
MyEtherWallet(マイイーサウォレット)やMetamask(メタマスク)といったイーサリアム用ウォレットを使うとき、「ガスリミット」・「ガス価格」という言葉をよく目にします。取引所でETHを送金するときや、他のウォレットを利用しているときには見かけないため、ガスとは一体何か気になるものです。
実はガス(Gas)とはイーサリアムの送金手数料を指します。特にイーサリアム用ウォレットからICOに参加したり、仮想通貨のゲームアプリなどを利用したりするときには、ガスという知識が必要不可欠です。
この記事ではガスの特徴や仕組み、計算方法、MyEtherWalletやMetamaskのガス設定方法を解説しています。イーサリアムの送金時に手数料で損をしないためにも、しっかりとガスについて学んでいきましょう。
1. イーサリアム|ガス(Gas)の全容と仕組み
イーサリアム(Ethereum)のウォレットから送金をしたい場合、上の画像のようにガスリミット(Gas Limit)やガス価格(Gas Price)という言葉を目にした人も多いでしょう。このようにイーサリアムには送金時にガス(Gas)の設定を行う必要があり、両者は切っても切れない関係となっています。
ご存知の通りイーサリアムは時価総額2位(2018年11月1日時点)、ビットコインに次ぐ取引量を誇り、仮想通貨市場でも人気の高い銘柄です。イーサリアムの特徴は、スマートコントラクトという仕組みを使って、「誰でも簡単にトークンやアプリを生み出す」ことができます。
イーサリアムのネットワークではERC20という規格を使い、新しく仮想通貨(トークン)を生み出したり、アプリを開発すると、ICOなどの方法で広く投資家から資金を調達することも可能です。ただし、ERC20から生まれたトークンを購入するにはETHが必要で、MyEtherWallet(マイイーサウォレット)などからETHを送金しなければなりません。
今回紹介するガスは、こうしたERC20のICO参加やアプリ利用の際に必ず必要です。ガスについて基本的な情報を知っておくと、イーサリアムに送金遅延トラブルが起こったときなどに適切に対処できるでしょう。
1-1. ガス(Gas)はETHを送金する手数料
ガスはイーサリアム特有の考え方であり、送金をする際の手数料を意味します。たとえば、ビットコイン(Bitcoin)を送金するときは、BTC単位で手数料を支払わなければなりません。イーサリアムも同じく送金手数料が必要ですが、ETHという単位で決済するのではなく、ガスを使うという特徴があります。
また、ガスの役割は送金時の手数料だけでなく、スマートコントラクトを実行したり、ブロックチェーン上に情報を保管するときにも必要となります。
イーサリアムにガスという制度が導入された理由は、主に以下の3つの目的を持って通貨体制が運
用されているからです。
- DoS攻撃を防ぐため
- スマートコントラクトの無制限の動作を防ぐため
- ブロックチェーンのセキュリティ体制を高めるため
イーサリアムはもともとビットコインのように決済用ではなく、アプリケーション開発のためにネットワークが構築されました。そのため、イーサリアムのブロックチェーンには様々なアプリが保存されるように設定されています。
ただ、決済に関わりのないブロックチェーンであっても、アプリケーション内で発生した決済や支払いはイーサリアムのチェーン上に記載しなければなりません。つまり、イーサリアムのチェーン内では常に仮想通貨の送金が行われているため、取引の整合性をチェックして(マイニングといいます)セキュリティ体制を高める必要があるのです。
そこで、ガスという手数料を設定し、ネットワーク内の送金者にガス支払いを課すことで、マイニングを行ってくれた有志(マイナー)にその手数料が行き渡るようにしました。つまり、手数料はマイナーへの報酬です。報酬というベネフィットが発生することで、多くのマイナーがネットワークに参加するようになります。仮にイーサリアムの取引量が多くなったとしても、マイナーが多ければ対処が行いやすいと言えるでしょう。
1-2. ガスリミット(Gas Limit)とガス価格(Gas Price)の違い
ガスには「ガスリミット」と「ガス価格」の2種類が存在します。イーサリアムの送金を行う場合、このガスリミットとガス価格を同時に設定しておかなければなりません。
ガスリミットとは送金時に発生する手数料の最大値を表します。
イーサリアムの送金に必要なガスリミットは「21,000」に設定されており、ここからどれだけ数を大きくしても送金のスピードは変わりません。
ガスリミットを設ける理由は、仮にスマートコントラクトで無限ループのトラブルが発生しても、上限値を設定しておけば手数料の高騰によるネットワーク負荷を減らせるからです。
次にガス価格ですが、こちらは文字通りガス1単位の値段を表しています。ガス価格の単位は「Gwei」で表示され、「1Gwei」は「0.000000001ETH」と等しいです。ガス価格はイーサリアム通貨の需要に応じて範囲が決まり、その範囲内でガス価格を高めることで送金スピードを上げることができます。ちなみに2018年11月1日のイーサリアムは約22,000円なので、1Gwei=0.000022円となります。
1-3. 手数料は「ガスリミット×ガス価格」で決まる
イーサリアムの最終的な送金手数料は、ガスリミットとガス価格を掛けあわせた数値で決まります。
仮にガス価格を20Gweiに設定し、ガスリミットを21,000にすれば以下のような手数料が算出されます。
■20Gwei×21,000=420,000Gwei
この420,000Gweiはイーサリアム単価に換算すると0.00042となります。現在の価格(1ETH=22,000円)でいえば、9.24円です。
イーサリアムのブロックチェーンは承認制によって送金が行われており、取引の整合性をチェックしてもらわない限り(マイニングしてもらわない限り)、送金データが反映されることはありません。この承認制は入札方式が採用されており、よりたくさんのガスを支払った人ほど先に送金データを処理してもらえます。
そのため、取引をすぐにでも処理してもらいたい場合には設定変更が可能なガス価格を変更する必要があるでしょう。
ガス価格を高く設定するほど、優先的にマイニングが行われます。
1-4. ICOやDapps利用時にガス(Gas)が必要
ガスの設定が必要なときはMyEtherWalletやMetamask(メタマスク)など、イーサリアム用のウォレットからETHを送金したときです。
一方、bitFlyer(ビットフライヤー)やZaif(ザイフ)など、取引所に用意している口座からETHを送金するときはガス設定は必要ありません。取引所からの送金時は、ガスではなく取引所に送金手数料を支払うだけで済むからです。
MyEtherWalletやMetamaskなど、イーサリアム用ウォレットからETHを送る場面というとICOのセールに参加したときや、Dappsを利用したときでしょう。
ICOとは仮想通貨を使用した資金調達のことで、新しく開発されたコインやトークンの開発費を募るために利用されます。ERC20で開発されたトークンは、基本的にトークン購入にETHが必要です。投資家は国内取引所などでイーサリアム通貨を買い、それをトークンの購入資金として利用します。
Dappsはブロックチェーンを利用したアプリのことで、最近ではERC20を利用した様々なアプリが開発されました。特にゲーム分野が活発で、キャラクターを育成・強化したり、レアなキャラを手に入れるとマーケットで売買ができます。その決済で利用されるのがETHです。
先述のようにICOやDappsでETH決済を行う場合、ウォレット用のアドレスが必要となるので、MyEtherWalletやMetamaskから送金する場合が多くなります。イーサリアム用のウォレットは、送金時の項目の中に「ガスリミット」、「ガス価格」が用意されているため、ここで設定が必要となるのです。
2. ガス(Gas)はいくらに設定すれば良いのか?
(参考:ETH Gas Station)
ガスはガスリミットとガス価格の乗算で計算できることをお伝えしました。では、イーサリアムを送金するとき、ガスリミットとガス価格はどの程度に設定すべきなのでしょうか。
ガスリミットは初期設定値が21,000となっており、基本的にこの数値は変える必要はありません。
一方、ガス価格は現在2Gwei~40Gweiが基準価格となっており、送金に求めるスピードに応じて変更ができます。ガス価格の目安は以下の通りです。
- 2 Gwei:基本的に数分以内に承認されますが優先度は低くなります
- 20 Gwei:ブロックが数個形成される間に承認されやすいです
- 40 Gwei:次回のブロック生成時に承認されやすいです
コインペディアでは、「現在のイーサリアム送金手数料(Gas価格)」など、ガスについて役立つツールを紹介しております。より実勢価格を参考にしたい方は、以下リンクをご確認ください。
イーサリアムのブロックチェーンは1秒辺りに約15件の送金処理を行っています。そして、約300件ほどに到達した時点で1つのブロック(格納庫)が生成され、その中へ送金データが保管されるのです。もし、このブロックから溢れてしまうと次のブロック生成まで送金処理は持ち越しになります。
イーサリアムのブロックが生成される時間は15~25秒です。上のガス価格の目安でいえば先に40Gweiの送金データを処理し、余裕が出れば2Gwei分を片付けていきます。そのため、ガス価格の支払い金額が少なくなるほど、複数のブロック生成まで待つ必要があるでしょう。仮に5つ先のブロックに格納されるとすれば75~125秒程度で済みますが、取引量が多くなってくるといつまで経っても送金処理されない事態も考えられます。
2-1. MyEtherWallet/Metamask|ガス(Gas)の設定方法
MyEtherWallet、Metamaskのソフトを使って実際にガスの設定を行ってみましょう。ここでは実際の画面を通じてガス設定方法をお伝えしています
2-2. MyEtherWallet(マイイーサウォレット)編
MyEtherWalletからガス設定する方法は、まずソフトのトップページにある「Ether/トークンの送出」をクリックして送金ページを表示させます。
画面左側に「Keystore/JSON File」をクリックし、画面右側の「お財布ファイルを選択」からKeystoreファイルを読み込みます。その下にはウォレット登録時に設定したパスワードを入力しましょう。最後に「アンロック」で送金ページにジャンプします。
ロック解除は秘密鍵でも可能です。
上の画像のように画面左側で「秘密鍵」を選び、画面右側に秘密鍵コードを入力してください。「アンロック」を押すと送金画面へ移動します。
送金画面には中央に「ガスリミット」、画面右上のプルダウンに「ガス価格」が表示されています。
ガスリミットは初期値で21,000と入力されており、特別な事情がない限りは変更しなくて構いません。
また、ガス価格はプルダウンを選ぶとバーで価格を細かく設定できるようになっています。一般的なETH送金であれば20Gweiで設定しておくと良いでしょう。
2-3. Metamask(メタマスク)編
Metamaskのガス設定方法は、ソフト起動後に出る画面から「SEND」をクリックします。
送金先のアドレスを選びます。
次に送金するETHの量を入力します。
後に送金画面が表示されますので、ガスリミットとガス価格を設定していきます。
設定方法はMyEtherWalletと同じです。ガス設定ができれば「SUBMIT」を押せば送金が実行されます。
3. ガス(Gas)の注意点とトラブル時の対処法
イーサリアムの送金はガスの設定によって、どの程度のスピードで処理されるかが変わります。そのため、必ずしもガスリミットを21,000、ガス価格を20Gweiに設定しておけば良いというわけではありません。
特に、イーサリアムやERC20で発行されたトークン・アプリに注目が集まり、ETHに需要が集中することで送金遅延のトラブルが起こることもあります。
ここではイーサリアムのガスについて注意すべき点や過去の送金トラブルの事例などを紹介していきましょう。また、その対処法も知っておくことで、今後イーサリアムの取引量が増加したときに役立つはずです。
3-1. ガス手数料が高騰することも
ガス手数料はイーサリアムの需要によって変動します。それはガスの仕組みが入札制になっていることに原因があります。
ETHの需要が増え、イーサリアムの取引量が多くなると速く処理をしてほしいと求める人も増え、送金速度を高めるために高額の手数料が提示されやすくなるのです。
過去にもこの問題によってイーサリアムの送金遅延トラブルが発生しました。
2018年6月、イーサリアムのガス価格が急に100Gweiまで高騰します。この時期、イーサリアムのネットワークでは「IFishYunYu」というトークンが1時間辺り50ETHというガス設定で、24時間以上にわたってFCoinという取引所へ送金されていました。
この送金によってイーサリアムの全取引量の内、約20%を「IFishYunYu」の送金が占め、一時的にETHの需要増による送金遅延が発生してしまいます。イーサリアムのネットワークが狙われた理由は、敵対するEOS(イオス)という仮想通貨にありました。
EOSとはイーサリアムと同じくスマートコントラクトのシステムを持つ仮想通貨で、イーサリアムの送金遅延と同じ時期にメインネットへの移行を発表しました。EOSはERC20によって開発されたトークンですが、イーサリアムと同様にネットワーク内でトークンやアプリを開発できます。
このような特徴が似通った仮想通貨は、本来なら市場に2つも必要はありません。そのため、アプリ開発プラットフォームの市場を奪い合うかのごとく、イーサリアムとEOSは度々敵対するような動きを見せています。
今回の送金遅延問題も、EOSコミュニティが「IFishYunYu」のトークンを利用してイーサリアムのガスを不当に高騰させたとされています。その後、ガス価格は100Gwei近くまで上昇したのち徐々に正常価格まで戻りました。
上記のようにERC20によって様々なトークンが開発された結果、ETHを利用する環境が増え、ETHの需要拡大に繋がっています。中には悪意や何らかの意図をもってガス価格を無理に上昇させる例もあるため、今後はいつ手数料が跳ね上がってもおかしくありません。
ただ、ガスの高騰は一時でおさまるケースが多いため、価格が下落するまで待つことが現在唯一の対処法と言えるでしょう。張り合ってガス価格を高くしてまで送金してしまうと、取引時の利益や送金額にも大きく響きます。
3-2. 送金後はガス手数料の確認を
MyEtherWalletやMetamaskからETHを送金したときは、実際に送金が実行されているかしっかりと確認しておきましょう。Etherscan(イーサスキャン)というソフトを使えば、ETHの送金情報をリアルタイムに確認できます。
確認方法はEtherscanにアクセスし、トップページ右上に「ETH送金アドレス」を入力します。
すると、上の画面のように設定したガスリミットなどが表示されます。「Gas Used By Txn」は実際に使われたガス量です。その数値とガス価格を掛けあわせた、「Actual Tx Cost/Fee」がガス(送金手数料)となります。
まとめ
イーサリアムのガス(送金手数料)は、ガスリミットとガス価格を乗算して求められます。ガスの適正価格はイーサリアム通貨の需要によって変動し、ETHの取引が多くなるほど上昇していきます。
基本的にガスリミットは21,000、ガス価格は20Gweiに設定しておくと、通常期のETH送金はうまくいくことが多いです。
しかし、ときには思わぬ送金遅延が発生することもあり、過去にはガス価格が急騰するトラブルも起こりました。そんなときは決して慌てることなく、冷静にガス価格が下がるまで待ちましょう。
また、Etherscanを使って送金時に実際どれだけ手数料がかかったのか、しっかりと把握しておくことも大切です。
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