ICO(新規仮想通貨公開)の仕組みと投資先としての魅力とは

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257億円」みなさんはこれが何の数字かお判りでしょうか?

これは2017年にFilecoinという単体のプロジェクトが、ICO(アイシーオー、Initial Coin Offering、新規仮想通貨公開)と呼ばれる仮想通貨を使った新しい資金調達方法で集めた金額(正確にはUS$257Mil)です。ちょっと驚きですね。

例えば、日本のベンチャー企業が最初に目指す東証マザーズ市場では、IPO(アイピーオー、Initial Public Offering、新規株式公開)による資金調達額は、10億円未満が多いことからしても大変な金額であることが分かります。

一方でICOは、詐欺にあいやすいから気をつけろとか、現実に各国政府の規制が入るなどネガティブなイメージも付いてまわっていますよね。実際のところはどうなのでしょうか?

そこで今日は、ICOの仕組みを基本からわかりやすく説明して、皆さんにICOを正しく理解してもらうお手伝いをしたいと思います。

1.ICOとはベンチャー企業が新しい仮想通貨を発行して資金調達する方法

1-1.ICOの仕組み

ICOとは、Initial Coin Offeringの略語で、ベンチャー企業やプロジェクトがこれからサービスで使用する新しい仮想通貨と引き換えに、投資家から仮想通貨や現金によって資金調達を行うことです。

ICO
ICOによる資金調達

ICOで資金を得た企業は、例えばその資金で公開した新仮想通貨を使用するサービスを立ち上げ、そのサービスが広まって多くのユーザーに使われるようになると、その新仮想通貨を取引所に上場させます。すると多くの人に売買され新仮想通貨自体の価値が上がります。

その時に最初のICOに参加した投資家がその新仮想通貨を持ち続けていたら、価値が上がっていて売却することで利益を得ることができるのです。これが一番シンプルなICOの成功パターンです。

ICOの全体像
ICOの全体像

このようにICOは、資金を調達したい企業側が計画し、新仮想通貨の将来的な価値の増大を期待する投資家が参加して行います。基本的な仕組みはIPOと同じだと考えてもいいでしょう。IPOは株を公開して資金を調達しますが、ICOは仮想通貨を公開して資金を調達します。

1-2.ICOIPO(新規株式公開)の違い

では、企業がIPOでは無く、ICOを選ぶ理由はどこにあるのでしょうか。公開するものが仮想通貨と株であること以外に違いはあるのでしょうか。

1-2-1.IPO(新規株式公開)による資金調達

日本では2000年頃からインターネットベンチャーのIPOが相次ぎました。一夜にして億万長者になる経営者も現れました。しかし、その裏でIPO後に粉飾決済や経営者の不祥事などが発覚し、株価が急落したあげく、上場廃止になった企業もありました。

しかしながら現在までに株式公開についての法的整備や不正に対しての監視体制が整い、IPOをする企業は、証券取引所、主幹事証券会社、監査法人などに厳しく審査され、IPO後も継続して経営内容にチェックが入れられています。

つまり証券取引所で株式公開をするためには、主幹事証券会社や監査法人などと契約を結ぶ必要があります。もちろん莫大なコストが発生します。さらに上場準備の人材を確保し、内部統制の体制も整える必要があり、そこにもコストが発生します。決算作業をしたり、分厚い目論見書を作成したりするのもコストです。

そのかわり、IPOではIPOした国の法定通貨で資金調達ができます。法定通貨であれば、資金調達後の用途も事前に詳細に計画しておくことが可能です。これは仮想通貨にないメリットになりえます。

一方で新規株式公開時に投資をする投資家からすれば、それだけの時間とコストをかけた準備をして、厳しいチェックをクリアした上場企業に投資することは、信頼性の高い投資だと言うこともできるでしょう。投資家保護という観点からすれば非常にリスクの低い投資を行うことができるようになったと言えます。

これらのことからIPOは、既に公に認められる規模での事業の実績がある企業が、さらなる発展のために行う資金調達に向いているといえます。

1-2-2.ICO(新規仮想通貨公開)による資金調達

かたやICOは、今解説したIPOのある意味対極にある資金調達方法だと言えます。

まず大きな違いというのは、ICOにはこれまでの実績が無くても行えます。これから事業を始めるための資金を調達するという、ベンチャー企業の中でもスタートアップ企業に向いている資金調達方法です。

というのも、ICOには法的整備が行われていないためチェックを入れる審査・監視機関がありません。自分で直接投資家から資金調達するので主幹事証券会社が不要です。またその決算をチェックして正しいことを保証する監査法人も不要です。そのため、すべてが自己責任である代りにコストが低く抑えられます。

また資金調達は思い立ったらすぐに行うことができます。IPOは審査の基準や規定があり、通常どんなに急いでも2年はかかります。何回も経営状態と決算をチェックされるのです。ところがICOではそのような数字ですら自己申告ということになります。なんせチェックする人がいないのですから・・・

このようにICOIPOにはいろいろな違いがあることを知っておきましょう。

1-3.ICOとクラウドファンディングの違い

近年、クラウドファンディングという形で資金を集めるプロジェクトが多くなりました。クラウドファンディングにもいろいろあって、単に寄付を募るものから、投資対象になり得るものまで幅広く行われています。

クラウドファンディングとは、インターネット上で不特定多数の人から資金調達を行う仕組みのことを指します。例えば、難病の治療費を集めるものや、新しい商品の開発費用を集めて将来的に出資者がその商品を使う権利を与えるものなど様々です。

クラウドファンディングの大きな特徴は、一般的に資金調達は法定通貨(日本であれば円)で行われるという点です。円で調達しようとすると必然的に投資家はほぼ国内に限られてしまいます。特に日本のクラウドファンディングは、説明も日本語のみでプロジェクトが小さく小さくまとまっている気がしてなりません。もったいない…

一方のICOの資金調達もクラウドファンディングと共通点は多いのですが、一般的には仮想通貨で調達します。実際には信頼性の高いビットコインやイーサリアムなどが多くなっています。投資家はビットコインやイーサリアムを差し出して、新仮想通貨を受け取るのです。仮想通貨であれば国内に限ることではありません。世界中から資金調達することだって可能なのです!

2.ICOのメリット・デメリット

2-1.ベンチャー企業にとってのICOのメリット・デメリット

2-1-1.メリット

ベンチャー企業すなわち事業者の一番のメリットは「コスト」です。先ほど見た通り、主幹事証券会社や監査法人のコスト、資金調達のために採用する人材コストなど様々なコストを抑えることができます。

また調達までのスピードも魅力です。時間の掛かる手続きがありませんし、間に立つ人もいません。直接的に投資家から資金調達が可能です。

そしてICOでは海外投資家からの資金提供も見込めます。投資家が出すビットコインやイーサリアムは世界共通ですから、遠く離れた海外から投資を受けることは驚きではありません。

 またスピードも魅力です。ICOはすべてインターネットを介して行われるため、無駄がありません。この記事の冒頭で紹介したFilecoinは、大手投資家を対象にしたICOという特殊性はあったのですが、なんと約1時間で200億円もの調達に成功していました。ちょっと想像できないスピード感ですね。

最後に実は経営者にとって「経営に口出しされない」というメリットがあることを確認しておきましょう。IPOの場合は株を渡しますが、株は議決権の単位でもあります。つまり投資家に経営に口出しする権利を与えているのです。

しかしICOでは、投資家に与えるものはあくまで仮想通貨なので、経営と資金調達を切り離して考えることができるメリットがあります。

2-1-2.デメリット

ではICOのデメリットは何なのでしょうか?

実は最大のデメリットは「資金が調達できないこと」なのです。どういうこと?と思われる方が多いと思いますが、ICOはハードルが低いために多くの企業がトライしてきます。しかも国内外を問わずです。ずらーりとそのような企業が並び、一つ一つ投資家に検討された時に、あなたの事業は投資家の間で人気がでるでしょうか?

そうなのです。コストが低い、面倒なチェック機関も必要ないという環境のため、競争が激しいのです。良く練られた計画であっても、投資家の目に魅力的なプロジェクトに映らなければ資金は集まらないのです。

また最近では金融庁から「ICOInitial Coin Offering)について」という注意喚起がなされました。いよいよ日本でも本格的な規制が始まるかもしれません。海外では、中国や韓国はICOが規制されていて、法制度が整備されて投資家が保護されるタイミングを待っているようです。裏の理由としては、マネーロンダリングにICOが使われないようにするためとも言われています。

日本でもいつICO禁止といった規制が行われるか分かりません。その点はリスクとして押さえておきましょう。素直にIPO準備しておけば良かったのに・・・とならないために。

2-2.投資家にとってのICOのメリット・デメリット

2-2-1.メリット

ICOは投資家のほうでもコストのメリットがあります。仲介する証券会社がいませんので、仮想通貨を手に入れる際に彼らに払う手数料が抑えることができます。

また仮想通貨で投資することを考えると、全世界のICO案件が対象になりますので、グローバルな投資案件に参加することが可能になります。また投資金額も億単位の高額投資から、数千円の少額投資まで自由に設定することができます。

一方のIPOでは公募価格が決まっていますので、その単位でしか応募できません。また応募しても証券会社ごとの抽選になりますので、なかなか当たることがないというのが現実問題としてあります。

また海外でIPOに参加するには、そのIPOに参加している海外の証券会社に口座を持ち、外貨を預けていなければなりません。ICOでは仮想通貨さえウォレットに入っていれば参加することができますので、比較にならないほどハードルが低くなっています。

最後に投資家がICOにこぞって参加する最大の理由があります。

それは「売却益」です。

仮想通貨は一度人気が出ると爆発的に価値が上昇します。というのも仮想通貨の発行量と発行ペースは決まっているため、人気が出ると少ないパイの奪い合いが始まるからです。2017年のビットコインの高騰も少ないパイ(他の仮想通貨に比べると圧倒的に大きいですが)の奪い合いが引き起こした現象とも言われています。

そのようなタイミングで仮想通貨を売却すれば、投資金額の何倍、何千倍、何万倍の売却益が得られる可能性があります。この魅力が投資家たちをICOに引き付けているのです。

2-2-2.デメリット

さて投資家にとってICOにはデメリットはあるのでしょうか。

実はICO投資には参加する前に細心の注意を払う必要があります。というのも環境が整っていないために、ベンチャー企業はホワイトペーパーというICOの詳細を書いた文書を公開して資金調達するのですが、その中身が正確であるかどうかはその企業次第というところがあるからです。

ICOに記載する内容も法的な縛りはありませんので、企業が自由に作成します。そのため100ページものホワイトペーパーがあっても肝心の中身が空っぽであったり、ひどい場合には嘘で固められている、というケースもあります。

そうです。最新の注意を払って検討しないと、詐欺に合う可能性があるのです。そうならないようにホワイトペーパーを熟読して、内容があって将来性のあるICOであるかどうかしっかり判断する必要があります。

また、ICOでは投資の対価は仮想通貨ですから、経営に口出しする権利は与えられていません。IPOでは、株を持っていれば議決権が与えられますから、経営陣の判断に自分の意思を表明する手段となりますが、ICOは仮想通貨を使う、売却する権利しか持っていません。

ですから一度投資してしまったら、あとは経営陣を信頼して見守るしかないということを理解しておきましょう。

3.ICO絡みの事件と様々な規制

2018年1月にFacebookICOなどの広告を禁止すると発表しました。

参照外部リンク:「新しい広告ポリシー: 金融商品・サービス関連広告の健全性と安全のための取組」Facebook

この中で、Facebookは「残念ながら、・・・ICO、仮想通貨について、誠実とはいえない宣伝をしている企業が多数あるのが現状です。」と指摘しています。

実際にはどのような事件が起きているのか見ていくことにしましょう。

3-1.事件その1-蒸発

2017年11月、Confidoというスタートアップ企業がICOを行い、イーサリアムを使って374千ドル(約3,740万円)を集めて、直後に消えてしまうという事件が起きました。

参照外部リンク:An Ethereum Startup Just Vanished After People Invested $374KMOTHERBOARD

このConfidoは、ブロックチェーンを使って、支払いと商品出荷のトラッキングを行うアプリを開発するとしていたのですが、11/68までにトークンを発行してイーサリアムを調達しました。

しかし、その週末にConfidoSNSやウェブサイトを閉鎖、突然姿をくらましてしまったのです。当然彼らの発行したトークンは価値を持たず、投資家はただただ投資を悔やむのみ・・・調達を行ったプラットフォーム「TokenLot」も、自分たちも騙されたとConfidoを非難していました。現在も犯人の行方は分かっていません。

3-2.事件その2-ネズミ講?

またポンジスキームというネズミ講のような詐欺に非常に近いビジネスモデルを展開しているBitconnectOnecoinという仮想通貨もあります。Bitconnectは仮想通貨を購入して預けておくだけで高利が得られるとしていましたが、詐欺を疑われるようになり閉鎖。2018年に入って新たにBitconnectXを立ち上げたところです。またOnecoinも欧州でサーバ没収や強制捜査を受けるなど詐欺と認定された過去を持ちますが、まだしつこくサービスを継続しています。

ポンジスキームとは・・・1910~1920年代にかけてアメリカで活動したビジネスマン、チャールズ・ポンジの名に由来するネズミ講に近い詐欺的行為の呼び名。高額配当をうたって大勢に出資を募り、後から出資した人のお金は、先に出資した人への配当に回すということを繰り返す自転車操業的な詐欺ビジネスを指す。

さらに事業者が開発を始めて、新仮想通貨を取引所に上場させた場合でも、それらは全て詐欺では無いとも言い切れません。開発は実際に行われているか分かりませんし、その上場仮想通貨はそのまま放置される可能性も無きにしも非ずだからです。

3-3.ICOへの規制

仮想通貨の世界にこのような企業が入り込んでいても分かりにくいため、既に規制が行われている国もあります。

最初に大きくニュースになったのは中国です。20179月にICOによる資金調達は全面禁止となりました。ICOの多くは金融詐欺、ネズミ講であると厳しく非難しています。

またアメリカ証券取引委員会は、ICOに対して警告を発していて、実際にICOの差し止めやICO実行者の逮捕という事件も起きています。

参照外部リンク:Statement on Cryptocurrencies and Initial Coin Offerings」米証券取引委員会

そして2-1-2.でも触れたように、我が国でも金融庁が20179月に「ICOInitial Coin Offering)について」という注意喚起文書を出しています。今後さらなる規制が行われる可能性があります。

しかし、規制は全てをネガティブに捉える必要はありません。実際に規制が強まり官公庁の監視が行われるようになれば、投資家が詐欺に合う可能性が格段に低くなります。ただ規制が強すぎれば誰も利用しなくなりますので、利便性と投資家保護のバランスが保たれるようになるといいですね。

4.投資先としてのICO

4-1.ICO案件の探し方

ICO案件を探すためには、主に海外のサイトをチェックしていく必要があります。しかしながらICO案件は玉石混合ですから、ただ日付順のリストを眺めているだけでは、何を選べば良いのか基準になるものがありません。

その中で独自のレーティングをしているサイトがありますのでご紹介します。いずれも英語のサイトですが、参考になる情報を多く発信しつづけています。

ICO bench

ICOの案件を一覧にするだけでなく、専門家によるレーティングが特徴です。ここである程度評価の高い案件に絞って検討することで、時間を節約することができます。説明記事も丁寧で、ホワイトペーパーにも直リンクが貼ってあるなど非常に有益なサイトです。

ICObench

 

ICORATING

こちらも専門家による投資判断が掲載されているサイトです。①のサイトのような詳細記事はありませんが、投資判断の元になるデータが簡潔に表示されている点が特徴です。

ICORATING

 

これらのサイトでレーティングの高いものを中心に探すことで、良い案件に出会えるかもしれませんね!

4-2.詐欺にあわないために

先ほども見てきた通り、ICOには詐欺まがいのものが含まれている可能性は否定できません。ですから詐欺被害に合う確率はゼロではないということを常に意識しておくことがとても重要です。

そこで最低限できることをやりましょう。まずは今紹介したレーティングサイトを複数見て、いずれのサイトでも評価の高いものを中心に選んでいきましょう。

ある程度案件に目星がついたら、その事業者のサイトを訪問し、ホワイトペーパーを熟読しましょう。また事業者の中心メンバーの名前をネット検索し、その人物のバックグラウンドを知っておくことも重要です。これはIPOの際に主幹事証券会社が実際にやっていることで、この作業から以外と重要な情報(別の事業を立ち上げて成功した経験がある等)を得ることがあります。

そして、その事業者のコミュニティーを片っ端からチェックして、他のICO参加者がどのような見解を持っているのか把握しておきましょう。

このような入念な準備をして、実際に投資するICOを選ぶようにしましょう。全ては自己責任ですから無謀な投資は絶対に行わないように気を付けて下さい!