もう契約書は必要ない!スマートコントラクトが変えるサービスの形

「スマートコントラクト」とは、ブロックチェーンを経済活動のインフラとするための根幹になる重要な技術の1つです。

今後、ますます電子化が進んでいく経済活動には、その活動を改ざんされないように記録して、いつでも確認できるようにする「仕組み」が必要です。

スマートコントラクトは、ブロックチェーン技術を用いて、この「仕組み」を実現することができるのです。

また、スマートコントラクトには、ただ台帳に記録するだけではなく「契約締結」から「契約条件の確認」「契約の履行」までを自動で行う仕組みも備わっています。そのため、いままで多くの人が行っていた書類仕事の時間と手間(=コスト)を大幅に減らすことにもつながることになるでしょう。

今回は、そんなスマートコントラクトの仕組みと活用事例、実際に活用するための課題をくわしく説明していきます。

1. スマートコントラクトはブロックチェーン上で動いている

スマートコントラクトは、契約を締結し、履行条件の確認から契約履行するところまでを、自動で行うことができる技術です。

そして、その信ぴょう性や公共性は、ベースとなるブロックチェーン技術によって保証されています。

ここでは、ブロックチェーンとそのうえに成り立つスマートコントラクトの仕組みについて、説明していきましょう。

1-1. ブロックチェーンの仕組みをおさらい

スマートコントラクトは、ブロックチェーンをベースとして、そのうえで動作させるものです。そのため、まずはブロックチェーンについて簡単に説明しておきましょう。

ブロックチェーンには、次のような仕組みで取引履歴が記録されています。

  1.  ネットワーク上の全体で、ベースとなるブロックチェーンを共有する
  2.  取引が行われると、その内容がネットワーク全体に伝わる
  3.  ノードは受け取った複数の取引をまとめて、1つのブロックを生成する
  4.  生成したブロックをブロックチェーンにつなげ、ネットワーク全体に共有する
  5.  ノードは更新されたブロックチェーンが正しいことを検証し、正しければそのブロックチェーンに新たなブロックをつなげる試みを行う

以上のように、ブロックチェーンは、ネットワークに参加しているノード間で共有され、常に正しいかどうかの確認がされているわけです。

1-2. スマートコントラクトの仕組み

スマートコントラクトが、自動で契約の締結から履行まで行う仕組みは、前述したブロックチェーンの仕組みの中に組み込まれています。

取引というのは、一般的に「お金と商品を交換する」という契約です。

例えば、最初にブロックチェーンを使った契約を実現したビットコインでは、取引の中でも「お金の流れ=誰から誰にいくら送られたのか」だけを記録しています。

スマートコントラクトは、「お金の流れ」だけではなく、その後の「商品との交換」に該当するところまで自動で処理することができるようになっているわけです。

例えば、自動販売機は、自動売買というスマートコントラクトをすでに実現しています。

自動販売機では、「お金を入れて、欲しい商品のボタンを押す」と、「商品が自動的に出てくる」ようになっています。

つまり、「お金を入れて、欲しい商品のボタンを押す」という契約の締結契約条件の成立が行われることで、自動的に契約が履行されて、「商品の提供」が行われるようになっているわけです。

スマートコントラクトを使えば、この自動販売機の動きを発展させることができます。

例えば、代金が支払われると指定の音楽データが配信される、「スマートコントラクトを使った音楽配信システム」で説明してみましょう。

既存のシステムでは、仮にBitcoinで音楽データを購入できるようにしても、単純にbitcoinの所有権が移る取引履歴をブロックチェーンに記録するというだけで、その後の音楽配信については、外部のソフトウェアや人の手を使う必要があります。

しかし、スマートコントラクトを利用すれば、この取引履歴の中に「代金が支払われると音楽データを配信する」というプログラムを組み込むことができるのです。

つまり、前述した自動販売機と同じように、スマートコントラクトプログラムによって、取引が成立すると同時に音楽データが配信されるようになっているわけです。

「音楽データを自動的に配信するプログラム」は、スマートコントラクトとしてブロックの中に組み込まれていますので、不正に改ざんすることはできません。

もちろん、ブロックチェーン上に記録された「音楽データの配信先情報(所有権)」は誰でも参照できますので、不正コピーの防止などに役立つでしょう。具体的には「ブロックチェーン上で所有権を持っている人しか再生できない」仕組みをプレーヤに組み込む、などの仕組みがあればコピーすることはできませんね。

2. スマートコントラクトでできること

ブロックに仕込まれたプログラムが、代金支払などの条件を満たしたときに処理を行えるのが、スマートコントラクトの機能です。

現時点でも、すでにいくつかのサービスが立ち上がっていますので、それらを紹介して、スマートコントラクトでできることを見ていきましょう。

2-1. 収集ゲーム「Cryptokitties

https://www.cryptokitties.co/

スマートコントラクトを使って実用化された「猫育成ゲーム」です。

猫のマーケットプレイスなどもありますので、どちらかというと「猫コレクションゲーム」の色が濃いゲームといえます。

イーサリアム上のスマートコントラクトを使って、猫を売買し、購入した猫は交配させて新しい猫を生み出すこともできるようになっています。

スマートコントラクトを利用することで猫の所有者は明確になっており、不正コピーや改ざんなどの危険性が極めて低くなっています。

そのため、コレクターの所有欲を満たすことができる魅力のあるゲームになっているのです。

2-2. オンラインストレージサービス「Storj

https://storj.io/

ブロックチェーンの利点である、高セキュリティ・低コスト・ゼロダウンタイム(停止することのないサーバ)を活かしたオンラインストレージサービスを目指して立ち上がったのが、「Storj」です。

オンラインストレージサービスというのは、クラウド上に自分のストレージ容量を確保してファイルを保存し、種々の端末からアクセスしたり、共有したりといったことができるサービスです。

例えば、DropboxOneDriveなどは、知っている人が多いでしょう。

Storj」はクラウド上のストレージを「ネットワーク上の各ノードの容量を少しずつ借りる」ことで実現しているため、一企業に依存せず、かつサービスが止まることがありません。

また、利用者は、あまっているハードディスクのスペースを貸すことで、トークンを得ることができるのも特徴です。

スマートコントラクトを使って、「自分のハードディスクの一部分へアクセスする権利」をやりとりするイメージです。

2-3. 不動産取引「Propy

https://propy.com/

スマートコントラクトを利用して、不動産売買を行うのが、「Propy」です。

特にPropyは、世界の不動産を売買するためのサービスです。

海外の不動産を、不動産業者やブローカーなどを介することなく売買することができるようになっています。

なお、日本での不動産取引については、行政への申請(不動産登記)が必要です。そのためこのサービスだけで不動産売買が法的に成立するわけではありませんので注意が必要です。

2-4. スマートコントラクトを使った未来

ここまでで紹介した3つの活用事例は、実際にスマートコントラクトを使うことでものの所有権を低コストで確実に管理することができるということを示しています。

特に、ブロックチェーンに記録が残るため詐欺や改ざん・偽造などのリスクがほとんどなく、安心して取引できるようになることが重要なポイントです。

スマートコントラクトを活用することで、いままで不必要にかかっていたコストを排除し、安全にかつスピーディ、自動的に契約処理を進めることができるのです。

3. スマートコントラクトの課題

スマートコントラクトのメリットを活用した事例などを紹介してきましたが、まだスマートコントラクトにも課題はあります。

もちろん、課題が分かっていれば対策もできるということですので、簡単な対策も合わせて紹介しておきましょう。

3-1. 実際のものの動きをどう管理するか

スマートコントラクトが自動的に契約締結から履行まで行うといっても、それはあくまでも電子的なものを扱う場合のことです。

実際の商品を購入した場合に、「商品が発送された」ことや「商品が届いた」ことまでは、スマートコントラクトでは確認することはできません。

「ブロックの生成を通知→人が出荷作業をする」「商品が届いたことを人が通知→取引成立の処理が行われる」といったように、間に人が介在しなければものの取引は実現できないでしょう。

つまり、取引履歴が改ざんできないという点はメリットですが、それ以外については現状のECサイトとそれほど変わらないということになります。

しかし、いまよりもIoTが普及すれば、「ものの位置や状態」を電子的に把握できますし、商品の配送をドローンで行うようになる未来も予想されています。

それら、IoTやドローンとスマートコントラクトを組み合わせれば、もののやりとりもスマートコントラクトで完全に実現できるでしょう。

3-2. 現実の契約のような「あいまいさ」を実現できない

実際の契約というのは案外あいまいなもので、その時々の事情に合わせて別の解釈ができるような契約も少なくありません。

そういった契約のあいまいさも、スマートコントラクトについては課題といえるでしょう。

スマートコントラクトは、一定の条件を満たせば契約を履行するようになっていることは前述していますが、このときの「一定の条件」というのが実際の契約ではあいまいな場合があるわけです。

それに、人と人との交渉によって契約する場合は、契約書とは違う約束をしている場合もあります。当然ですが、そこまでスマートコントラクトでは把握できません。

そのため、前項で紹介したような、ものやサービスなどとお金が一対一のものについてはスマートコントラクトで扱い、営業担当が直接かかわってくるあいまいな契約については既存の方法で扱う、といったすみ分けと状況判断が必要になってきます。

3-3. 法的拘束力がない

スマートコントラクトで経済活動を行う範囲を広げていくには、現在の法律では対応できなくなることが少なくありません。

例えば、不動産の売買サービスを利用して、土地を購入したとしましょう。

当然ながら、ブロックチェーンには、その土地の売買の記録や抵当権の設定の記録が残り、改ざんなどがほぼ行われない信頼性のある情報になります。

しかし、不動産の所有権を売買した当事者以外へ主張するには、行政の記録である「不動産登記」上で所有者になっていなければなりません。

つまり、ブロックチェーン上に確実に存在する売買記録だけでは、土地所有を主張する法的な根拠にならないわけです。

行政の記録である「不動産登記」まで不動産売買サービスが対応するためには、スマートコントラクトでの処理とともに、役所に届け出る昔ながらの手続きが必要になるということにもなります。

これでは、不動産売買をスマートコントラクトで実現する利点が大幅に縮小してしまいます。

 

このように、法律的な観点からも、まだまだ発展途上な部分があります。そのため、サービスを利用したり立ち上げを検討したりしている人は、法的な確認が必須となってくることでしょう。

まとめ

スマートコントラクトというのは、ブロックチェーンのブロックの中にプログラムを仕込むことで、取引が成立したら自動的に何らかの処理を行うことができるようにする機能です。

つまり、「ブロックチェーン上で動作するソフトウェア」と定義することもできます。

このソフトウェアを使うことで、ブロックチェーンネットワーク上に新たなサービスを作り出して、経済的な活動領域(経済圏)を生み出すことができるのです。

もちろん、物理的なものとの連携や現実的な人のあいまいさ、法整備などの問題もあります。

けれども、スマートコントラクトの「新しい経済圏を生み出す可能性」というのは、まさにインターネットと同じかそれ以上変化を社会にもたらす、大きな可能性を秘めたものなのです。