
スマートコントラクト技術は、ブロックチェーンとともに仮想通貨(暗号資産)の基盤を支えています。
ブロックチェーン事業に乗り出した企業でも、スマートコントラクトの重要性が認知されつつあり、様々な業界で活用も始まりました。
本記事では、スマートコントラクトについて、仕組みだけでなく、どんな活用事例があるのか解説。人に説明できるようになれますよ!
目次
1. スマートコントラクトの概要・仕組み
スマートコントラクトは、デジタル処理によって契約から決済までの全てをプログラムによって自動化する仕組みです。
そしてスマートコントラクトを理解するために必要な知識は、「ブロックチェーン」と「イーサリアム」だけです。
1-1. 契約を自動的に実行する
スマートコントラクトは、イーサリアムシステムに実装されている機能で、イベントの発生から契約、契約が施行されたあとの決済までを全て自動化するプログラムです。
既存のプログラムと何が違うのか?
あらかじめ価格が決められている商品をネット上で購入するネットショッピングなど、ただ自動化するだけならすでに近いものが出来上がっています。
これらとスマートコントラクトの最も大きな違いは、ブロックチェーンに記録されること。
過去の履歴が半永久的に保管され、その記録と整合性がない契約は実行されることがありません。(詳しくは2章に後述)
イーサリアムのシステムを利用することで、スマートコントラクトというプログラムを実行できます。イーサリアムはビットコインよりも多くの機能を利用できるため、このようなことが可能です。
▶イーサリアムブロックチェーンとは? 基礎知識をわかりやすく解説
1-2. スマートコントラクトのBTCより長い歴史
スマートコントラクトの概念が提唱されたのは、1994年です。実は、仮想通貨であるビットコインが誕生するよりも前なのです。
スマートコントラクトとブロックチェーンは、非常に相性が良く、実用的な技術として、さまざまな機関や企業によって日常生活への適用が検討されています。
2. スマートコントラクトのメリット・デメリット
スマートコントラクトの概要や仕組みを見ると、メリットしか感じられないかもしれませんが、デメリットを含めた双方を意識することでスマートコントラクトへの理解が深まります。
2-1. メリット
契約執行が自動化される最も大きなメリットは、手続きの簡略化です。
契約手続きが楽になる
スマートコントラクトのメリットは、契約から決済までを全てプログラム上でおこなうため、一連の契約に仲介者が必要なくなることです。
サービス提供者がスマートコントラクト機能を持たせた機械で販売すれば、ユーザーはボタン1つでサービスと契約し、決済までが行われるからです。
契約をプログラムによって自動化する概念は、仲介者や複雑な手続きを省くことができます。
契約相手を信用しなくてもいい
契約書類を作る人、契約書類を確認する人、契約書類を送付する人、このような手間は全てスマートコントラクトがやってくれるのです。
スマートコントラクトが自動的に全てを運用してくれるので、契約相手を信用するという概念もなくなるかもしれませんね。
不正や改ざんができない
契約をブロックチェーン上に記録することで、不正や改ざんの不可能な契約システムとなりました。
これらのメリットにより、不動産業務のような大きな契約も自動販売機で賄えます。
もちろん、自動で物件を契約するのは不安がありますよね。購入ボタンを押したあと、自動販売機を提供している不動産が、しっかりと契約を履行してくれるのか。しかし、スマートコントラクトでは、全てをプログラムで自動化している上に、契約した内容はブロックチェーン上に記録されるため、不正や改ざんの心配はないのです。
実際に、2018年3月にはスマートコントラクトによる不動産契約が成立しています。
2-2. デメリット
スマートコントラクトのデメリットは、契約内容が全てブロックチェーン上に記録されることにより、変更ができないという点です。
ちょっとした変更も気軽にできない
一度記録されたデータは、ブロックチェーン 上では書き換えができません。
つまり、契約内容の細かな変更をするだけでも、再契約をする必要が出てきます。
極端な例ですが、生命保険などをスマートコントラクトで契約している場合、細かなサービスの変更点が出ただけで、以前の契約を破棄して再契約をするというイメージですね。
3. スマートコントラクトの活用
スマートコントラクトは、日常生活の幅広い範囲に適用することが出来ます。その第一歩として、ゲーム関連ではすでにスマートコントラクトが実用化されています。
また、スマートコントラクトを活用することで、デジタルコンテンツに対する再販や二次使用も可能になるでしょう。
3-1. デジタルゲームでの実用化
スマートコントラクトは、デジタルゲームの世界で、いくつかの事例があります。
有名なものでは「cryptokitties」という、キャラクターを収集するゲームです。このゲームでは、キャラクターの売買ができるのですが、この売買契約にスマートコントラクトが利用されています。
キャラクターのマーケットプレイスで、ユーザー同士がキャラクターを売買するとき、スマートコントラクトで確実な取引を実現させているのです。
販売から決済、デジタルキャラクターのやり取りまで、スマートコントラクトによって信頼を持たせています。
3-2. スマートコントラクトが可能にするデジタルコンテンツの再販・二次使用
デジタルコンテンツのレンタルや譲渡に関しても、スマートコントラクトが実現できるサービスです。
電子データは簡単に複製されてしまう
電子書籍やデジタル動画などは現在、簡単にコピーされてしまいます。
一度コピーされると拡散し、クリエーターの著作権は侵害され、作品も無料で使われてしまうのです。デジタルコンテンツには、所有権や著作権を保護する実質的な方法がないからです。
スマートコントラクトで権利を保護
しかし、ブロックチェーンとスマートコントラクトを組み合わせることで、いわゆる海賊版と呼ばれる違法コピーを防ぎ、デジタルコンテンツの正規の再販や二次使用を可能にできます。
デジタルコンテンツで保護すべきは所有権や著作権といった権利ですよね。
クリエーターはこれら権利を、ブロックチェーン上に記録します。再販や譲渡する場合には、スマートコントラクトを利用することで、再販や二次使用の権限を把握することができるのです。
例えば、電子書籍を再販する場合のスマートコントラクトには、以下のようなプログラムを持たせます。
条件1:電子書籍の一次所有者であるAさんから、Bさんに再販される場合
条件2:電子書籍の著作権を持つYさんに報酬が支払われた後
履行:所有権はAさんからBさんに移動する
著作権者に正しく利益が入るようになる
こうすることで、著作権と所有権の明確化、そして再販された際には自動的に著者へ料金が支払われるという、理想的な再販環境が構築できるのです。
権利の明確化とデジタルコンテンツの所有権の移動に対する契約を、スマートコントラクトが自動的に行ってくれるということですね。
まとめ
スマートコントラクトを説明する上では、その概要と仕組みの大枠を理解し、メリットとデメリットについてもしっかりと抑えておく必要があります。
理解すると、スマートコントラクトを身近なシステムに置き換えてイメージすることができますよね。
今後、スマートコントラクトが定着することで、デジタルコンテンツの再販や二次使用に対する権利の保護も確立し、新たなマーケットも続々と誕生するかもしれませんね。