サイドチェーンとは? ブロックチェーンに新機能を追加できる仕組み

サイドチェーンのメリットとデメリット

ブロックチェーンの話をしているときに、「サイドチェーン」という言葉を聞いたことはないでしょうか?

サイドチェーンは、ブロックチェーンをより便利で多機能なものにすることができるしくみで、ブロックチェーンの可能性を広げるものです。

ここでは、そんな次世代のブロックチェーンの要となる技術「サイドチェーン」について、詳しく紹介します。

1. サイドチェーンはブロックチェーンに新たな機能を追加する

サイドチェーンは、ブロックチェーンへの機能追加性能アップをスピーディかつ自由に行えるしくみです。

1-1. サイドチェーンとは何か

サイドチェーンとは

サイドチェーンは、ブロックチェーンの問題点や手間のかかる点をカバーし、使いやすくすることができるものです。

本来、ブロックチェーンの仕様変更などによる修正には、ハードフォークが必要な場合が少なくありませんでした。

ハードフォークは手間もコストもかかる

ハードフォークは、プログラムの変更内容の提案から関係者の同意を得るまでに長い時間と労力がかかりますし、ブロックチェーンの分裂リスクもある手法です。サイドチェーンを利用すれば、そんな労力やリスクを負う必要がありません

サイドチェーンを使えば簡単

サイドチェーンは、外部とのやりとりを仲介しつつ種々の処理をブロックチェーンの代わりに行います。その結果、あたかもブロックチェーンの機能変更や機能追加(決済速度の高速化や、新たなトークン追加など)がされたかのように、ハードフォークを行うことなく見せることができるのです。

1-2. サイドチェーンのメリット

サイドチェーンのメリット

ハードフォークなしで機能追加できる」のがサイドチェーンの特徴であり強みです。それによって得られるメリットをいくつか紹介しましょう。

ブロックチェーン同士を仲介して、違う仮想通貨とやりとりできる

1つのサイドチェーンを異なる仮想通貨のブロックチェーンと関連させ、それぞれの仮想通貨と独自トークンを交換できるようにすることができます。その結果、取引所を介さずに異なる仮想通貨をやりとりすることができます。

独自通貨を作成できる

サイドチェーン上では独自のブロックチェーンを持たず、価値が保証されたトークンが発行できます。ブロックチェーン上の通貨を消費することで、1対1の価値を持たせた通貨を生成することも可能です。

決済速度を高速化できる

ブロックチェーンで使われている「Proof of Work(PoW)」や「Proof of Stake(PoS)」などのコンセンサスアルゴリズムとは違うアルゴリズムに変更することができます。もし決済速度を究極に上げることだけを考えれば、コンセンサスアルゴリズムをなくしてしまうこともできるのです。

色々な機能を追加できる

スマートコントラクトなど、ビットコインのブロックチェーンに実装されていない複雑な機能を追加することができます。

1-3. サイドチェーンのデメリット

サイドチェーンにもデメリットはあります。ただし、これらは現時点のデメリットですので、将来的に改善されるかもしれません。

マイナーの負担が上がる場合がある

セキュリティリスクを考慮して、ブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムを使うことも可能です。しかしその場合、ブロックチェーンのマイナーがサイドチェーンのマイニングも行うことになりますので、マイナーの負担が上がることになります。

魅力のないトークンはマイニングしてもらえない

なお、マイナーがサイドチェーンのマイニングを行ってもトークンしか得られません。そのため、トークンに魅力がなければ、マイナーはサイドチェーンのマイニングを行わない可能性もあります。そうなれば、サイドチェーンの信頼性は低下するでしょう。

中央集権化するリスクとセキュリティのリスク

コンセンサスアルゴリズムの簡略化や省略のためには誰かが管理する必要があります。だからサイドチェーン内ではブロックチェーンの利点である分散管理ではなく、中央集権的な管理になりやすいのです。

コンセンサスアルゴリズムはブロックチェーンのセキュリティ対策の要です。それを簡略化や作り替えることは、新たにセキュリティ対策を作り直すということです。そのため、思わぬぜい弱性が生まれるリスクがあります。

2. サイドチェーン実現のための技術「双方向ペグ(two-way pegging)」

サイドチェーンを実現するためには、「双方向ペグ(two-way pegging)」という技術を実現しなければいけません。

双方向ペグというのは、ブロックチェーン上の仮想通貨とサイドチェーン上のトークンを交換するためのしくみです。このしくみを使えば、サイドチェーン上のトークンに価値を与えることができます。

2-1. 双方向ペグでサイドチェーンへ価値を移動する

双方向ペグの基本的な移動手順は、以下です。

■メインチェーン→サイドチェーンへの移動

2way-peg(メインチェーンからサイドチェーンへ移動)

 1.ブロックチェーン上で、コインをロックします
 2.コインのロックが確認できたところで、サイドチェーン上でトークンが生成されます

■トークンを使う

生成されたトークンは、サイドチェーン上で提供されているサービスで利用することができます。また、何らかの売買を行うことやマイニングでトークンの保有量を増やすことも可能です。

■メインチェーン→ブロックチェーンへの移動

2way-peg(サイドチェーンからメインチェーンへ移動)

 1.ブロックチェーン上のコインへ変換したいサイドチェーン上のトークンを消失させます。この「消失」は、トークンを取り出せない特定のアドレスへ送金する(=バーンする)ことで実現する場合がほとんどでしょう
 2.トークンの消失が確認できると、ブロックチェーン上のコインのロックが解除されます

2-2. マルチシグを使って双方向ペグを実現させる

双方向ペグを実現するには、ブロックチェーン上のコインをロックしておく処理が重要です。この処理の信頼性がなければ、サイドチェーン上のトークンの価値を保証できません。

コインをロックする方法を実現するにあたって、現在サイドチェーンを実運用しているいくつかのブロックチェーンでは、マルチシグアドレスを利用した方法が使われています。

■メインチェーン→サイドチェーンへの移動

2way-peg(マルチシグによるメインチェーンからサイドチェーンへ)

 1.ブロックチェーンのコインをマルチシグアドレスへ送金
 2.送金されたコインは、マルチシグの秘密鍵を持つ組織や代表者によってロックされる
 3.送金されたコイン数に合わせて、サイドチェーンのトークンが生成される

■サイドチェーン→メインチェーンへの移動

2way-peg(マルチシグによるサイドチェーンからメインチェーンへ移動)

 1.サイドチェーンのトークンをマルチシグアドレスへ送金
 2.送金されたトークンは、マルチシグの秘密鍵を持つ組織や代表者によって削除される
 3.送金されたトークン数に合わせて、ブロックチェーンのコインのロックが解除される

2-3. その他の実現方法

ここで紹介した方法では、管理者がサイドチェーンへの資産の移動を管理するので、中央集権になっています。そこで「非中央集権」を実現する方法として、他に2通りの案が考えられています。

トランザクションにロックスクリプトを設定する(SPV Proof)

ブロックチェーンのトランザクションに「ロック」を示すスクリプトを追加しておく方法です。取引の処理の中でトランザクションのスクリプトが自動実行されるので、管理者が不要です。

参考:Enabling Blockchain Innovations with Pegged Sidechains(pdf)

マイナーがロックする(Drivechain)

ブロックチェーンのマイナーがサイドチェーンへの移動を承認することで、ロックされるしくみです。ただしこの場合、マイナーはブロックチェーンとサイドチェーンの両方のマイニングを行う必要があります。

参考:Drivechain – The Simple Two Way Peg

2-4. セキュリティ対策としてのマージマイニング

マージマイニングは、ブロックチェーンのマイニングの結果を、サイドチェーンのマイニングでも共有する機能です。そのため、マイナーは1度のハッシュ計算で、ブロックチェーンとサイドチェーン両方のマイニングを行うことができるのです。

サイドチェーンのセキュリティの甘さを改善するただ1つの方法は、サイドチェーンでもコンセンサスアルゴリズムを取り入れて、マイナーにチェックしてもらうことです。

しかし、サイドチェーンのデメリットで説明した通り、トークンに魅力がなければ、満足な数のマイナーが集まりません。そこで、ブロックチェーンのマイナーに、コストをかけることなくサイドチェーンのマイニングを行ってもらおうというしくみが、マージマイニングなのです。

3. サイドチェーンを実装しているプロジェクト

最後に、サイドチェーンを開発して運用しているプロジェクトを紹介しておきましょう。

3-1. Liquid

liquidプロジェクト(キャプチャ)

Liquid by Blockstream

最初にサイドチェーンを提唱したBlockstream社が開発した取引所向けのネットワークです。サイドチェーン上の「L-BTC(ビットコインと1:1で交換できるトークン)」を使って、Liquid上に資産を保持しておくことで、取引所間のビットコインの送金をより短時間で行うことができるようになっています。

(2019年7月3日追記)
Blockstreamは、アトミックスワップを実行できるツールをGithubで公開しました。このアトミックスワップはLiquidネットワークのすべての資産に対応しています。

参考:COINTELEGRAPF|https://jp.cointelegraph.com/news/blockstream-enables-atomic-swaps-for-liquid-sidechain-assets

3-2. Rootstock

RSKキャプチャ

RSK

プラットフォーム「RSK」による、ビットコインのサイドチェーン上でスマートコントラクトを実現するプロジェクトです。スマートコントラクトはイーサリアムが有名ですので、それに比べるとビットコインのサイドチェーンの歴史は浅いです。しかし、ビットコインの方が相対的にマイナーの数が多く、その分セキュリティが堅牢です。そのため、RSKを使えばより安全な環境でスマートコントラクトを実行できると考えられます。

また、このサイドチェーン上での決済速度は最短で15秒程度となっており、ビットコインの決済速度の向上も期待できます。

3-3. Lisk

liskプロジェクト(キャプチャ)

Lisk

スマートコントラクトを実現するサイドチェーンです。イーサリアムのような独自言語ではなく、世界でユーザーの多いJavaScriptが使われているため、比較的手軽にスマートコントラクトを作ることができる環境になっています。なお、Liskの独自通貨Lisk(LSK)はCoincheckやbitFlyerで上場しています。

3-4. Loom Network

loomSDKキャプチャ

loom

Loom SDKという開発環境を提供しています。Loom SDKはイーサリアムのサイドチェーンを構築して、そのチェーン上で動作するゲームを作ることができるものです。

まとめ

サイドチェーンは、ハードフォークすることなく、ブロックチェーンに新たな機能の追加や機能改善を行うことができる技術です。

今後ブロックチェーンの応用範囲が広がるのに合わせて、活用シーンが増えていく技術の1つと思われます。

そんなサイドチェーンについて、一般的な特徴をまとめておきます。

  • サイドチェーンはブロックチェーンに重なるようにして存在しているイメージ
  • サイドチェーンで機能追加や改善する場合、ハードフォークが不要
  • サイドチェーンの実現に重要なのは、双方向ペグの実現
  • 双方向ペグは、ブロックチェーンのコインとサイドチェーンのトークンを交換するしくみ
  • マージマイニングを使えば、ブロックチェーンのマイナーにサイドチェーンのマイニングをしてもらえる

ぜひ、新たなブロックチェーンを切り開く技術「サイドチェーン」に期待し、動向を追いかけていきましょう。