
仮想通貨(暗号資産*)の天井とはトレーダーなら誰もが知りたい『相場の上げ止まり』という意味です。ただどんなに相場の分析に精通していたとしても、完全に天井を予測するということはできません。
昨年9月、イーサリアムの共同創始者であるヴィタリック・ブテリン氏が「仮想通貨とブロックチェーン業界は天井に近づきつつある」と発言し、イーサリアムの価格を下落させるきっかけを作ってしまいました。ただどんなに著名人の発言だからといっても真に受けてしまうと、取れる利益も取れなくなってしまいます。
相場の分析をすることによって、利益を獲得できるだけではなく、急激な相場の転換の際の被害も最小限にすることができます。
*2018年12月の仮想通貨交換業等研究会による報告書において、呼び名を「暗号資産」とする内容が取りまとめられました(参考|「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第11回)議事次第)
目次
1. 過ぎてから振り返って認識する「天井」
冒頭で書いたように仮想通貨の天井を当てるということは非常に難しく、名うての投資家でもことごとく外しています。仮想通貨は価格の上限がない為、株式やFXよりも更に予想する事ができないという難しさも加味されているからです。
1-1. 天井を狙い過ぎてはいけない理由
投資で重要なことは利確をして、しっかりと利益を確保するということです。特に投資初心者の場合は大底で買いできる限り天井で売りたい、という思考になってしまいがち。
ですが重要なのは、『自分がいかに利益を出すことができるか』ということです。
仮想通貨ではありませんが、株の格言に『魚の頭と尻尾はくれてやれ』という言葉があります。格言の意味は、株を底値で買い天井で売ろうとするのではなく、欲を取らずにしっかりと利益をとる、という意味です。
株式でも仮想通貨で同じで大底で買い天井で売りたい。という気持ちは十二分に分かります。しかし自分の資産を少しでも増やすということを第一目標にするべきでしょう。
1-2. 著名人の発言が相場に影響を与えることも
2017年ビットコインの価格が大きく上昇しました。
上昇したときばかり大きくフィーチャーされていますが、著名人の発言によって大きく下げたこともあります。大きく下げた要因について検証をしていきます。
上のチャートは2017年を中心にしたチャートで、著名人の発言によって価格が下落したのは赤で囲ってある2017年9月です。
このとき、アメリカの大手銀行であるJPモルガンのCEO、ジェームズ・ダイモン氏が発言した「ビットコインは詐欺」という発言によって、一時急落してしまいました。
ただ結果として一時的な下落にしかならず、その後はチャートを見てわかるように大きく上昇しています。
以上のことから著名人の発言には一定の力がありますが、一時的なことが多いということです。
特に2017年の9月の場合上昇トレンド中だったこともあり、ビットコインの価格が一時的に下がったということは、当時を振り返ると絶好の買い場とも言えました。
ただし、この事はチャートを振り返り後から考えれば、ということ。
つまり、天井を予測するということは不可能なのです。
1-3. 著名人による仮想通貨の予測価格も外れる
2018年末ビットコイン価格は1BTC=約40万円(約3,700ドル)という価格になってしまいました。そこで仮想通貨業界のエキスパートがどのくらい、昨年末の価格を予想できていたのかを検証してみましょう。著名人の予測がいかにあてにならないかというのが分かります。
・Dan Morehead
投資企業であるPantera CapitalのCEOである、Dan Morehead氏の2018年末までのビットコイン価格の予測は2万ドルでした。
CNBC|Bitcoin is flashing a rare buy signal, crypto hedge fund manager says
・Arthur Hayes
仮想通貨取引所BitMEX(ビットメックス)の共同男創設者。2018年末までに約5万ドルと予測。
CNBC|Bitcoin hasn’t bottomed yet, says crypto trader who predicted it could reach $50,000 by year’s end
・Kay Van-Petersen
SaxBankアナリストKay Van-Petersen氏は2018年12月までに「10万ドルまで上昇する」と述べています。
CNBC|Bitcoin headed to $100,000 in 2018, says analyst who predicted last year’s price rise
以上世界でも著名なアナリストが予測したビットコイン価格です。昨年はネガティブなニュースが多かったこともあって、予測とは違ってきています。ですが、それだけビットコインの価格を予測するというのは難しいということです。
仮想通貨業界の著名人が言う天井というのは、あくまでも『予測』と『願望』が入り混じっているものなので、あまり真に受けてはいけません。仮想通貨の天井というのは誰にも分からないものなのですから。
2. 利確ラインを決めることの大切さ
著名人の発言に惑わされることは非常に危険なことだとお分かりいただけたでしょうか。
この章ではトレードをするうえで利確をする重要性について述べていきます。
2-1. あらかじめシナリオを作っておく
シナリオを作るというのは、買うポイントはもちろんのこと売るポイントをあらかじめ決めておいてから実際にエントリーをするというものです。
例えば1BTC価格がどこまで上がったら利確をするなど、あらかじめ決めておくということです。利確シナリオを作っておくことで、売買タイミングを逃す心配はありません。
トレードをしていると、買った途端に価格が下がるなんていうのは日常茶飯事です。
突然の暴落が生じたときでも、しっかりと損切りラインを決めておくことで損失を最小限に抑えることができます。
利確または損切する場合でも、シナリオを作ってからトレードをすることで、価格の値動きに惑わされないで済むようになります。
注意をしないといけないのが、通貨の価格が上がっているときに「まだ上がるのでは?」とか、下がっている場合でも「もう少ししたら上がるのではないか」などと欲を出さずに、利確または損切りをするのが重要です。
2-2. きりの良い価格での利確
例えば、現在のビットコインの価格が1BTC=40万円前後なので、45万になったら利確をする、といった具合です。
事実過去のビットコインチャートをみてみると、きりの良い価格まで上昇しそこから利確した人が多いのか、下落していくというのも多くなっています。
下の画像の番号はそれぞれ高値がきりの良い数字になっています。
① 高値が95万円付近をつけてから大きく下落
② 高値が80万円付近をつけてから大きく下落
③ 高値で75万まで上昇したものの、下落
もう少し長い足でみてみるともっと切りの良い価格が意識されていることがわかります。
下の画像はbitbankのビットコイン(BTC)チャートの週足チャートです。
240万円というのは、ビットコインが史上最高値を記録したときです。
こちらのbitbankのチャートを見ての通り、最高値を記録後価格が下落していますね。日本円換算で240万円という価格が天井だったということです。
こちらは仮想通貨の大半の時価総額や取引量などを取り扱っているCoinmarketcapのチャートです。こちらでは2017年12月17日にビットコインの価格が最高額となっていることがわかります。
価格はちょうど20,000ドル付近をさし、その後下落していますね。
「きりの良い数字」は必ずしも日本円での「きり」ではありません。このことを意識した上で取引を行うことにより、利確ラインと損切ラインのシナリオをイメージすることができます。
3. 3つの利確方法
2章でもした、『きりのよい価格』での利確以外にも、利確方法はあります。
一つはポジティブなニュースまたはネガティブなニュースが発表されたとき。もう一つは、テクニカル分析です。両方ともトレードで利益を確保する際、必要な知識となっています。
ただしここで紹介するのはあくまでも基礎的な知識であるので100%、利益を出すことができるというわけではありません。
3-1. きりの良い価格
前述した切りよい価格に目標値を置くことで、確実に利確をすることができるというもの。注意しないといけないのは仮に上昇相場に突入して、自分の目標値を簡単に超えてしまったとしても、欲張らないでしっかりと利確をしないといけないということです。
おはようございます。
去年ビットコインを100万で利確。
早すぎたわ~!と後悔してたら、100万で利確して良かったね。となるのか…
税金分+先物の損金が億りましたのでご心配なく(ToT)アルトコインはガチホしてますが、億の含み益から1/3になっておりまする…
また寝る…
— 自由人 (@zenidealer) January 17, 2018
3-2. ニュースに目を向ける
昨年の2018年、仮想通貨に関するニュースは大なり小なり、ポジティブなものからネガティブなものまで様々ありました。
序盤で著名人の発言はあまりあてにはならない、と説明しましたが、ネガティブな発言の後の価格の値動きによっては、売却することも考えないといけません。
さらに、取引所の運営禁止や国家による仮想通貨取引の禁止などの出来事も、どのような値動きになるのかを警戒する必要があります。
第一報のニュースが大事! 報じられた後のビットコインの値動き
2017年の大きな上昇もあってか、ポジティブなニュースでもあまり大きな価格変動はありませんでした。逆にネガティブなニュースは非常に多かったのが、2017年の特徴といえるでしょう。
① 2018年1月、国内大手仮想通貨交換所であるコインチェックが、約620億円相当の仮想通貨ネムをハッキング
この事件をきっかけに仮想通貨は大きく下落していきます。
② 2018年2月、中国政府が国内外の仮想通貨・ICO関連のサイトへのアクセスを全面的に遮断
大きく下落したものの、前月の終値近くまで戻しました。
③ 2018年3月、Googleが6月から仮想通貨広告の公開禁止、Twitter社もICOを含む仮想通貨広告の公開禁止
1BTC=100万を割れ60万円台後半まで急落してしまいます。
④ 2018年6月、アメリカの仮想通貨取引所Coinbaseが三菱UFJグループと連携し、日本市場の開拓を目指すことを発表
下落はしているものの、下値が60万円台になっていきます。
⑤ 2018年7月、世界最大の資産運用会社であるBlackRockの仮想通貨市場への参入が検討される
94万5千円まで上昇。ただ上値が重たい状態になっています。
⑥ 2018年8月、ニューヨーク証券取引所の親会社であるICEが仮想通貨取引所Bakktの開設を発表
安値は60万円台の半ばを維持したものの、前月の始値を超えることはできませんでした。
⑦ 2018年9月、日本の仮想通貨交換所であるZaifが日本円でビットコインなど67億円仮想通貨がハッキングによって盗まれる
安値の60万円台を維持しつつも少しずつですが下値が切りあがっていました。
⑧ 2018年12月、米国証券取引委員会(SEC)がVanEckのビットコインETFの最終延期を2019年2月末に決定
前月からそれまで下値で60万円を割ってしまい、40万円をきる直前まで下落してしまいます。底値を探している状態でした。
著名人のtwitterをフォローして発言に注目してみよう!
次に著名人がビットコインについて何かしらの発言した後のチャートです。発言後どのようにビットコインの価格は変動するのでしょうか。
①Twitter創業者、ジャック・ドーシー氏
2018年3月21日the Timeのインタビューでジャック・ドーシー氏は「世界で統一された共通通貨が台頭し、インターネット上でも単一の共通通貨が使用されることになる。それがビットコインになるのではないかと考えている」と発言しています。
ジャック・ドーシー氏の発言によって一旦天井をつけ、大きく下落していますが、約1カ月後にはJack Dorsey氏の発言後の高値を超えていることが分かります。
CNBC|Bitcoin will become the world’s single currency, Twitter chief says
②『投資の神様』ウォーレン・バフェット氏
2018年5月5日CNBCキャスターであるベッキー・クイック氏に「ビットコインは殺鼠剤の2乗のようなものと」と酷評。
CNBC|Warren Buffett says bitcoin is ‘probably rat poison squared
③Microsoft創業者、ビル・ゲイツ氏
2018年5月7日米CNBCのインタビューに対し「ビットコインへの投資は生粋の大馬鹿理論によるものだ。容易にできるのならば、ビットコインを空売りするだろう」と答えました。
CNBC|Bill Gates: I would short bitcoin if I could
世界的にも著名な2人の発言で大きく下落しています。バフェット発言後よりもビルゲイツ氏の発言によって、ビットコイン価格が大きく下落してしまいました。その上、チャートは山を2回(ダブルトップ)を作りかかっていました。
バフェット氏の発言と、前回の山の頂上でもある100万円という価格によりダブルトップが完成。その後ビルゲイツ氏発言で追い打ちがかかり下落トレンドに確実に突入したとことが分かります。
3-3. チャートから予測する
チャート分析をするには様々な手法があります。
ローソク足
一定期間の相場を始値、高値、安値、高値を一本の棒状で表したものをローソク足といいます。
江戸時代の日本で作成されたとされ、一度くらい見たことがある方も多いでしょう。現在主に、株式やFX市場でも使用される頻度が高いものです。
一般的に短期売買場合は、分足や時間足。長期売買の場合は月足、週足をベースに日足をみていくという流れです。
始値よりも終値が低い場合を陰線と呼び、始値よりも終値が高い場合を陽線と呼びます。ローソク足は実体の部分と上髭と下髭の3つから構成されています。
移動平均線
移動平均線は、主にトレンドをつかむためのテクニカル分析方法で、一定期間の価格の平均を出し繋いだものです。
平均値の集計期間を使い分けることで短期的なトレンドと長期的なトレンドがつかみやすくなるという大きなメリットがあります。
レジスタンスラインとサポートライン
① レジスタンスライン
日本語では上値抵抗線と訳され、市場参加者が意識する相場のポイントとされています。
それまで買いポジションを持っていた投資家が利確する基準にする目安になります。レジスタンスラインを突破して価格が上昇すると、価格が急上昇するきっかけとなるとされています。
② サポートラインとは
サポートラインもレジスタンスラインと同様重要です。日本語では下値支持線と訳されます。市場参加者が意識する安値の目安となっており、サポートラインより下に落ちることはないと推測されている水準です。
価格がサポートラインを割った場合、一斉に売りが殺到し、売りで参入する投資家が増えるので価格が急落する可能性が高くなります。
まとめ
この記事で重要なことは下の通りです。
- 天井を予測することは不可能。
- 著名人の発言には惑わされないこと。
- 利確ラインを欲張らない。
仮想通貨のトレードで重要なことは、しっかりと利益を確保し欲を張らずに利確をするということが重要です。だからこそ、チャートやニュースを自分なりに分析をして、人の意見に惑わされないようにしましょう。
そしてしっかりと利益確定し、迷わず損切りをするということが、市場で生き残る最良の方法です。