
仮想通貨(暗号資産)取引での利益を確定申告しなくてはいけないのか、心配な方は多いようです。
また損失の場合は申告しなくていいと考えている人もいるようですが、果たして正しいのでしょうか?
仮想通貨取引で利益が出た方も損失が出た方も、申告が必要なケース・申告の具体的な方法を知って、適切に対処しましょう。
目次
1. 確定申告が必要なケースと不要なケース
申告手続きの前に、そもそも申告が必要なケースとそうでないケースについて整理しましょう。あなたはどちらに当てはまるのか、ここで判断してください。
1-1. 仮想通貨による所得と判断され、確定申告が必要になるケース
仮想通貨を利確したとき、その利益は仮想通貨の所得とみなされ確定申告の対象となります。
仮想通貨による所得(利確)とみなされる場合
- 仮想通貨を売却した
- 仮想通貨で仮想通貨を買った
- 仮想通貨でものやサービスを購入した
- ハードフォークで仮想通貨を得た
- マイニングで仮想通貨を得た
- ゲームなどで仮想通貨を得た など
では1つ1つ見ていきましょう。
1-1-1. 仮想通貨を売却した
仮想通貨を購入してただ所持しているだけでは、確定申告の必要はありません。含み益がある場合でも、正式に利益として確定したわけではないからです。例えば2月に買ったコインを12月が過ぎても売却せずに保有している場合、確定申告の対象とはなりません。
これに対し、ある年の2月にビットコインを買って、10月に売却して30万円の利益を得たという場合、確定申告の対象となります。
なお確定申告で用いる「年度」とは、1月~12月を指します。日本企業で一般的な会計年度である4月~3月ではないことに注意しましょう。
現物取引では「収入」=「売却で得られた額」です。100万円で購入した仮想通貨を120万円で売却したとき、収入は120万円で、経費が100万円(=購入金額)です。
仮想通貨FXでは、原則として「収入」=「利益」です。120万円で売注文を出し、50万円になったときに買い注文を出したとすると、収入は70万円、経費が0円となります。
※税務局の回答を基に作成していますが、取引内容により詳細が異なる場合があります。
1-1-2. 仮想通貨でものやサービスを購入した
商品やサービスの購入は利確とみなされます。購入した物品やサービスの価格が所得となり、確定申告の対象となります。
1-1-3. 仮想通貨で仮想通貨を買った
例えばイーサリアムをビットコインで買う場合、イーサリアムというものを購入したことになるため、利確とみなされます。購入時点で利益または損失が生まれるため、課税対象となります。
税金対策のために持っている仮想通貨を別の仮想通貨に交換しようと思っている人もいるかもしれません。しかし別の仮想通貨の購入は利確扱いとなるため、税金対策とはなりません。
1-1-4. ハードフォークで仮想通貨を得た
ハードフォークによって得た新しい仮想通貨は、売却するまで課税対象にはなりません。国税庁によると、新しい仮想通貨が誕生した時点では取引相場がないため「価値を有していない」とみなすそうです。売却時点で利確となりますが、取得価額は0円で計算します。
1-1-5. マイニングで仮想通貨を得た
マイニングによって得た仮想通貨も、所得とみなされ課税対象になります。仮想通貨を得た時点の価額を利益として計算します。
1-1-6 ゲームで仮想通貨を得た
アプリゲームなどで仮想通貨を得た場合も、マイニングと同様に課税対象となります。仮想通貨を得た時点の価額を利益として計算します。
1-2.確定申告しなくても良いケース
仮想通貨取引で利益が出た場合でも、以下に当てはまる場合は確定申告をする必要はありません。
- 一社から給与所得を得ている人(会社員など)で年間の利益が20万円未満の場合
会社員など、一カ所から給与所得を得ている方の場合、年間通算での利益が20万円未満の場合は、確定申告をする必要はありません。比較的少額の投資に留めている方なら、この条件に当てはまるかもしれませんね。
ただし仮想通貨以外に、副業なども含めた雑所得で20万円以上となる場合は確定申告が必要です。また、ふるさと納税や医療費控除などで確定申告をする場合は、雑所得が20万円以下であっても申告しないといけません。
国税庁|確定申告が必要な方
2. 確定申告のやり方と計算方法
確定申告は計算と書類の記入方法さえ間違えなければ、それほど難しくはありません。
2-1. 仮想通貨の所得は「雑所得」として申告する
所得にもいろいろな種類がありますが、仮想通貨取引によって得た所得は「雑所得」に分類されます。申告者の職業・利益額に関係なく、雑所得で申告する必要があることをまずは覚えておきましょう。
雑所得とは、事業所得・配当所得・利子所得・給与所得など、他の所得のいずれにも当てはまらない所得のことです。仮想通貨の場合、他の所得として申告することは認められていません。
2-2. 用意するべき書類とデータリスト
まずは取引所から送られてくる、年間取引報告書を手元に用意しましょう。そのうえで国税庁のサイトにある「仮想通貨計算表(Excel)」をダウンロードします。フォーマットに必要事項を記入すれば、申告に必要なデータを計算できます。
暗号資産に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和2年12月)
エクセルフォーマットでは仮想通貨名を記入し、購入・売却それぞれについて、通貨の数量・金額を記入していきます。具体的なSTEPは以下のとおりです。
STEP1.エクセルフォーマットに従い、青・ピンク・赤・緑の箇所に必要事項を記入
STEP2.茶色の箇所について、仮想通貨での決済がある場合に記入
STEP3.前年末の残高がある場合、黒の箇所に記入
STEP4.売却価額・売却原価・所得金額の3つがエクセル上で自動計算される
記入に必要な数字は年間取引報告書に記載されていますので、資料さえあれば迷うことはないでしょう。
海外の取引所では年間取引報告書がもらえません。また計算が複雑でエクセルでの計算が難しい方もいるでしょう。これらの場合は、Cryptact(クリプタクト)の利用がおすすめです。
Cryptactとは、仮想通貨の税金計算をサポートしてくれるオンラインサービスで、年間収益計算をスピーディーに完了してくれます。しかもすべての機能は無料で使えるのでお得!
Cryptactの使い方など詳細を知りたい方は、以下のページをご参照ください。
2-3. 申告手続きの方法
仮想通貨取引で申告に必要な数字が揃ったら、確定申告書類に記入していきます。以下3つの方法から選べます。
- 紙の書類に記入して提出
- 会計ソフトに記入して印刷して提出
- e-Taxを利用する
紙の書類の記入は、初心者の場合はわかりづらくミスしやすいため、おすすめではありません。e-Taxか会計ソフトを利用すると良いでしょう。
e-Taxとは、インターネットを利用して税金などの申告手続きができるシステム。国税庁へデータを送信する仕組みなので、紙の書類の提出が要りません。入力に関してさまざまなヘルプを見ることもできます。
会計ソフトに関しては、「マネーフォワードクラウド会計」や「freee」などのクラウド型のソフトも登場しており、ソフトをダウンロードしなくてもインターネットに接続できれば利用可能。確定申告の形式での書類を印刷できるサービスもあります。
仮想通貨以外の雑所得がある、他に事業所得があるなどの場合、会計ソフトの導入がおすすめです!
以下の記事では、利益の計算方法や便利な計算ツールを紹介しています。
3. 仮想通貨による所得税率はどのくらい?
仮想通貨取引については、現物取引・証拠金取引(仮想通貨FX)ともに雑所得で申告します。雑所得の金額により、所得税率は以下のように変化します。
課税対象となる所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円未満 | 5% | 0円 |
195万円以上、330万円未満 | 10% | 97,500円 |
330万円以上、695万円未満 | 20% | 427,500円 |
695万円以上、900万円未満 | 23% | 636,000円 |
900万円以上、1,800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円以上、4000万円未満 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
国税庁HPより作成
例えば雑所得が200万円の場合、200万円*10%の200,000円から控除額97,500円を差し引くので、102,500円が所得税となります。
雑所得は金額が高くなるほど、所得税率が高くなっていきます。最高の場合、控除額があるとはいえ半分近くが所得税となってしまいます。仮想通貨で大きく儲かった方もいるようですが、所得税分の金額をきちんと手元に残しておかないと、あとで困ったことになります。
所得税を支払うのは、確定申告をする2月~3月か、銀行引き落としの場合は4月となります。税金を問題なく支払えるよう、利益をすべて使い果たしてしまわないようにしましょう。
4. 損失を出した場合の税金は?盗難にあった仮想通貨は?
損失になったなら確定申告なんてしなくていいのでは?と思う方もいるかもしれません。しかし損失でも申告をしておいたほうがいい場合もありますよ。
4-1. 損失でも確定申告をしておくと有利なケース
損失が出た場合、他の雑所得となる所得があれば相殺が可能です。この相殺を損益通算といいますが、自動的に行われるわけではないので、必ず確定申告での手続きが必要です。ただし国内の仮想通貨ではないFX(外国為替証拠金取引)や先物取引は分離課税なので、仮想通貨との合算はできません。
また、給与所得など他の所得と相殺することはできませんので注意しましょう。
4-2. 損失を翌年以降に繰り越すことはできない
国内の外国為替証拠金取引、先物取引は分離課税が適用されるため、損失を3年間繰り越せます。しかし仮想通貨は雑所得のため、翌年以降には繰り越せません。仮想通貨FXについても雑所得扱いであり、繰り越し不可能です。
4-3. 盗難にあった仮想通貨の確定申告について
盗難にあってしまった場合、雑損として控除の対象とすることができます。盗難のほかに、災害・横領などの場合も雑損になります。ただし雑損控除の適用には条件があり、生活に必要な資産であると認められないと対象にはなりません。
コインチェックのネム流出事件では、コインチェック側から金銭補償が行われました。国税庁によると、この補償は賠償金に該当しないとのことで、非課税にはならないそうです。同額でネムを売却したことになるため、利益額次第では確定申告の対象となります。
国税庁|暗号資産交換業者から暗号資産に代えて金銭の補償を受けた場合
5. 確定申告しなくてもばれない?
「せっかく利益が出たのに税金で減るのは嫌だ、黙っていれば大丈夫」と考えていませんか?しかし、確定申告が必要なケースなのに申告しないのは、絶対にNGですよ!
5-1. 未申告はバレる!ちゃんと申告しよう
まず、仮想通貨取引の未申告はバレます。「億り人」という言葉が世間で流行したように、仮想通貨取引による利益は大きな注目を集めました。税務署がこれを黙って見過ごすことは、今後も考えられないと思うべきでしょう。
仮想通貨取引所は、支払調書という資料を税務署に提出します。そこには、どこの誰がいくらの利益、損失を出したのかの情報が記載されているのです。よって、確定申告の資料と照合すれば未申告はバレてしまいます。
例え取引所が支払い調書を提出しなくても、税務署がその取引所を本格的に調査すれば、支払調書に該当する情報を洗い出すことができます。どの道、未申告はバレてしまうと考えましょう。
5-2. 未納のペナルティとして税金が増えることも!最悪の場合は刑事罰へ
税務署の職員による税務調査は、企業だけでなく個人も対象になります。しかも未申告状態のときすぐに来るとは限らず、何年も経過してから来ることもまったく珍しくありません。
数年経過して忘れかけていた頃に訪れる税務調査の恐ろしさを指摘する人も多いもの。本来納めるべきだった税金を長期間納めていなかったということで、追徴課税というペナルティを課されてしまいます。
当然、未納の年月が長いほど税金も高くなります。場合によっては一括で支払えないほどの金額になってしまうリスクもあります。
しかも脱税内容が特に悪質であると税務署が判断すると、追徴課税に加えて、刑事罰に発展してしまうことも。懲役または罰金、もしくはその両方が課されてしまう可能性があります。
申告の必要があるのに申告しないというのは、脱税に他なりませんので、正直に申告しておきましょう。
5-3. 節税と脱税は違う!合法的な手段で税金を節約しよう
脱税は犯罪行為ですが、節税は違います。節税の手段にはいろいろありますが、わかりやすく使いやすいのが各種控除です。
扶養控除や配偶者控除などを利用すると、課税所得を減らすことができますが、これは合法的に認められた節税の手段の1つです。正当な資格があるなら、控除を活用して税金を少なくすることは脱税ではなく、まったく違法ではありません。
控除については、先述した各種会計ソフトやe-Taxでも詳しい説明を見ることができます。確定申告の際に、利用できる控除は積極的に活用していきましょう。
まとめ
仮想通貨取引についても株式やFXなどと同様、利益が出て条件に当てはまる場合は確定申告が必要です。世間で大きく注目されたため、税務署も目を光らせている可能性は高いです。きちんと申告をしておきましょう。
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