ハッシュレートとは? 採掘速度の事だけど、投資家も見ておくべき指標

ハッシュレートとは

仮想通貨のニュースや記事の中で、ときどき出てくる「ハッシュレート」という言葉をご存じでしょうか?

ハッシュレートというのは、「マイニングのための計算能力=採掘速度」を表す数値です。

しかしハッシュレートという言葉が使われるとき、「仮想通貨全体の計算能力」という意味で使われることもあるのです。

「ハッシュレート」がよく分からない理由は、これら2つの意味が混同しているせいなのかもしれません。

そこで今回はハッシュレートについて整理して解説します。

1. ハッシュレートとは何か?

まずは、2つのハッシュレートの意味を説明しましょう。

2つのハッシュレートの存在を知り、はっきりと区別することで、今後ハッシュレートについて見聞きするときに混乱しにくくなります。

1-1. ハッシュレートには2種類ある

 

ハッシュレートの2つの意味

■「ハッシュレート」とは?

マイニングの採掘速度 マイナーがマイニングマシンでどれくらい儲けられるかを計算するときの基準になる値
仮想通貨全体のハッシュレートの合計 仮想通貨全体でどれくらいのパワーをマイニング(取引の正否判断)に費やしているのかを表す値で、安全性の基準になる値

「ハッシュレート」という言葉には、マイニングの採掘速度を表す本来の意味を示している場合と、その合計を示す場合の2種類があります。

1つめのハッシュレートである「マイニングの採掘速度」は、マイニングマシンの能力を示している数値です。これはマイニングの成功率に関わる値で、多くのマイナーがこの値を元に損益計算を行っています。

この場合のハッシュレートは、マイナーが「どれくらい儲けられるか」を計算するときに利用する値です。

そして、2つめの「ハッシュレート」は、仮想通貨全体のハッシュレートの合計値で、仮想通貨全体に対しマイナーがどれくらいのパワーをマイニングに費やしているのかを表している値です。

マイニングは安全性の根幹なので、そこに費やしているパワーの大きさを確認することで、安全性を計れます。そのため、後者のハッシュレートは、投資可否の判断基準の1つにする必要がある値と言えるでしょう。

1-2. 採掘速度を表す「ハッシュレート」はマイニングの成否に関わる

マイニングスピードとしてのハッシュレート

まず「マイニングの採掘速度」について詳しく解説していきましょう

ハッシュレートというのは、マイニングマシンがProof of Work(PoW)でマイニングするときに行うハッシュ計算の計算速度のことです。

ハッシュ計算を1秒間に何回行えるかを表す単位は「hash/s(ハッシュ)」です。マイニングマシンは1秒間に数億や数百億といったハッシュ計算をこなしますので、一般的に「Mhash/s(メガハッシュ)」や「Thash/s(テラハッシュ)」といった単位が使われます。

PoWのマイニングは、「ハッシュ計算を繰り返して、最初に正解した人が報酬を得る」というのがルールですので、このハッシュ計算の速度が速ければ、それだけマイニングで有利になるわけです。

例えれば、駄菓子屋のくじを引いているようなものです。当たりが必ず1つ入っているくじを、大勢で一斉に引いているシーンを想像しましょう。

マイニングスピードとしてのハッシュレート2

全員に、当たりが1つだけ入ったくじ引きの箱が配られており、それぞれが自分の箱の中から1つずつくじを引いています。

ただし、人によって1つのくじを引くためにかかる時間(くじを引く速度)が違っているのです。そうなると、早くたくさん引く人のほうが、早く当たりくじを引く可能性が高くなります。

マイニングスピードとしてのハッシュレート3

ハッシュレートは、この「くじを引く早さ」だと考えれば良いでしょう。

ハッシュレートは決まっている?

ハッシュレートはマイニングマシンの性能によって決まっており、またこの値から得られるマイニング報酬の予測も可能です。そのため、マイニングマシンの価格と報酬、仮想通貨の価格から、マイナーは損益分岐点を計算することができ、そこでマイニングに参加するかどうかを検討するわけです。

ハッシュレートとPoW
PoWのマイニングでは「ハッシュ計算」を素早く実施する必要があるため、「ハッシュレート」はとても重要な値です。しかし、Proof of Stake(PoS)などの他の方法では、マイニングも他の方法を採りますので、ハッシュレートにはそれほど注目しません。

1-3. その仮想通貨の合計値である「ハッシュレート」は、安全性を計る基準の1つ

 

全体の合計値としてのハッシュレート

もう1つのハッシュレートは、マイニングマシンのハッシュレートの合計です。

くじ引きの例で言うと、参加者が一定の時間に買うことができるくじの合計数になります。

全体の合計値としてのハッシュレート2

マイナーの数が多ければ、それだけ全体のハッシュレートは上がりますので、逆にハッシュレートが高ければ、マイナーの数も多いと考えられます。

マイナーは、誰かがマイニングに成功した結果(取引)の正当性を確認する役割も担っていますので、そのマイナーが多ければ、それだけマイニング結果の信頼性が増すのです。

そのため「ハッシュレートが高い=取引の信頼性が高い」と考えられますので、取引の安全性が増すことになるのです。

ハッシュレートに偏りがあるときは安全と言えない

注意しなければいけないのは、ハッシュレートの合計がいくら高くても、特定のマイナーのハッシュレートが飛び抜けて高い場合です。もし、その分布に偏りがあると、特定のマイナーがマイニングに成功し、上記の確認機構も働きません。

全体の合計値としてのハッシュレート3

仮想通貨への投資を行うにあたっては、ハッシュレートを重視しつつ、その内訳(分布)も考慮しなければいけません。

2. 安全性と信頼度の指標としてのハッシュレート

マイニングマシンのハッシュレートを合計した「仮想通貨全体のハッシュレート」は、安全性と信頼性の指標になります。そのしくみについて、もう少し詳しく解説しましょう。

2-1. ハッシュレートが高いと安全性が高まる理由は?

仮想通貨全体のハッシュレートが高いと、仮想通貨の安全性が高まるのは、なぜでしょうか?

その理由は、PoWの2つの決まりにあります。

PoWの2つの決まり

  • 任意の取引を成立させるには、マイニングを成功させなければならない
  • マイニングを成功させるには高いハッシュレートが必要

もちろん、正しい取引であれば誰かにマイニングしてもらえば良いだけですので、この決まりはまったく問題になりません。

ハッシュレートと安全性

しかし不正な取引を行うマイナーは、確実に勝ってマイニングに成功する必要があり、そのためには、他のマイナーすべてに勝てるハッシュレートが必要なのです。不正な取引は自分が成立させなければ誰も協力してくれません。

高いハッシュレートを手に入れるには、電気代などのコストが必要です。「仮想通貨全体のハッシュレートが高い=ライバルのハッシュレートが高い」ということですので、仮想通貨全体のハッシュレートが高ければ、不正な取引にはそれだけコストがかかるということになります。

結果、仮想通貨全体のハッシュレートが十分に高ければ、不正で得られる報酬よりもコストのほうがかかることになり、誰も不正を行わなくなります。

この論理から、「仮想通貨全体のハッシュレートが高ければ、安全性が高い」ということになるわけです。

くじに当たった人は、報酬をもらえると同時に、あたった景品を誰かと売買したことを公式な記録に残す権利があるのです。そのため、仮にライバルの誰よりも先にくじを当てれば、不正な取引(例えば、景品を売ったことにして入金処理だけする、など)であっても、公式な記録に残すことができます。

ハッシュレートと安全性2

しかし、くじを引くには1回いくらというくじ代がかかります。

ライバルが多ければ、その分、早く多くくじを引かなければ勝てませんので、ライバルが多ければそれだけくじ代の合計が高くなります。

不正な取引を記録するには、確実に勝つ必要がありますので、くじ代の金額は相当なものになるでしょう。

このとき、もし不正な取引で得られる利益(景品を売ったことにする代金)よりも、くじ代のほうが高くて損をするだけになれば、誰も不正を行わなくなるでしょう。

「ライバルの数が多い=仮想通貨全体のハッシュレートが高い」ということですので、仮想通貨全体のハッシュレートが高いことが、不正を防いで安全性を保証することになるのです。

2-2. 半分以上のハッシュレートがあれば、不正ができる(51%攻撃)

51%アタック

他の誰よりも高いハッシュレートを得るということは、仮想通貨全体の半分以上(51%以上)のハッシュレートを得ることで、不正な取引をブロックチェーンに取り込むことも可能になります。

この問題はPoWのしくみでは理論上避けられないもので、「51%攻撃」と呼ばれており、ビットコインが現れた当初から懸念されていました。しかし前述の通り、人の行動心理から「十分に高いハッシュレートがあれば、ほぼ発生しない」と考えられていたのです。

ところが、実際に51%攻撃を利用した事件は起きています。

以下に紹介する仮想通貨に共通するのは、仮想通貨全体のハッシュレートがそれほど高くなかったことです。それに加えて、事件当時に仮想通貨の価格が高騰していたため、「不正を行うコスト < 不正で得られる利益」という状況が簡単に作り出せたということでしょう。

2-2-1. ビットコインゴールド

2107年にビットコインからハードフォークして誕生した仮想通貨ですが、2018年5月に51%攻撃を受けました。当時のレートで20億円近くが流出したともいわれています。

bitcoingold.org|Double Spend Attacks on Exchanges

2-2-2. Verge

匿名性の高さを売りとして2014年に誕生したVeargeは、2018年4月と5月に、2度にわたって51%攻撃を受けました。合計で2億円相当が流出していると報じているメディアもあります。

ビットコインの情報が集まる大型掲示板でも話題に上がりました。

BitcoinForum|Network Attack on XVG / VERGE

2-2-3. イーサリアムクラシック

イーサリアムから分岐したイーサリアムクラシックでも、2019年1月に51%攻撃を受け、1億2,000万円程度の被害が出ています。

COINTELEGRAPH|仮想通貨イーサリアムクラシックの損失額は1億円超=コインベース発表

3. ハッシュレートから読み取れるのは?

ここからは、仮想通貨全体のハッシュレートから読み取れる情報を解説していきましょう。

3-1. ハッシュレートから価格を予測するのは難しい

ハッシュレートから価格動向を予測するのは、残念ながら難しいでしょう。

具体的に、ETHのチャートで確認してみましょう。

イーサリアムのハッシュレート推移
etherscan.ioのデータより筆者作成

2017年前半程度まではある程度相関がありました。その後、ETHの大きな価格変動もあり、ハッシュレートと価格の相関がほとんどなくなっています。

イーサリアムのハッシュレート推移
etherscan.ioのデータより筆者作成

2018年以降を確認してみると、2018年下半期は、ある程度の相関があるように見えますが、価格が下がった後に少し遅れてハッシュレートが下がっています。価格からハッシュレートは読めますが、その逆を予測するというのは、厳しいと思われます。

3-2. ハッシュレートの上下でマイナーのトレンドが読める

前述の通り、価格が上下すると、それに追随するようにハッシュレートも上下しているところがあります。

価格が上がれば、マイナーの利益が多くなるためマイナーが増え、逆に価格が下がれば利益が下がって、離脱するマイナーが出てくるためです。

そこから、ハッシュレートの動向を見ることで、マイナーがイーサリアムのマイニングへ参加する(離脱する)意欲が見えてくると言えます。

もし、ハッシュレートが下がり続ける状態であれば、利益が少なくなるためマイナーの離脱率が上がるでしょう。そうなると、離脱時に利益確定するマイナーが出てきて、価格が下がってくる可能性が高まるわけです。逆にハッシュレートが上がる状態が続けば、マイナーが増加してイーサリアムへの信頼度が上がり、取引が活発になって価格上昇しやすい状況になるのです。

ディフィカルティが変われば、マイナーの動きが変わる

ディフィカルティは、マイニングの難易度を決める値で、難易度そのものと考えて良いでしょう。ハッシュレートが高くなれば上がり、低ければ下がるようになっており、マイニングに一定の時間とコストがかかるようにしているのです。そのためマイナーが損益計算するとき、このディフィカルティも重要な要因になります。例えばディフィカルティが上がると、同じマイニングマシンでも得られる報酬が減るので、個人などの小さなマイナーは利益が得られなくなり離脱する可能性が高くなります。

4. トランザクション数、ブロックサイズ、ユニークアドレス数なら、取引状況や人気が見える!

仮想通貨にはハッシュレート以外にもいくつかのデータがあります。それらのデータと、そこから何が分かるのかを紹介しましょう。

もしかしたら、これらを組み合わせることで、投資判断の材料にできるかもしれません。

なお、ここで紹介している値のチャートは、Etherscan.ioBLOCKCHAINで確認できます。

4-1. トランザクション数からは取引の規模や人気が分かる

トランザクション数とは、取引の数のことです。トランザクション数が多いということは、多くの人が取引する人気のある仮想通貨だということが考えられます。

イーサリアムのトランザクション数推移
参照:etherscan.io(Transaction Chart)

株で言うところの「出来高」に似ているかもしれません。

株の世界では、「出来高は株価に先行する」と言われています。しかし株と違ってボラティリティの高い仮想通貨の場合は、突然大きく反発する可能性が高く、未成立の取引もトランザクション数に含まれるため安易な判断は禁物です。

4-2. ブロックサイズを見れば、決済速度やマイナーの動向を推測できる

ブロックサイズは、マイニングで生成されるブロックのサイズの平均値です。

ブロックサイズはブロックに含まれるトランザクション数に影響されますので、決済を要求されている取引の数が多ければ、ブロックサイズが大きくなります。

そのため「ブロックサイズが大きい=取引が活発」と言えますが、ブロックサイズが最大サイズに近いということは、ブロックに取り込めない(決済が保留される)トランザクションが増えるため、決済速度が遅くなる懸念があります。

例えば、イーサリアムのブロックサイズは、次のように推移しています。

イーサリアムのブロックサイズ
参照:etherscan.io(Average Block Size Chart)

2017年末から2018年初頭にピークがありますので、ここでイーサリアムの取引が活発になったことがうかがえます。

決済速度が遅くなると、決済手数料が上がってくる傾向もありますので、そうなればマイナーが増える可能性もあるでしょう。

ただし、決済速度が落ちて手数料が上がると、その仮想通貨の人気は下がりますので、その状態が続けば売られる可能性が大きくなるかもしれません。

4-3. ユニークアドレス数で関心度が見えてくる

ユニークアドレス数は、取得されたアドレスの数の推移です。

実際に取引に結び付かないこともありますが、ユニークアドレスが急激に増えているということは、その仮想通貨に対する関心度が高くなっているということです。そこから、その後に価格変動が起きる可能性をうかがえます。

例えば、イーサリアムのユニークアドレス数は、次のように推移しています。

イーサリアムウォレットのアドレス数推移
参照:etherscan.io(Unique Address Growth Chart)

2017年の年末に、急激に増えています。この時期は、仮想通貨ブームと言えるほどの状況で価格が暴騰していた時期とも重なります。

まとめ

ハッシュレートは、マイナーやマイニングマシンの採掘速度のことです。

それに加えて、仮想通貨全体の採掘速度の合計を指す場合もあり、そのハッシュレートの高さが、仮想通貨の安全性と信頼性を表しています。そのため、仮想通貨を選ぶときは、必ず確認しなければいけない値なのです。

また、他にもさまざまなデータが公開されていますので、それらにも目を通してから、投資判断することをおすすめします。

  • ハッシュレートは、マイニングマシンの計算能力だが、「個々の採掘速度」と、「仮想通貨全体の能力」の2種類ある
  • ハッシュレートが高ければ、安全性が保証される
  • ハッシュレートの推移と価格に相関は見られない
  • トランザクション数の推移は出来高に似ているが、未成立の取引も含まれる
  • ブロックサイズの推移から、決済速度の推移が見える