
仮想通貨やブロックチェーンの話題になると出てくる「オフチェーン」とは何でしょうか?
オフチェーンは、ブロックチェーンの外で取引することを指します。ブロックチェーンの基本的な構造を変えることなく種々の問題を改善できるため、今後のブロックチェーンには欠かせないものの1つなのです。
目次
1. オフチェーンはブロックチェーンの外で取引する
オフチェーンは、「ブロックチェーンの外側で取引を行うこと」です。
オフチェーンはブロックチェーンの外側で行いますのでこの記録が行われず、そのぶん時間と手数料を減らすことができるのです。
1-1. オフチェーンとオンチェーン
ブロックチェーンの外側で取引を行う「オフチェーン」に対して、ブロックチェーン上での取引のことを「オンチェーン」と呼びます。
オンチェーンの取引は、承認者により取引を承認されブロックチェーンに記録することで取引が完了となります。また、承認のたびにマイナーへ支払う手数料が発生します。
承認が行われるには一定の時間と手数料がかかります。
オフチェーン取引ではいくつかの取引をひとまとめにし、その直前と直後の状態だけをメインチェーンに記録します。途中の取引はオフチェーンで行うのです。
こうすることで、オフチェーン取引の回数には関係なく、メインチェーン上で行われるオンチェーン取引の記録回数は2度だけになります。
記録回数が減れば、それだけ承認の回数が少なくなりますので、コストを大きく下げることができるのです。
1-2. オフチェーンのメリット
オフチェーンで取引を行うことのメリットは大きく、ブロックチェーンが潜在的に持っている問題を回避することができます。
手数料
オフチェーンでの取引は、理屈上マイナーへ支払う手数料が極めて安価に処理することができます。
メインチェーンに記録する最初と最後の2回分の手数料は必要になりますが、取引ごとに手数料が必要になるオンチェーン取引に比べて、圧倒的に手数料が安くなるでしょう。
取引速度
オンチェーン取引では、取引の際必ず承認が行われます。
オフチェーンはブロックチェーンの管理外ですのでその決まりに従う必要もなく、きちんと管理できる環境であれば承認なしで取引を決済しても良いわけです。
そのため、同じ数の取引をメインチェーンで行うのに比べて、とても高速な取引速度になります。
スケーラビリティ問題対策
スケーラビリティ問題というのは、取引要求に対して処理速度が間に合わず、決済遅延や手数料の高騰が起こる問題のことです。
オフチェーン取引を活用することで処理できる取引数が増え、取引遅延を防ぐことができますし、取引遅延が起きなければ手数料が高騰することもありません。
1-3. オフチェーンの問題点
メリットがあればデメリットもあります。
じつは、オフチェーンはブロックチェーンの利点をなくしてしまう危険性があるのです。
セキュリティの脆弱さ
オフチェーンでは取引の承認が行われませんので、ブロックチェーンが持っている強固なセキュリティの恩恵を受けられません。
オフチェーンでは取引の履歴の管理や改ざんやハッキングなどの対策を独自に構築しなければならず、ブロックチェーンに比べて脆弱な場合が少なくないのです。
中央集権化
ブロックチェーンでは、取引の承認や記録をユーザーが協力して行うことで、非中央集権を実現しています。
オフチェーンの場合、運用企業などが取引の承認を行っていることが多く、運用主に権限が集中して中央集権化してしまっているのです。
取引履歴が確認できない
オフチェーンでの取引結果の記録や公開は任意ですので、すべての取引履歴が公開されているブロックチェーンと違って、オフチェーン取引の内容や正しさを確認することは難しくなります。
2. サイドチェーンとオフチェーンの違い
オフチェーンとよく混同されている言葉に、サイドチェーンという言葉がありますが、まったく違う意味の言葉ですので間違えないようにしなければいけません。
サイドチェーンは「ベースとなるブロックチェーンと連動して動く新たなチェーンのこと」で、オフチェーンは「ブロックチェーンの外側で取引を行うこと」です。
例えば、「サイドチェーンのオフチェーン取引」という使い方や「オフチェーンをサイドチェーンで実現する」という使い方もできますのでうまく使っていきましょう。
多くてややこしい〇〇チェーン
仮想通貨の用語には他にも○○チェーンという言葉がありますので、混乱している人がいるかもしれません。
そんな人たちへ向けて、仮想通貨の業界で流れてくるオフチェーンによく似た言葉を紹介します。
オフチェーン |
ブロックチェーンの管理外で取引すること |
オンチェーン |
ブロックチェーン上での取引のこと |
サイドチェーン |
ベースとなるブロックチェーンと連動して動く別のブロックチェーン |
メインチェーン |
サイドチェーンに対する言葉 |
クロスチェーン |
ブロックチェーン同士をつなぐしくみ |
パブリックチェーン |
誰でも取引履歴の参照やマイニングへ参加できる、公開されたブロックチェーンのこと |
プライベートチェーン |
参照や参加できる人が限定されているブロックチェーンのこと |
同じ「チェーン」という言葉を使っていても「使われ方」「性質」「仕事のし方」「関わり方」と、意味や用途が違っています。
それぞれの言葉の意味をイメージできるようになっておければ安心です。
3. オフチェーンやサイドチェーンの具体例
じつは、オブチェーンはいろいろなところですでに実装されており、仮想通貨の取引をやったことがある人であれば、ほぼ確実に使ったことがあるものもあります。
取引所内での取引
もっとも多くの人が使っているのが、取引所内の取引で使われているオフチェーンでしょう。
取引所で行う仮想通貨の売買は瞬時に行われ、手数料が無料の取引所も少なくありません。この取引所内の仮想通貨の売買こそ、オフチェーンの代表格なのです。
取引所では、短期間で何度も行われる細かな取引をオフチェーンで行い、メインチェーンへの記録タイミングを最低限にすることで高速な取引と割安な手数料を実現しています。
dAppゲーム
ブロックチェーン上では動作するdAppゲームでも、オフチェーンを活用することで、ゲーム性を向上しています。
戦闘やアクション時のやりとりをオフチェーンで行うことで、ゲームのレスポンスを上げ、無用な手数料を省くことができるわけです。
ライトニングネットワーク
ビットコインですでに実装されているサイドチェーンが、ライトニングネットワークです。
ライトニングネットワークを利用することでビットコインから見てオフチェーンになりますので、高速で安価な取引ができます。また種々の機能をライトニングネットワークに実装することで、ハードフォークをすることなく、ビットコインの機能向上や機能追加をすることができます。
ライデンネットワーク
イーサリアムのサイドチェーンで、ライトニングネットワーク同様、高速で安価な取引の実現、機能追加などを行うことができます。
Plasma
イーサリアムのサイドチェーンで、メインチェーンで行われるスマートコントラクトの実行処理の一部をPlasmaが肩代わりすることで、高速かつ安価にスマートコントラクトを実行させることができます。
Mijin
NEMのブロックチェーンと同等の機能を使えるプライベートチェーンのことで、企業や団体などの限られた範囲でNEMを活用することができるものです。
パブリックチェーンであるNEMでは調整できない手数料の有無やブロックの生成間隔などを、用途に合わせて変更することができます。
まとめ
オフチェーンは、ブロックチェーンが潜在的に抱えているスケーラビリティ問題を解決して処理速度を上げることができるしくみです。
「オフチェーン」そのものや概念、総称ですので、詳しい実装方法は問われていませんが、すでに仮想通貨取引所やイーサリアムゲームで使われていますので、その処理速度を実感することができるでしょう。
- オフチェーンは、ブロックチェーンの外で取引すること
- オフチェーンの利用で、スケーラビリティ問題を改善できる
- オンチェーンはブロックチェーン上で取引すること
- サイドチェーンはメインとなるブロックチェーンと連動して動く別のチェーンのこと
- 仮想通貨取引所内での取引は、オフチェーンで行われている
オフチェーン以外にも、ブロックチェーンの改善や機能追加をするためのしくみやアイデアはたくさん生まれています。
それらの内容を眺めて、今後のブロックチェーンの発展を予測してみるのも面白いかもしれません。