、イーサリアムでも採用される予定のあるコンセンサスアルゴリズムですので、いまのうちに理解を深めておくことで、始めるべきかどうかの判断もしやすいかもしれません。